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「王様のピラフ」と呼ばれるピラフがあるアゼルバイジャン料理(コーカサス料理)

歴史的にシルクロードの通り道であり、また、近年ではオイルマネーにより、フレイム・タワーなどの高層ビルも見所であるアゼルバイジャンの料理のご紹介です。

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コーカサス地方にあるアゼルバイジャン

アゼルバイジャンとは、コーカサス地方にあるトゥルク系民族の国家です。

まず、「コーカサスってどこ?」と言う方のために、コーカサスにある国とは北コーカサスがロシア(の共和国)、南コーカサスがアゼルバイジャンアルメニアグルジアです。

ロシアは一応ヨーロッパ、コーカサスも一応西アジア(ヨーロッパに入れられることもありますが)なので、ここも一応(笑)ヨーロッパとアジアの境界線と言うことが出来ます。

トルコのイスタンブールボスポラス海峡はわかりやすく、アジアとヨーロッパの境界線と言えますね!(写真のあちらがヨーロッパ側、こちらがアジア側)

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コーカサスは地理上、歴史的に多くの民族が通過したエリアで、文化的にとても多様な場所となっています。(民族紛争が多い場所でもあります)

アゼルバイジャンの民族と言語

そして次に、トゥルク系の意味ですが、トルコ語系の言語を話す民族グループのことです。

トルコ民族の他にアルタイ族、ウイグル族、カザフ族、キルギス族、ウズベク族、トルクメ族、サハ族などが有名です。

私は新疆ウイグル自治区に住んでいたのですが、アゼルバイジャン語とトルコ語、トルクメン語の中でウイグル語に一番近いのはアゼルバイジャン語でした。(ウイグル語とウズベク語は90%同じなので)

どうでもいいですね、はい。

日本人にはあまり馴染みのないアゼルバイジャンですが、実はイランの最高指導者ハネメイ氏はアゼルバイジャン系です。

…書いてて気付きましたが、別にこれも特に日本には馴染みないですね(笑)

アゼルバイジャンの民族はアゼルバイジャン本国以上にイランやトルコなど、アゼルバイジャン国外の方が多くいます。

アゼルバイジャン料理との出合い

私のアゼルバイジャン料理との出合いは、新疆ウイグル自治区ウルムチにあったアゼルバイジャン料理店がきっかけです。

私がウルムチにいた頃に開店した、当時新しく出来たばかりのお店で、店内の内装も素敵で、居心地が良かったレストランです。オーナーはアゼルバイジャン人の方でした。

また、アゼルバイジャン料理ではないですが、彼らの作るボルシチ(アゼルバイジャンは旧ソ連圏です)は、当時、個人的にウルムチで一番美味しく、アゼル料理だけでなくボルシチを食べるためにも通っていました。

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そのアゼルバイジャン料理のお店から程遠くない所に、ウイグル料理、回族料理、旧ソ連圏の料理を出すお店があり、メニューの中で一つだけ「アゼルバイジャンポロ」と書かれたものがありました。

そのアゼルバイジャンポロは白いバターライスにグリルされたチキンが載っていたものなのですが、とても美味しく、(恐らくシェフや店員さんにアゼルバイジャン出身の方はいない感じだったので)それが本当のアゼルバイジャン料理なのかもよくわからないまま、かなりの高頻度で食べていました。

イラン、トルコ、中央アジア、東欧、ソ連の影響を受けたアゼルバイジャン料理の特徴

アゼルバイジャンはテュルク系であり、牧畜文化が発展したため、中央アジア料理トルコ料理の影響が見られます。羊を中心とした肉料理が多く、ヨーグルトやナッツを料理として使います。

お米も食べますが、主食はあくまで小麦です。

アゼルバイジャンにはカスピ海があるため、魚やキャビアも食べられています。串に刺した魚のグリルや酸っぱいプラムを使ったソースなどと食べられます。

しかし、実は周辺エリアの中ではペルシャ料理(イラン料理)の影響が最も大きく、味付けは、例えばサフランやシナモンなどのスパイスはよく使われますが総じて塩味は薄めで、ディルなどのハーブや(デザートではない食べ物にも)フルーツを多用したり、甘酸っぱい味が特徴的です。

