#14 2つのBA ーDX推進の実際④ー
◆DX戦略の策定 3
前回の振返り
「DX推進活動の戦略」を立案するため以下の4つの要素を示しました。
1.ビジネスを遂行する組織の現状を知る
2.目的とする変革によってもたらされる顧客や社会の価値を想定する
3.遂行しようとするDX推進活動のリスクを見積る
4.全体を取りまとめて戦略を策定する
さらに、「1.ビジネスを遂行する組織の現状を知る」ために次の3つのアプローチ手法を上げ、説明しました。
●既存の企業内文書の分析
●ヒアリング(引き出し)
●現状のビジネス環境の構造化
今回の解説内容
今回は、3つ目のアプローチ手法である「現状のビジネス環境の構造化」について詳しく説明します。
ビジネス環境の構造化
ビジネス環境の構造化とはビジネスを取り巻く環境を可視化することです。このビジネス環境のことを「ビジネスエコシステム」とも言います。
エコシステムとは「生態系」のことで、生物と生物が生きて行く環境を合わせたものを指します。ですから「ビジネスエコシステム」とはビジネスとそれを遂行するために存在する全ての存在になります。
具体的には以下のものになります。ビジネスで価値を獲得する「顧客」、顧客に価値を届ける組織、組織によって利用されるシステム、組織を統制する仕組み、経営者のリーダーシップ、職員のやる気などなどになります。
ビジネスエコシステムの可視化
このビジネスエコシステムの可視化は、ビジネスの要素を抽象化したモデルを作成することで可能になります。
モデル化の注意点
モデル化を行う際に、以下の2点に注意する必要があります。
●抽象化のレベルを意識する
抽象化の度合いは、モデルから何を得るかによって変わってきます。
事前にモデル化の目的を明確にすることで、適切な抽象化の度合いを
設定することができます。
●モデル化の範囲を明確にする
範囲も、モデル化の目的によって変わってきます。今もっとも取り組
むべきと判断するところに焦点を合わせて、モデル化することが必要
になります。
モデル化の利点
今この場では「DX推進の戦略」をどのように作り出すのかを考えているので、モデル化の詳しい手法は別の機会に譲るとします。
ただモデル化の最大の利点は、ビジネス環境の可視化によって、関係する人々にビジネスに関する共通の認識を提供するところにあります。
この全ての関係者が共通の認識を得ることを可能にすることは、戦略を設定する上だけでなく様々な情報を取得、整理、理解する上でとても大切なことです。
とはいうものの、筆者の経験では企業で働く人たちは、自分が担当する業務について承知していても、自身の業務がビジネス全体にとってどのような位置づけにあって、どのような形で他部門や協力会社と連携し、どのような人に価値を届けているのかを理解している人は多くありません。まずビジネスのエンドツーエンドの全体像をイメージし、俯瞰できるようにすることが正しいDX推進のためには欠かせません。そのためにビジネス構造の可視化が必須となります。
モデル化の概要
ビジネスアーキテクチャの知識ガイドであるBizBOK®では、ビジネスを可視化するためにビジネスの要素を10個のドメインに分けて、それぞれモデルを作成します。その中でも重要な、以下の4つの主要ドメインにおけるモデルを優先的に作成します。
1.組織が持つ能力(Capabilities)
2.価値創造の流れ(Value Streames)
3.組織構造(Organization)
4.ビジネス情報(Infomation)
その他のドメインは、関係者(Stakeholders)、理念(Policies)、戦略(Strategies)、製品(Products)、改革の取り組み(Initiatives)、ビジネス指標(Metrics)となります。
このモデル化については、別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
次回は
策定のための第一ステップである、「ビジネスを遂行する組織の現状を知る」について解説しました。次回は第二ステップの「目的とする変革によってもたらされる、顧客や社会の価値を想定する」について説明していきます。どうぞご期待ください。
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