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27歳フリーターがエジプトを一人旅したら、感動で涙が止まらなくなった。


エジプトに行こう

※この記事はめちゃくちゃに長いです。面白そうなところだけつまみ食いして読んでいってください。

2024年7月。仕事を辞めてから半年。フリーターとして仕事をして、お金を貯めた。

そんな中、自分の死ぬまでにしたいことリストに入っていたあれが、頭の中で声を上げているのが聞こえる。

そうだ、「ピラミッドを見る」だ。

調べてみたら、成田からエジプトのカイロまでの航空券はエコノミークラス往復で16万。俺を止めるものなんてない。さぁ、行くぞ!!

今回の旅の大まかな計画はこうだ。

カイロでピラミッドを見る→ルクソールに南下して王家の谷を観光→アブシンベルに南下してアブシンベル神殿を観光→カイロに北上して日本へ帰国。

カイロに向かう飛行機で

2024年7月某日、成田国際空港からエジプトのカイロへと飛び立った。やけに座席が空いている機内で夜を明かす。いつもは飛行機のエンジンの音がうるさくて一睡もできないが、今回はよく眠れた。ノイズキャンセリングイヤホンってすごいね。みんなも絶対持って行ってね。

隣には誰も座っていない

エジプト滞在記(1日目)偶然の出会い

機内で夜を明かしてしばらくすると、機体が高度を下げ始めた。窓の外の遥か下の地上では、朝と呼ぶにはまだ早すぎる真っ暗な街を車が行き交っている光景が目に入る。

エジプトに来たんだ。

体中の血液が沸騰するような不思議な感覚に襲われる。スマホとジャンクフードに汚染されて腑抜けきった俺の体は、エジプトを前にしてヒト本来の原始的な闘争本能を取り戻したかのようだ。

トウキョウとはまた違う種類の光を放つカイロの街

朝4時過ぎ、カイロ国際空港に到着した。ビザを取得して空港の外に出ると、ゾンビ映画のゾンビさながらの無数の客引きが一斉にこちらをジロリと見つめてくる。適当にいなしながら、近くの駐車場の端に腰を下ろす。

アラビア語じゃないか!

早朝5時のエジプト。空気はしっとりとしていて暑すぎず寒すぎず、運動会の日の朝みたいな感じ。Uberで呼んだタクシーと合流して、ホテルを取っているギザのピラミッド周辺まで向かう。

少しくすんだ空がエジプトらしい

車内ではアラビア語のラジオが爆音で流されている。死ぬまでにもう二度は見れないであろう景色を、窓越しにぼーっと眺める。旅好きの俺も遂にここまで来たか。感慨深いとはまさにこのこと。

今まで行ったどの国よりも、自分が旅人になれている感じがするよ

市街地に入ると、街の様子が一気に変わる。ゴミの散らかった通り。何回追突されたのかわからないくらいぼこぼこにへこんだ車。砂埃で外壁が黄土色になったビル。これがエジプトか。

旅だ

空港から30分ほど車で走り、ギザのピラミッド周辺に近づいてきた。今回の旅のハイライトになるであろうピラミッドが視界に入らないように下を向いていたが、好奇心をおさえきれず車窓から遠くを見渡すと、突如としてそれは目に飛び込んできた。

例のやつ登場

運転手「ほら、ピラミッドだ!!」
俺「おおぉ、でかいっすねぇ。」

なんて会話を交わしながら、心の中で思ってしまったことがある。

「…なんか思ったより小さくね…??」

期待が大きすぎたのか、あるいは大都市トウキョウの摩天楼に目が慣れてしまっているからなのかはわからないが、自分の気持ちに嘘をつかずに言うのであれば想像を超える迫力ではなかった、というのが正直なところだ。いや、でかいはでかいのだが。

でも、これでいい。実際に見てわかることもある。それが良かれ悪かれ、一番大切なのは自分の目で見て感じることだから。それは俺が一番よく知っている。

ホテルの屋上から見たピラミッド

エジプトに行った人であればわかると思うが、この国ではとにかく観光客へのぼったくりや詐欺が横行している。「話しかけてくる人は全員詐欺師」というのは本当にその通りで、自分もガードを固めていたが、あちらもプロ。あの手この手で金をだまし取ろうとしてくる。

入り口から中に入ると、さっそく一人の男に話しかけられる。

「よう!ピラミッドまで歩いていこうってのかい?」
「うん。そうだよ。」
「おいおい、遠すぎて歩いて行くのなんて無理だぜ。あっちに馬がいるから、それに乗っていけ。」
「いやいや、みんな歩いて行ってんじゃん。あと俺馬には乗らないから。」
「おうおう、じゃあラクダでも構わないぞ。○○ポンドでどうだ?」
「高過ぎるなぁ。自分で歩いて行って無理そうなら頼むから!またね!」

