ワイン化学辞書(のんびり更新)
間違ってたらコメントでご教授ください。化学は初心者です。
BKchem入れてみたのでそのうち化学式直します。
メモ用です。いつかきれいにします。
アマドリ転位(Amadori rearrangement)
メイラード反応の一部、先にそっち見たほうがいいかも。
転位反応のひとつで、(アルドースの)グリコシルアミン(N-グリコシド)が、酸を触媒として 1-アミノ-1-デオキシケトース へ変わる反応。メイラード反応機構の一部。
開環型のグルコースのイミン↑にプロトンが付加すると、下の図になって
さらに2位の炭素からプロトンが脱離し、下の図の左になる。ケト-エノール互変異性があるので、下の図の真ん中にもなる。これがアマドリ生成物と呼ばれる。これは左右のと平衡を作る。
これらがメイラード反応の中・後期へつながっていく。
アミノ基
アンモニア、第一級アミン、第二級アミンから水素を除去した1価の官能基(-NH2,-NHR,-NRR')。
Nが電子対持つから、芳香環上に置換すると電子供与基。
アミン
アミン(amine)は、アンモニア(NH3)の水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称。
第一級(R-NH2)、第二級(RR'-NH)、第三級(RR'R"N)。
芳香環を持たない炭化水素上にアミノ基や置換されたアミノ基が結合した化合物は、脂肪族アミン(aliphatic amine)、ベンゼン環と一緒は芳香族アミン(aromatic amine)。
アミンは塩基性を有し、プロトン(水素陽イオン)が配位結合する。アミンの塩基性の強さは窒素原子に結合しているアルキル基と密接な関係がある。炭素数が同じ場合、第二級アミンは第一級アミンより塩基性が強い。これは、アルキル基が持つ電子供与性によって窒素原子が負に分極することに拠る。しかし、第三級アミンは第二級アミンよりも塩基性が小さい。(立体障害)また、一般に芳香環に直結したアミンは塩基性が低い。(非局在化)
アルデヒド
酸化、ストレッカー分解、香り、、、多すぎるので後回し
アルドース
糖質を構造式で分類するときに使う言葉。鎖の末端にホルミル基(formyl group)=アルデヒド基, (-CHO)を1つ持ち、CnH2nOn (n ≥ 3) の化学式を持つ単糖類を指す。
D-グルコースとかD-マンノースとか。
イミン
(imine)
R-C(=NR'')-R'
カルボニル化合物(R−C(=O)−R')の酸素原子が =NR'' 基によって置き換えられた形。
Nに孤立電子対を持つことから配位子、ルイス塩基(求核剤)としてはたらき、その際特に、窒素上が炭化水素基のイミンについてシッフ塩基 (Schiff base) と呼ばれることがある。
アルデヒドに由来するイミン (R' = H) はアルジミン (aldimine) と、ケトンに由来するイミン (R' ≠ H) はケチミン (ketimine) と呼ばれる
エナミノール
二重結合にアミノ基とヒドロキシ基が結合しているもの
二重結合(en)+アミン(amine)+アルコール(ol)
エノール
エノール (enol) または アルケノール (alkenol) は、アルケンの二重結合(C=C二重結合)の片方の炭素にヒドロキシ基が置換したアルコールのこと。二重結合を表す「eneエン」にアルコールを表す「olオール」をつけ加えて作られた名前である。
カルボニル基
R−C(=O)−R'
いっぱい出てくる。
ケト-エノール互変異性
ケト(ケトン、アルデヒド)とエノールの間の互変異性。
エノール型は一般に不安定であり、平衡はケト型に偏っている。
ケト-エノール互変異性は酸/塩基の両方に触媒される
酸触媒の場合、カルボニル基の酸素原子に水素化がおこりカチオン中間体が生成し、α炭素が水素を失ってエノールを与える。(アマドリ転位の場合は反対から)
メイラード反応(Maillard reaction)
アミノカルボニル反応とも。
還元糖とアミノ酸、ペプチド、タンパク質が非酵素的褐変と香気成分を生む反応。料理でも飲料でも調味料でも重要。
副反応にストレッカー分解と呼ばれる経路もあり、非常に複雑で解明されきってはいないので難しい。巨人の肩の上で調べるとたくさん論文ある。
飴色玉ねぎとかでよく聞くが、ワインのような穏やかな温度でも起きることが分かっている。(あれはカラメル化も)
例えばシャンパーニュの二次発酵のときに酵母の自己分解から出たアミノ酸などと、残存した・添加された糖が反応してこの反応が起き、パンやロースト、キャラメルと言われるような香りが生まれる。
これが重要なワインはシャンパーニュ、マデイラ、ランシオあたりか?