フルーツはザクロ、アンズ、レーズン、チェリーなどが多いです。

また、黒海を通じてコーカサスは東欧とも繋がっているので、燻製の調理法を好む、根菜を使うなど東ヨーロッパ料理東欧料理)の影響も受けています。

アゼルバイジャンでもスモークチーズはよく食べられていたり、朝ご飯にはカシャ(каша)と言うオートミールのお粥が食べられています。

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カシャ

しかし、やや複雑になりますが、東欧はそもそも旧ソ連の影響が強く、アゼルバイジャンも旧ソ連圏であったため、旧ソ連圏の料理の影響と言うことも出来ます。

例えばカシャはロシア語ですが、中央アジアを含む旧ソ連圏で広く食べられており、他にはボルシチシャシリク(お肉の串焼き)などがあります。

アゼルバイジャンはイスラム教徒(シーア派)が多い国ですが、ワインの発祥地の一つとも言われ、お隣のグルジア程ではないですが、アルコールが広く飲まれています。

カタール・ドーハのアゼルバイジャン料理レストラン「ナヒチェヴァン」

ドーハの定番の観光地であるスークワーキフにある、アゼル料理のお店Nakhchivan(ナヒチェヴァン)をご紹介します。

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お店の名前であるナヒチェヴァンとは、ナヒチェヴァン共和国のことで、アゼルバイジャンの一部なのですが、飛び地なのでアルメニア、トルコ、イランに囲まれています。

飛び地とは、エリアの一部が全く別の場所にあり、地理的に分断されている場所のことです。

国の領土だけではなく、もっと小さい単位の行政区分でも飛び地と呼ぶことが出来ます。

飛び地巡りは面白いですが、ドバイから陸路で行けるオマーンのムサンダム地方が有名ですね♪

お店にはアゼルバイジャンの伝統衣装(Chepkenでしょうか?)も飾られています。

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全てのアゼルバイジャンの伝統衣装ではなく、この衣装だけなのですが、昔マニラ空港に展示されていたシンガポールの伝統衣装(ケバヤと言い、東南アジアで広く着られています)に何だか少し似ている気がします。

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言いたいこと伝わりますかね…?(笑)

中華圏のおばちゃんとかが目立ちたい時とかに着てそうな服でもあります。

気を取り直して、メニューのご紹介に移ります。

飲み物はミント入りのアイランにしました。(ミントなしでも注文出来ます)

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ヨーグルトに水と塩を混ぜた飲み物で、バルカン半島から中東、中央アジアなどかなり広い地域で飲まれていますが、ミントが載っているのがアゼルバイジャンっぽいですね。(まぁミントが入っている地域も少なくないですが笑)

サラダはNakhchivan Saladというサラダにしてみました。

フルーツが入っていて、味付けはシナモンは使われているけど塩っけは薄め、そして甘酸っぱいと言う、確かにアゼルバイジャンっぽいサラダでした。

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スライスされたトマト、玉ねぎ、ウォルナッツにチェリーが入っていて、ソースにもチェリーが使われています。

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このチェリーはロシア語でVishnya (вишня)と呼ばれるものかと思います。ロシアや旧ソ連圏の国ではVishnyaのジャムがよく食べられます。

右側のジャムですが、やはり手作りのジャムの方が圧倒的に美味しいです

こちらは手作りのVishnyaのジャムです。

@キルギスタンの首都ビシュケクの親友の家

私はロシア版クレープであるブリヌィに挟んでよく食べます。

@モスクワのブリヌィチェーン店

日本語では何と言うのか調べてみたらセイヨウサンシュユと言うらしいです、難しすぎる。

さくらんぼの一種なのですが、日本でよくあるアメリカンチェリーと比べて色も赤っぽいです。

少し時間が経つとソースがボルシチのような赤色に変わって可愛いカラーになりました♪

お次に、アゼルバイジャンのパンですが、薄い方のパンをラバシュ(Lavash)と言います。

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コーカサスだけでなく中東や中央アジアでも食べられていますが、アゼルバイジャンのラバシュは何とユネスコの無形文化遺産に登録されています!

