見出し画像

ワインの分子状亜硫酸

おはようございます。
この前、ヨーロッパ在住の子と話しているときに、ワインの亜硫酸の話になりました。
彼は亜硫酸量について非常に悩んでいるようです。彼はpHが非常に低い極甘口ワインを作ってみたいようなのですが、どの程度添加しようか色々計算しているときに、ウェブサイトと彼の計算で分子状SO₂の値が全く異なることに気づいたようです。

彼は亜硫酸のpKa1について、イオン強度を0.03 Mに仮定し、エタノール濃度をワインに合わせて、1.9-1.95あたりで計算しているようです。
一方でAWRIやWine Business、Vinolabあたりの分子状亜硫酸の計算機付きウェブサイトではpKa1を1.81、つまり20度の水中での値に設定しているようです。

確かに、日本語で調べて出てくる、「特定のpHで目標(0.6-0.8 mg/L)の分子SO₂の確保に必要な遊離亜硫酸」みたいな表も、たいていがpKa1を1.81に設定してあるようです。

pka1 = 1.81

一方で、彼のようにpka1を高めにするとどうなるでしょうか。
仮に1.95で計算すると、以下の表になります。

pka1 = 1.95

比べてみると以下のようになります。

見比べ用

つまり彼は、今まで私たちは亜硫酸を添加しすぎていたのではないかと言いたいわけです。
また、例えば、pka1 = 1.81の想定で、pH 2.8で1.0 mg/L の分子状SO₂を確保しようとすると、遊離亜硫酸は11 mg/L 必要なわけですが、それはpka1 = 1.95の場合の分子状亜硫酸 2.0 mg/L (50%感覚閾値)に必要な値16 mg/L と5 mg/Lしか変わらないじゃないか、とも言いたいようです。

極甘口だ(香りが誤魔化せる)し、遊離で5 mg/Lも違うし、今までみんな1.81で研究してそうだし、何より問題になっていないのだから、そこまで気にする必要はないのではないか?と言いましたが、フランス人みたいなことを言うなと文句を言われてしまいました。

私は人生でpHの低い極甘口ワインや、流行りの酸が高めなノン・低アルコールワインなんかの製造をする予定はありませんが、気に留めておきたいと思いました。また、pHが高いワインでは添加量にかなりの差が出てくるので、本当に安定性が確保できるのか、来年(余裕があれば)実験してみたいですね。

私は化学初心者です。
Handbook of EnologyやUnderstanding Wine Chemistryなどの有名な本で触れられているにも関わらず、日本語ではデータが出てこないことから、実際の現場では何の役にも立たないのかもしれません。そうでしたらすいません。

寒くなってきましたが、今週も頑張りましょう。


いいなと思ったら応援しよう!