幸福につかれたら
わたしのデスクから斜め四十五度の視界に
ペールブルーの空がのぞく
けだるさを隠しもしない
ぬるま湯のようなオフィスで貪るのは
春の新作とか、要領を得ない愚痴とか
とにかくもふんわりとした何か
満足はわたしをゆるやかに分解していくから
低いフェンスの向こうで手招きをする
あれはなんだったか
もう、思い出せない
****
フルコース仕立てで並べられた
欲しかったものたち
あなたは
もういい、と言う
空っぽの皿をなぞる
わたしの指を折って
あなたは
もういい、と
***
「今日、今ここに、恐怖の大王が降臨したらいいのに」
**
何もかもを天秤にかけると
形のないものが、途方もなく恐ろしくなった
これは正解
それは妥協点
あれはあなたの正解で、わたしの不正解
指さし確認で渡る橋の向こう
見覚えのある差し出された手に
もし、わたしを明け渡してしまったら
空想と名付けた扉を叩いて
もし、そこからあなたが顔を覗かせてしまったら
もし、幸福につかれたら
そんなことばかりを考えてしまう
*
黄色い線の内側へ、
note 初出