ラバシュは味が濃いめの料理などと一緒に食べられることが多く、色々な料理にも使われるので、この後ラバシュを使った料理も3品ご紹介します♪

もう一つのパンはチョレーチと言って、伝統的にはタンディルと言う土窯で焼かれる、厚さが約3 cm、直径は20cm以上ある丸いパンです。

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こちらはGutab / Qutabと言う、ラバシュに具を詰め、円筒形に折りたたんで揚げられたペイストリーで、大体三角形の形にカットされて出されます。

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チーズやミンチのお肉が入っているGutabもありましたが、生の季節のハーブ(ディル、ニラなど数種類)が入っているものにしました。ムシャムシャと食べられて、サラダが入っている感覚です。

他にはカボチャが入っていることも多く、上の写真にあるように付け添えのヨーグルトと一緒に食べます。

Gutabの上にかかっているのはスマックと言う中東を含む広いエリアで使われている香辛料で、赤ジソのような味で、この時食べたスマックにはほんの僅かに辛味もあったような気もします。

ペルシャ料理ではハーブは野菜扱いですが、アゼルバイジャンでも同じ扱いなようですね!

甘いシロップでパンケーキのようにお菓子としても食べられます。イランでも名前が似ているQottabと言うお菓子がありますね。(見た目は全然違います)

こちらはひよこ豆のスープです、アゼルバイジャンらしく味付けは薄めでした。かかっているのは先ほどのスマックだったはず。

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アゼルバイジャンでもトルコ料理の影響でひよこ豆のスープを飲みますが、もっとメジャーなスープがいくつかあり、そのうちの一つがこちらです。

こちらはDushbara Soupと言う、ニンニクで味付けをした、羊のワンタンが入っている伝統的なスープです。同じく塩っけは薄いです。

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とても小さなワンタンと言う感じでしょうか?

Dushbara は名前を変えて色々なエリアで食べられていますが、例えばウイグル料理のチュチュレ(چۆچۈرە)よりも一回り以上小さいです。

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こちらがウイグル族のチュチュレです。

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スープにかけるお酢をもらいましたが、日本の黒酢と味が少し似ています。

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ここでもドライミントは忘れず入っています。

アゼルバイジャンのプロフ(ピラフ)

メインはプロフ/プロヴと言う炊き込みご飯(ピラフ)で、アゼルバイジャンのプロフは、使う具材(お肉の種類、シーフード、野菜、卵、ナッツなど)や味付け(サフランを使うか、どんなスパイスを使うか、オリーブ風味、トマト風味、牛乳を使う、甘い味付けなど)によって名前が変わり、何百種類あるとも言われています。

私が家で作ったアゼルバイジャンのプロフの一つです

まぁ具材や味付けによるなら、もはや無限にありますね(笑)

鍋底に小麦粉で作った薄い生地を敷いて、その上でお米を炊き込むプロフもあり、おこげの部分は皆んな大好きだと聞きました。

イランでもターチンターディグと言う、おこげが付いたライスディッシュがあり、イラン人もおこげの部分が大好きです。

ターチンモルグ(中にチキンが入ったターチン)

このように定番のポロフの作り方もイランと似ており、わかりやすくイランの影響を受けているのがわかります。

お店で食べた2種類のプロフをご紹介したいのですが、一つ目がシチューとご飯タイプの別々に作られたOvruste Pilafです。

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牛肉と乾燥したアンズ、玉ねぎ、栗が入っていて、ソースは先ほどの難しい名前のさくらんぼ(もう名前忘れました)が使われています。

ご飯はアゼルバイジャン伝統のサフランライスで、サフランとバター、フルーツ(アンズ)で味付けされています。

 塩水につけおいたバスマティ米などの長いお米を使って炊き込んでおり、日本のバターライスよりもパラパラと言うよりもはやサラサラしていて、食べていてバターの重さが全くありません。