後ろでまだ声が聞こえるが、そのまま振り切る。俺もこれまで色々な国を旅してきたんだ。初めての海外旅行のオーストラリアから始まって、ベトナム、香港。あと一人でカナダまでオーロラも見に行ったし、旅の難易度だって少しづつ上げてきた。これくらいの客引きに騙されてたまるかよ、なんてカッコつけながら、ピラミッドに向かってのしのしと歩を進めていく。

ここは日本じゃない。善意に対して善意で応えてくれるという原則は存在しない。多少冷たくてもはっきりと拒絶の意思を示した方が良い。

やっぱり近くで見ると迫力がすごい

せっかくエジプトに来たわけだし、ラクダに乗るかーなんて思いながら歩いていると、ラクダ乗りのおじさんが近づいてくる。行けるところまで値切りしたら当初の半額になった。…絶対あとでぼったくってくるやつやん。

意外と首が長い

ラクダにはおじさんと俺が二人乗り。乗ってみるとけっこう高くて怖い。「しっかり掴まってろよ。」と言われて前の彼に掴まると、あまりの汗臭さと体臭に思わず顔をゆがめる。臭すぎる。もしやあんたがラクダだったのか?まさしくエジプトという感じだ。

ピラミッドの近くを30分くらいで回るコースだった。途中で記念撮影をして、最終的には値引き前の価格を上回る金を要求された。ぐああぁぁ、やっぱりエジプトは手ごわいなぁ、なんて思いながら、遠くのピラミッドとその前を横切って歩いて行くラクダの群れをぼーっと眺める。

俺はここに来た一つの目的を果たした。

いつかの記憶の中で見たような光景だ

せっかくここまで来たので、クフ王のピラミッドの内部に入ることにした。午後にならないと入れないとのことで、ピラミッドの入り口で座り込んで列に並んで待っていると、隣の男性から話しかけられた。

「日本人の方ですか?」
「はい。そうですよ。」
「あぁ、よかったー…!今新婚旅行で来てるんですけど全然日本人がいなくて…。安心しました。」
「あぁ、そうだったんですか!」

彼はジョージアに住んでいる日本人とのことで、新婚旅行でエジプトへ来たらしい。滞在初日とのこと。僕としても、ここまでかなり気を張っていたこともあり、彼と話していて安心した。彼らはこの旅が終わったら日本へ戻るらしい。

偶然だなぁなんて思いながら話していると、列に並んでいた別の男性2人組から声をかけられた。

「日本人ですか?」

話すと彼らはそれぞれ単独で旅をしていて、さっき出会ったばかりとのこと。一人は北海道で教師をしているK君。もう一人は大学を休学して世界一周中のナントカ君。

結論から言うと、この偶然の出会いがこの旅を豊かなものにしてくれた

偶然の出会いが全てを変えることがある

その日の午後、K君と一緒にカイロ市内を見て回ることにした。遠い異国の地、やっぱり2人だと心強い。エジプト考古学博物館に向かうタクシーの車内で、僕たちは互いの人生についてあれやこれやと話す。札幌で教師をしているという彼は、休職して世界を放浪しているらしい。次はスペインに向かうとのこと。

「たまに何のために生きてるのかって考えるのさぁ。」

北海道の方言なのかはわからないが、彼の何とも優しく牧歌的な独特の話し方が印象に残っている。

俺は霊的な存在やスピリチュアルな何かを信じてはいない。ただ、遠く離れたエジプトの地で彼と出会えたことには何か意味を感じた。偶然でできている人生が、時たまその偶然に鮮やかな色を付ける。そんなことが時々ある。こんなに仲良くなったのに、もうたぶん彼とは死ぬまで会うことはないんだろうなぁ、と思うと不思議な気持ちだ。

遊戯王で見たやつじゃん

博物館からの帰りにハン・ハリーリ市場に立ち寄る。今回の旅で一番楽しかったところはここ。ガイドブックに載ってたから立ち寄ったけど、正直ここまでローカル感があるとは思わなかった。迷路みたいで楽しいし、ワクワクする。

人と街が生きている
ツッコんだら負けです
綺麗な顔しやがって…

エジプト滞在記(2・3日目)南の都市ルクソールへ

2日目は、カイロ空港から飛行機で南の都市ルクソールまで移動する。

これといったエピソードもないので、道中の詳細は割愛。

ルクソール空港からホテルへ

ルクソールのホテルに着いて玄関で時間を潰していると、裏口から知らないおばあさんが入ってきて従業員と話している。何やらご飯を振舞ってくれるらしいが、ちょっと色々心配なので、手料理をいただくのは遠慮しておきたい…。だが、半ば強引に食べさせられる流れとなった。

ぱくぱく。

…やばい。

食事をいただいてから部屋に戻ってしばらくすると、発汗と寒気が止まらなくなり、熱っぽくなってきた。お腹もめちゃくちゃ痛い。

その夜、あまりの高熱と腹痛で目が覚めた。これあれだ、完全に食中毒だ。調べてみたら、エジプトでは料理にナイル川を水源とした水道水をそのまま使うケースが現在でもあるらしい。これ、完全にナイルの恵み入ってますよね??

