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おもいでの人(1)

福祉施設で看護師をしていたときのことです。

夕暮れになると落ち着かなくなる
認知症のMさんという方がいました。

興奮して大声をあげたり
自分から壁に突っ込んで傷を作ったり。

その日は夕食も食べずにお部屋で大きな声をあげていて
一人にして置くわけにもいかず、介護士が付き添っていました。

夕方の介護士はとても忙しい。

他の方の食事介助や口腔ケア、排泄介助もあって困っていたので、
私が代わりにその方に付き添っていました。

「どうしましたか?」
「何か困っていますか?」
「お腹空いてませんか?」と聞いても

返事は「あーーーー!」。

こうなると看護師にもできることは何もなくて。

落ち着くまで背中に手をあてて添い寝することにしました。

1時間ほど過ぎたでしょうか。
静かな呼吸になり、すやすや寝はじめたので、そっと退室しました。

そのままぐっすり寝たそうです。

反射の統合ワークで
お客様の背中をなでたりするのですが、
たまに、Mさんを思い出します。

からだの違和感?寂しいなどの感情?大声の理由を知るよしはないけれど、

あの日、Mさんは何を伝えたかったんだろう。


お客様のからだを感じながらふとよぎるMさんに意識を合わせると、穏やかに眠る表情が見えて

背中をなでている手に重なるのでした。


(また、お立ち寄り下さい。)

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