見出し画像

#22 2つのBA -DX推進の実際-    【顧客の価値を想定する②】

-PR=

前回は
 新規にビジネスを対上げようとする、もしくは既存のビジネスを見直し深化させようとする場合、どのような手順とテクニックを使って実現するのか、その最初の段階について解説しました。

 つまり、まずターゲットとなる複数の詳細なペルソナを設定し、バリュー・プロポジション・キャンバスを使ってペルソナの内面性を考え、カスタマー・ジャーニー・マップを作成してプロダクトやサービスの内容を検討します。その結果をビジネス・モデル・キャンバスにまとめ、想定されるリスクとともにビジネスモデルの正当性を検証するという手順でした。
 
 その上で使用するテクニックとして、SWOT分析、ペルソナ想定、バリュー・プロポジション・キャンバス、カスタマー・ジャーニー・マップをご紹介しました。

今回は
 価値創造の中核となるモデリング手法であるバリュー・プロポジション・キャンバス と ビジネス・モデル・キャンバス についてご紹介します。

バリュー・プロポジション・キャンバス
 直訳すると「価値を提案するために表現する場所」とでもなるでしょか。キャンバスは油絵などを描くときの台に帆布などを貼ったものですね。このキャンバスに価値提案の絵を描くということになります。以下をご覧ください。 

Value Proposition Canvas

 まず注目するのはCustomerです。ここで想定する顧客は想定するカスタマーのペルソナの一人です。ペルソナ分析で想定した顧客イメージを基に、解決すべき課題、顧客の悩み、顧客が獲得する価値を記述します。
 次にその顧客の要求に対して応える、製品やサービスを考えます。顧客の悩みを取り除くにはどうしたらいいのか、顧客に必要とする価値をどう提供するか、これら2つを満たす製品やサービスは何か?と考えます。
 この作業で行うべき価値創造の内容を明確にイメージすることが出来ます。もちろん複数ペルソナに対して同じ作業をすることになるので、複数の製品やサービスの必要性が浮かび上がるかもしれません。これらを統合したしたものにするのか、それとも顧客をセグメントした製品やサービスにするのかは別の話です。

 このように顧客の価値を追求するという考え方から出て来た、Value Proposition Canvasですが、ここで上げたようにペルソナ分析と合わせて、新しい製品やサービスを生み出したい時に威力を発揮します。もう一つの使い方として、既存の製品やサービスが顧客の要求を満たしているのか、アンマッチになっていないかを確認したい時にも有効です。かなりパワフルなフレームワークだと思います。

ビジネス・モデル・キャンバス
 
いまではかなり普及した感のあるビジネス・モデル・キャンバス(BMC)ですが、ビジネスを実行するために必要な検討要素の多くを、一枚のキャンバスの上に合理的に表現するという優れものです。以下をご覧ください。

Business Model Canvas

 では各項目について、筆者の思考の流れに沿って順に解説していきましょう。この順番は人それぞれで決まりがあるわけではありませんが、筆者としてはこれまで見て来た、Value Proposition Canavasやペルソナ分析などのアウトプットを意識した順序で考えています。
1.Customer Segments(顧客)
 このビジネスがターゲットとする顧客のことです。このブログではお馴染みのペルソナ分析から抽出した顧客のことです。
2.Value Proposition(価値提案)
 これも Value Proposition Canvasで明らかにした内容ですね。ターゲットセグメントの顧客にどのような価値を届けるのかを記述します。
3.Channels(販路)
 
チャネルとは販路のことです。ターゲットとする顧客とそこに提供する価値をどのように届けるのかは重要なビジネス要素です。
4.Customer Rerationships(顧客との関係)
 顧客と提供しようとする製品、サービスの関係を記述します。どのようなタイミングと形で顧客と接するのか、顧客のエンゲージメント(良好な関係性)をどう築いていくのかなどを記述します。これはカスタマージャーニー作成時に検討した項目になりますね。
5.Revenue Streams(収益の流れ)
 ここまでの記述で顧客に関わる要素を網羅してきました。そこで、対象となるビジネスはどのような形で顧客から収益を得るのかを記述します。収益の獲得には、製品やサービスの対価を得る(販売)、製品をレンタルして対価を得る(賃貸)、サービスに対して定額・定期の対価を得る(サブスク)、使用権の譲渡もしくは貸し出しにより対価を得る(ライセンス)、広告提示場所を提供することにより広告料を得る(アフェリエイト)などがあります。どのような方法でマネタイズするかということですね。
6.Key Activitys(主要活動)
 ビジネスを実践する上で必要な活動を記述します。とはいってもビジネスは様々な活動、例えば総務や人事やITなどのシェアードサービスや営業、生産、企画などの個別に実施する業務があります。ここでは、フォーカスしているビジネスを形作る主要(特徴的)な活動を記述します。
7.Key Resouces(主要資源)
 ここでは、ビジネス活動を行う上で必要なリソース(資源)を記述します。リソースには「人」「金」「もの」があります。どの人が、どの予算を使って、どのような手法でビジネスを実行するかを記述します。この中には企業内部だけでなく外部の資源も含みます。
8.Key Partners(主要協業者)
 主な協業者について記述します。前記のKey Resoucesを提供する外部組織やを記述します。自社が保有していなく、想定するビジネスに不可欠な能力(ケイパビリティ)を提供する外部組織のことです。
9.コスト(費用)
 ビジネスを準備するもしくは実施し継続するために必要な投資について概要を記述します。

まとめ
 バリュー・プロポジション・キャンバスとビジネス・モデル・キャンバスについて解説しました。いかがでしたでしょうか?
 筆者の基本的な考え方として、ペルソナ単位のバリュー・プロポジションを明確にし、その顧客に対する製品やサービスを考え、ビジネスモデルに落とし込むという流れにしています。逆にまずビジネスモデルをイメージして、製品やサービスの内容を考えるということもあり得ます。いずれにしても、一度作ればそれで終わりでなく双方を行ったり来たりしながら精度をためることを意識することが重要です。
 関係者が集まってこれらのキャンバスを前に、あーだ、こーだと議論し形にして行くことは大変ですが、楽しい過程になります。その結果コミュニケーションが活発になり、ビジネスに関するイメージと意識の共有が可能になるという大きなメリットを期待できます。是非一度お試しください。

次回は
 「DX推進戦略の策定」における次の4つの行動を挙げましたがその3番目「実行しようとするDX推進活動のリスクを見積る」について考えを進めることにします。

  1. ビジネスを遂行する組織の現状を知る⇐前回

  2. 目的とする変革によってもたらされる顧客や社会の価値を想定する⇐今回

  3. 実行しようとするDX推進活動のリスクを見積る⇐次回

  4. 全体を取りまとめて戦略を策定する


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?