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少しウルムチで食べたアゼルバイジャンポロを思い出させる味でした😍

黄色の部分はお皿ではなくパイ生地のような食感になったラバシュで、食べる前にハーブとザクロをトッピングします。

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いよいよ王様のプロフの出番

そしてさらにインパクトがあるのは、「王様のプロフ(Crown Pilaf)」と呼ばれているこちらのシャーピラフ/シャーポロヴ(Shah pilaf, Shakh plov)です。

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ラバシュを開くと、何と中からプロヴが出て来るのです!!

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見た目が王冠に似ているので、「王様のピラフ」と呼ばれるようになりましたが、中世の東アゼルバイジャンの王様はこのような王冠をかぶっていたそうです。

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ラム、栗、ドライフルーツ(アンズ)、玉ねぎとサフランライスの炊き込みご飯です。

羊の脂を利用する中央アジアのポロと違い、プロブ全体では羊の味(羊が苦手な人は臭みと言う言い方をする人もいるかも)も抑えられています。

アフガニスタンの国民食カブール風ピラフ程たくさんのフルーツ(レーズン)は使われておらず、お米やマトンを食べている分にはアンズの甘さはそこまで感じませんでした。

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しかし、ドライフルーツがうまく羊の味をまろやかに吸収しているのでしょうか。

そして、ご飯はほのかにバターの味の香りがすると言う、色々な具材を混ぜているのに全体としては逆に控えめな味の仕上がりで感動しました。

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動画に撮ってみましたので、是非ご覧下さい♪

ピラフと言い、やはりトルコ料理よりペルシャ料理の影響が強いアゼルバイジャン料理ですが、アゼルバイジャン人と話していると民族のアイデンティティのベースはやはりトゥルク系であり、料理にしかり、文化はトルコとの比較で語られることが多い気がします。

(※イランにいるアゼルバイジャン民族とお話をしたことがないので、そこは不明です。アゼルバイジャンの友達は皆バクー出身で、一人Ganjaのお友達がいます)

食後のお茶

食後はアゼルバイジャンの国民飲料である紅茶を飲みました。伝統的にはサモワールで沸かされ、アゼルバイジャンでもジャムと一緒に飲んだりもします。

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確か店内にサモワールはなかったので、違うレストランにあった素敵なサモワールの写真を張り付けておきます♪

@ドーハのペルシア(イラン)料理のレストラン

こちらはアゼルバイジャンでメジャーな紅茶ブランドです。

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お隣にあるのはキルギスタンの白い蜂蜜で、この記事の最後の方でも少し触れています♪

デザートも食べたかったのですが、余力がなく無念です。

アゼルバイジャン出身の店員さんに「アゼルバイジャンのパフラヴァとアラブのバクラヴァの違いは何?」と聞いてみると、「アラブのバクラヴァを食べたことがないからわからない」と言われました(笑)

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他にもクナーファもあったので、今度デザートも食べに行ってみようかと思います。

ナヒチェヴァンの場所

スークワーキフ駅(メトロのゴールドライン)の、スークワーキフ出口から徒歩10秒位で、私でも迷わなかったので問題なく辿り着けるかと思います☆

お持ち帰りでもこんなに可愛い入れ物に入れてもらえます♪

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ちなみにカタールのレストランは残した物を全部包んで欲しいと言っても基本的に何かは欠けています(笑)

特にナンなどのパン系は基本入れてもらえないので、しっかりとお願いした上で、もらった後にもちゃんと確認をお願いします♪

ナヒチェヴァンの近くに、カタールで人気のあるペストリーショップであるAl Aker sweetsもあるのでぜひ行ってみて下さい♪

スークワーキフから歩いていける距離にイスラム文化センターがあり、外観がとても美しいのでぜひ足を伸ばしてみて下さい☆

**********************************************************************************インスタグラムでも世界の料理や旅先、カタール生活の写真を投稿しています♪
https://www.instagram.com/bahargul7237/



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