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天使のくせっ毛

膝の上に座る息子の髪が顔をくすぐる。先日初めて美容院に行った際に、「まだ赤ちゃんの時の毛がありますね」と言われた。柔らかくて細くて、くるっくるの髪の毛。くすぐったさに、思わず髪に顔をうずめると、子どもの髪独特の、太陽のにおいと土のにおいと汗のにおいが混じった香ばしい良いにおいがする。

子どもの頃、自分のくせっ毛には辟易していた。漫画のような美しいウェーブになるわけではなく、好き勝手な方向へ向かっていくボリューミーな髪の毛たち。前髪はうねり、なすびのヘタそのものだった。どれだけドライヤーを使ってもうまくいかずに憂鬱だったあの頃、サラサラのまっすぐな平安時代のお姫様のような友人の髪に憧れていた。

何故か同じようなくせっ毛の男性を夫に持ってしまい、子どもは予想以上のくせっ毛で生まれてきた。しかし、これがなんとも可愛いではないか。親バカなのはわかっているのだが、まるで西洋画の天使のよう。寝起きに爆発している髪の毛。走り回って、根本や襟足がぐっしょりと濡れてへばりついている髪の毛。どれもくせっ毛だからこそ際立って面白い。実は絶壁の後頭部も、くるくるの髪の毛のおかげでふわっとなり、見事にカバーされている。

私が苦心していたあの髪の毛も、もしかしたら両親は愛おしいものとして見ていたのかもしれない。と今さらながらに思う。私自身は愛せなかったあの髪を、愛してくれた人がいたとすれば、それほど悪いものではなかったのかもしれない。今日も息子の髪に埋れながら、そんなことを思っている。

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