初期・中期・後期にわかれる。
初期
アミノ酸、ペプチド、タンパク質のアミノ基が還元糖のカルボニル基と脱水縮合し、イミン(シッフ塩基)が生成する。(不安定で可逆的)
その後アマドリ転位で異性化し、アマドリ生成物(とその平衡)になる。
元の糖がアルドースならアマドリ生成物、ケトースならヘインズ転位(Heyns rearrangement)生成物を作る。(アマドリ生成物は1-アミノ-1-デオキシケトース、ヘインズ転位生成物は2-アミノ-2-デオキシアルドース)
これらは無色らしい。
中期
低pHでは、アマドリ生成物にenolisationが起き、3-や1-deoxysone(α-dicarbonylでもある)が生まれる。これは脱水されてフルフラールになったりピロール-2-アルデヒドになったりもする。
例えば元がグルコースの場合は①1,2-enaminol型を経由して3-deoxyglucosone : 3-DG になり、これがさらに脱水されて5-hydroxymethyl-furfural : 5-HMF(マデイラとかの熟成指標)やレトロアルドール反応でメチルグリオキザール(MG)なども生成される。
②2,3-enamiolを経由して1-deoxyglucosone : 1-DGになり、環化してフラネオールになったりする。?
(このあたりの経路探してます。)
副反応としてストレッカー分解も起きる。
α-アミノ酸がα-ジカルボニル化合物と反応して脱炭酸してアルデヒド類(ストレッカーアルデヒド)を作る。(対応するアミノ酸より炭素が一つ少ないアルデヒド)
ピラジン類もできる。
ややこしいのが、ストレッカー分解の始点はここだけでないこと。
糖の逆アルドール反応(レトロアルドール反応)による糖の断片化(Sugar Fragmentation)が起きてα-ジカルボニル化合物が生成されたり、 ポリフェノール酸化からのオルトキノンによるアミノ酸のストレッカー分解も起きる。ダイアセチルも関与できるらしい。1-DGは反応できるのかわからん。
ストレッカー分解の生成物は無色から黄色程度の呈色。
またさらに、ストレッカー分解とは別で、糖の酸触媒下での脱水によるフルフラールやα-ジカルボニル類の生成もある。(これは特にマデイラとかの加熱(45度以上?)とか樽使用でワインに生まれる、酸化も。
後期
これらの中間生成物が脱水や重合をして、メラノイジンとAGEs : Advanced Glycation End Productsが生まれる。
健康や食品の文脈で注目されているが、ワインでは生まれにくい。
熟成された日本酒(古酒)の色はメラノイジンによるものとよく書いてあるが、日本酒では起きやすいのかな?ソースが分からん。
pHが少し高く、アミノ酸が多め、でも熟成温度はそんな変わらなそう。
条件
低温、低pHでは起きにくい。
脱プロトン化したアミノ酸はアルカリ性で増えるし、低温では糖がほぼ環状。つまりワインではほんのわずかな量しか反応に利用できない。でも完全な阻害はされない。
もちろん時間も重要。
糖とアミノ酸の組成や割合によっても生成物が変わる。
金属イオンも錯体形成でメイラード反応の促進に関与している可能性がある。
圧力でも低速化するが、食品HPPでの報告のためはるかに高圧であり、スパークリングワイン程度での圧力の影響不明。
二酸化硫黄も阻害すると言われているが、まだ研究が必要。
生成物
多種多様。
まず、元の物質となる糖とアミノ酸の時点で変数が多い。
ブドウの収穫時期や環境でグルコースとフルクトースの割合は変わるし、アミノ酸も品種によって組成が変わるし、使う酵母の代謝、その自己分解、澱の上での熟成期間、など簡単に考えるだけでも気持ち悪い。
ただ結構研究はされてるみたいで、モデルワインでは含硫アミノ酸、特にシステインが、ピラジンやメチルピラジン、メチルチアゾール、アセチルチアゾールなどの、硫黄、トウモロコシ、ナッツ、ポップコーン、ローストしたヘーゼルナッツ、トースト、ロースト、熟した果物の香りを呈する物質を形成すると報告されている。
実際の熟成シャンパンでも含硫の複素環式化合物(チアゾールとかトリメチルオキサゾールとか)がシステインからメイラード反応由来で生成されているかもと言われている。この辺はいつかまとめる。
まとめ
ワイン中の還元糖とアミノ酸、またその他もろもろが反応して、α-ジカルボニル類やアルデヒド類、ピラジン類を作るややこしい反応。
ドサージュされたシャンパーニュやランシオ、マデイラなどで起きやすい感じ。
シャンパーニュの香りでは、システイン由来の香気成分が注目されているがまだ研究中。
論文でも多角的に見ていないものが多く、まとめきれていない印象。こんなとこでまとめるのは無理そう。
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