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#4 2つのBA(ビジネスアーキテクチャとビジネスアナリシス)

「DX推進の動機」と「社内でだれがDX推進の必要性を理解しているのか?」について考えています。動機には経産省を始めとする「社会的な要請」が2つと、ディスラプター(破壊者)が存在するマーケットからの要請の3つがあると考えました。
その動機をきっかけとしてDXを推進していくわけですが、誰が”動機”を理解してDX推進を提唱しているかで、様々なストーリーが発生します。
前回は、経営を荷いながら最高責任者(社長)をサポートする立場にある人が、ビジネスが置かれている環境や状況を可視化し、社長を説得するというシナリオを展開しました。本来これだけではなく、中間管理職や一般職員ともその想いを共有する必要がありますが、その方法は後でご説明します。
今回はもう一つのシナリオである「経営TOP(社長)がDX推進の必要性を理解しているが、社内の他の層(経営層、中間管理職層、一般職員層)がその必要性を感じていない」という場合について、考えてみましょう。
このパターンは結構よく聞く話です。特に社長のアンテナの感度が業績にまともに影響するビジネスモデルを主力とする中小企業では、社長が最も勉強熱心で最新情報に精通していることがあります。もちろん社長がそんな心配をする必要のない企業もあるでしょうが。
勉強熱心な社長は、様々なセミナーや商工会議所などの集まりに出たり、業界雑誌やSNSなどからDX推進に関する情報を得ていることでしょう。
その上で詳細な情報はさておき、その必要性を理解して社内に持ち込んで社内のしかるべき部署や、取締役会でDX推進の検討を指示することになります。
支持を受けた取締役や経営企画部などは、社長の意を汲んでそれを実行しようとしますが、唐突な指示でありかつ”動機”を共有できていないため、目的やアプローチ方法を一から考えなければならず、戸惑ってしまうのが予測できます。また自身の仕掛の仕事もたくさん抱えており、意識的には「忙しい上に無理難題をふられてしまった」となりかねません。つまり被害者意識が先に立つことになります。
こうなると次に予想できるのは、「世間で実行しているDXとはどんなものか?」を調査することと、その中でもっとも現状の仕事に影響のないものを探して、それを「わが社のDXです」と社長に報告するわけです。それが”PoC”で終わっても、担当取締役や中間管理職としては他の会社でもやっているという言い訳で終わらせることが可能です。社長も自分の思っていたものと結果が異なっていても、関係する社員の総意であればそれ以上追求できないものです。したがって結果は残せずうやむやに終わり、DX推進の失敗事例に山ほど出てくる典型的な結末を迎えることになります。
このシナリオで何がまずかったかというと、”動機”これは取りも直さず”危機感”と同意ですが、これを全社員と共有できていなかったことです。PoCにしても、DXを実行する目的設定が明確でないため、軸が定まらない作業をおこなったり、ツールベンダーの言葉に載せられて目的のはっきりしないツール導入を実施したりすることになります。RPAやノーコード、ローコードツールの導入とDXの実行には直接関係性はありません。よくあるのは、因果関係の逆転です。ツール導入はDXが実行することではないし、DXが目指すのはツール導入ではなく、ビジネスに変革をもたらすことです。
次回は3つ目のシナリオである「現場の一般職員は危機感を持っていて、改革を進める必要を感じているが、中間管理職や経営陣、社長はそう思っていない場合」となります。この難しいシナリオは次回考察することにします。


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