見出し画像

読書の日記#12 『地球と書いて〈ほし〉って読むな』

テレビでM-1の敗者復活戦を観ながらこれを書いている。十九人は落ちてしまったけれど、のびのびしていてよかった。来年はもっと躍進してほしい。
決勝には誰が進むか、そして誰が優勝するかそわそわしているので今のところ明日からまた始まる憂鬱さから目を背けられている。

今回の作品はこちら。
上坂あゆ美『地球と書いて〈ほし〉って読むな』文藝春秋(2024)

歌人である著者がこれまでに発表したエッセイがまとめられた一冊。今年もそこそこ本を読んだけれど、そのなかで本作が圧倒的に面白かった。
作者の第一歌集である『老人ホームで死ぬほどモテたい』のタイトルを池袋のジュンク堂で見かけてビビビッときたのは、今でも鮮明な記憶だ。それ以降上坂さんのファンになった。ポッドキャストも開始直後から聴いている。リスナーの相談に対する回答のバランス感覚もさることながら、ユニークな価値観やそれを言語化する能力も高く、怪物的に面白い人だと思っている。

『正しいかもしれないけど言わんでいいこと』(p.9)を言って喧嘩した相手が実は自分に片思いをしていたことが判明したり、理科の授業で家の新聞にある天気予報図を集めるよう言われたけれど家にはスポーツ新聞しかなかったりエッセイに書かれている体験も面白かった。
でも面白いことばかりではなく、両親の離婚や姉からの嫌がらせなど結構大変な人生を歩まれてきたこともうかがえる。お姉さんとの関係性は個人的にかなり怖いなと思う。辛い思いをしたことも読みごたえのある文章に昇華されており、ぐっとくる場面も多かった。お母さんの元彼の話や、親の言葉という呪いの話とか。
飾らない言葉、と簡単に言ってしまうことはできるけれど、元来のセンスだけでなくその言葉を獲得するのにたくさん思考されているであろうことが話の随所からうかがえる。言葉のプロだなと思うし、そんな文章が書けるっていいなーと素直にうらやましい。

敗者復活戦を勝ち抜いたのはマユリカだった。そろそろ決勝戦が始まる。
年末だな。

2024/12/22

いいなと思ったら応援しよう!