#16 2つのBA -DX推進の実際⑥-
◆DX戦略の策定 5
前回
DXを推進するための4つの戦略策定要素の2つ目である、「目的とする変革によってもたらされる、顧客や社会の価値を想定する」について掘り下げました。ビジネスの将来の姿を想定するという作業でしたね。
今回
戦略策定要素の3つ目、「遂行しようとするDX推進活動のリスクを見積る」について考えていきます。これは活動そのものにどんなリスクがあるのかを分析し、その結果をマネジメント(評価、見直し)します。
リスク分析
リスクを見極めマネジメントすることは、戦略を策定する上で重要なインプットになります。リスク分析は次の4つの項目で考えます。
リスク発生時に起こり得る結果
それらの結果による影響
リスクの起こりやすさ
リスクが発生するかもしれないタイミング
さらにリスクを分析するときの要素として、次のものがあります。
現状の認識から、起きるかもしれないリスクを想定する
「制約条件」「前提条件」「依存関係」から、リスクを探る
リスクの発声可能性と影響度合いから、リスクのレベルを算定する
リスクへの対応の度合いを設定する
リスク回避型(リスクの発生を予防する)
リスク中立型(リスクの発生をある程度許容するが、予防も行う)
リスク愛好型(リスクの発生を覚悟し、敢えて挑戦する)
リスク対応のアプローチを考える
リスクがあっても変革のため行動する
リスクを削減しつつ、変革の行動を行う
リスクを受け入れつつ、それを無視できる変革の効果を追求する
リスクと変革の行動のバランスを考え、対応を最適化する
大きすぎるリスクが存在するため、変革の追求を中止する
リスクに対する考え方
リスクを分析しそれを予防する、あるいはリスク発生時の対応を考えておくことは重要です。考えた結果を「DX推進戦略」としてまとめます。
リスクマネジメントはPM(プロジェクトマネジメント)の世界でも重要事項として位置付けられています。ビジネスアーキテクチャやビジネスアナリシスにおいても重要であることは同じですが、リスクのとらえ方が異なります。ビジネスアーキテクトはDXを推進するための仕組み、構造を考えますがそのため想定するリスクは、これらに影響を及ぼすものになります。
同様にビジネスアナリストはDXを推進する目的を明らかにするために、現状を分析したり将来を想定したりすることで、DXの実行から得ることができる”価値”を考えます。そのため”価値実現”を妨げる要素をリスクとして認識します。
リスクマネジメントの維持
リスクマネジメントで重要なのは、その活動を特定のDX推進活動が続く間維持することです。維持は意識的に行わないと、いつの間にか忘れ去られてしまうことになります。筆者の経験からも定期的にリスクの状況をウォッチしていないと、維持することは難しいと言えます。なぜなら、例え上辺だけでも平穏に推移している時はリスクを意識することは少ないですし、いざリスクが発現してしまうとその対応にかかりっきりになるからです。ですから意識的にマネジメントすることが重要になります。
次回
DX戦略の策定要素の4番目「全体を取りまとめて戦略を策定する」をお送りします。これまでDX戦略の策定で必要になる、
ビジネスを遂行する組織の現状を知る
目的とする変革によってもたらされる顧客や社会の価値を想定する
遂行しようとするDX推進活動のリスクを見積る
の各要素についてお送りしてきましたが、最後にこれらの要素を取りまとめて、「DX推進戦略」として取りまとめます。
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