#21 2つのBA -DX推進の実際- 【顧客の価値を想定する➀】
前回は
「DX推進戦略策定」の手順の1番目である「ビジネスを遂行する組織の現状を知る」の最終回でした。現状を知るためのテクニックの一つとして、ケイパビリティ・マップとバリューストリーム・マップをご紹介しました。またこの2つのマップを合わせてクロスマッピングをすることで、ビジネスの全容を抽象的な(ハイ)レベルで理解可能にすることを解説しました。
ビジネスを遂行する組織の現状を知る⇐前回
目的とする変革によってもたらされる顧客や社会の価値を想定する⇐今回
実行しようとするDX推進活動のリスクを見積る
全体を取りまとめて戦略を策定する
今回は
昨今のビジネス、あるいはビジネスモデルに対する考え方は大きく変化しています。かつては顧客のニーズをいかに効率的に満たすかが重視されていましたが、現在では機能やブランドといった直接的な価値に加え、体験や経験を通して得られる精神的な喜びを「真の価値」として提供することが重要視されています。これを「価値創造」と呼び、ビジネスの中心に据える考え方です。前回解説したバリューストリームも、この考え方に基づいたモデリング手法です。
DXを推進する上で本質的なのは、この「精神的な喜び」という新たな価値をいかに創造するかです。そのためには、新たなマーケティング理論や最新デジタル技術に関する知識が不可欠です。
その基礎データとなるのが、前回までに解説した「組織の現状を知る」で把握した、組織のポテンシャル(プラス面、マイナス面両方)です。自社の強みと弱みを理解し、SWOT分析で整理することで、強みを生かしたり弱みを逆手に取ったりした複数のサービスを想定できます。この際、自由な発想と多様な知識が重要です。得られたアイデアを具体的なビジネスモデルに落とし込みます。これは、アート思考でアイデアを生み出し、デザイン思考でそれを膨らませ、ロジカル思考で実現可能な形にする、とも言えるでしょう。
ビジネスモデル検討
ビジネスモデル検討の手順は、まずターゲットとなる複数の詳細なペルソナを設定し、バリュー・プロポジション・キャンバスを使ってペルソナの内面性を考え、カスタマー・ジャーニー・マップを作成してプロダクトやサービスの内容を検討します。その結果をビジネス・モデル・キャンバスにまとめ、想定されるリスクとともにビジネスモデルの正当性を検証します。
これはあくまで一例であり、他にも様々な方法論があります。ぜひご自身に合った方法を見つけてください。
以下に、上記テクニックの解説を記載します。前提として、都心に立地する中堅サラリーマン向けの休息スペース「ぼくの秘密基地」を展開するビジネスの構想を例に、具体的な内容を説明します。
SWOT分析
言わずと知れた基本的でパワフルな自己分析手法です。内部環境として、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)。外部環境として、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素を4象限に分けたフレームに記述します。こうすることで自社のポテンシャルを明確にすることが出来ます。さらに、内部環境要素と外部環境要素をクロスすることで様々な状況に対応する方法を検討します。
ペルソナ想定
想定する顧客についてその生活パターンや、感情の動きなどを推測するためにある程度詳細に設定する。設定項目としては、氏名、年齢、性別、出身地・居住地、家族構成、学歴、生活スタイル、価値観、職歴・現在の職種、役職、仕事内容、目標や課題、利用しているデバイスやWEBサイト、情報収集の手段 等々があります。
例1:45歳男性、都内一部上場企業の本社勤務の営業課長。妻、中学生の長男、小学生の長女の4人暮らし。通勤時間1時間程度の郊外に自宅を所有し、ローン返済中。会社では責任が増え、家庭を顧みる機会がなく、日々ストレスにさらされている。
例2:55歳男性。3年前に妻を亡くし、21歳の娘と2人暮らし。都内の中小企業で財務部長として勤務。会社の経営状況は悪くないが、中小企業のため日々資金繰りに頭を悩ませている。
このようにペルソナを設定し、その対象となる顧客候補がどのような感性と持ち、どのような生活パターンで過ごしているかを想定することで、ペルソナとのタッチポイントを探ることができます。
バリュー・プロポジション・キャンバス
以下の6つの項目を、想定したペルソナの特性から埋めていきます。
顧客が解決すべき問題
悩み
獲得する利得
提供するプロダクトやサービス
顧客の悩みを解消するもの
顧客に利得をもたらすもの
カスタマー・ジャーニー・マップ
カスタマー・ジャーニー・マップは、顧客の行動特性を時系列に並べ、それぞれのタイミングで効果的な働きかけを考えるものです。基本的なパターンとしてAIDA(Attention:注意、Interest:関心、Desire:欲求、Action:行動)があります。
このように、顧客や社会の価値を想定し、具体的なビジネスモデルに落とし込むことで、DXを成功に導くことができます。
上記はAIDAを発展させたAIDMAです。これらは非インターネット環境で考えられたモデルですが、現在では多くのネット対応のものが考え出されています。下記は代表的なAISASのフレームワークです。いまでは、AISCEAS、AIDCASなど、様々な発展形が考え出されています。
今回は
ここまでとします。次回は「バリュー・プロポジッション・キャンバス」と「ビジネスモデル・キャンバス」の解説を行います。どうぞお楽しみに!
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