翌日目が覚めると泣くほど体調が悪い。人生で一番お腹が痛い。病院に行くと、脱水症状と熱中症の診断が出た。3日目もホテルで一日寝込むことに。

エジプト滞在記(4日目)ルクソール神殿

体調が良くなってきたので、4日目の午後はルクソール神殿に行くことにした。

天高くそびえ立つオベリスク

これ、写真だと伝わりにくいけど、実は普通にすぐ横にマクドナルドとかあるからね。このクラスの世界遺産が普通に街中にあるエジプトって、やっぱり深い歴史を持つ国なんだなぁと実感。

一体一体がちょっとしたロケットくらい大きい

普通に感動しました。そんな感じで4日目は終了。

エジプト滞在記(5日目)王家の谷

日程的にアブシンベル神殿を見に行くことが厳しくなったので、今回のエジプト旅はルクソールにある王家の谷で締めくくることにした。今回のエジプト旅、最大の波乱の幕開けである。

朝、Careemという配車アプリでタクシーを呼ぶ。運転手からメッセージが来る。

大丈夫か??

これまでエジプトで何回かタクシーを呼んだが、ドライバーは全員最低限の英語が話せた。ちょっと危ない匂いがするが、別のタクシーを呼ぶのも面倒なのでこの人にすることにした。

これが最悪の選択だった。

しばらくして、ドライバーと合流する。あご髭をたくわえた色黒の男だ。英語で話しかける。長い文章だと通じない。単語レベルまで区切って話して、なんとか伝わるか、というところ。しかも車内は爆音でアラビア語の音楽が流れており、何より感覚でわかる。

こいつ、めちゃくちゃ怪しい。

英語が話せないふりをして、騙そうとしているのかもしれない。

とりあえず、王家の谷に向かう。道中、ほとんどずっとドライバーの男がスマホをいじりながら前を見ずに時速90kmくらいで運転するわ、窓から横を見たら中学生くらいの明らかに免許持ってないノーヘルの男子が大型バイクに二人乗りして並走してくるわで、ヒヤヒヤした。

やっぱり彼にするんじゃなかった!

途中軍の検問所で武装した軍人に車を止められるし、標識は全部アラビア語だし、しかもホテルから思ったより遠いし、そのうえ渓谷地帯に入ってからは携帯も完全に圏外になったので、正直この時点で既に生きた心地がしなかった。まず、見たところ一人で来てるやつは俺以外にいない。全員ツアーの観光客だ。警備員も銃で武装しているし、かなり物々しい雰囲気。大丈夫かな。

何とか王家の谷に到着

王家の谷には文字通り、古代エジプトの新王国時代の王たちの墓が集中している。新王国時代は、今から3,000年以上も前の時代だ。

それにしても、暑い

地形の影響もあるのかわからないが、気温46度が体感50度くらいに感じる。日差しで肌が焦げそう。灼熱の炎天下。

敷地に入ってすぐのところにあるラムセス7世の墓に入ってみる。

ひんやりとしている。外の灼熱とは打って変わって、涼しい。そのうえ、静かだ。自分と、墓の入り口にいる墓守みたいなおっさん以外は誰もいない。静かだ。

ラムセス7世の墓。
ワニをぶら下げているらしい。

墓守のおじさんが勝手に案内を始める。英語がなまりすぎていてほとんど何を言っているのか理解できない。

「座って良い?」
「いいよ。」

その場に座って目を閉じる。音がしない。無音。静寂。こんなに音がしない場所が地球上にあるのか。

目を閉じた暗闇の中で、悠久の記憶に想いを馳せる。「明鏡止水の心」っていうカードが遊戯王にあったなぁ、なんて思いながら、深呼吸をする。それってちょうどこんな感じなのかな。

王家の谷、すごい。エジプトといえばピラミッドっていうイメージだったけど、もう完全に自分の中での感動はそれを超えている。

本当に来てよかった。

次に、王家の谷で最も長いラムセス3世の墓に向かう。到着する頃には道中の疲労でクタクタになっていた。

ラムセス3世の墓

墓の最深部であまりの疲労に立っていられなくなった俺は、ヘナヘナと力なくその場に座り込んだ。そして、前を見た。

ここに来てから壁画は何回も見た。でも、なぜかこの壁画は他とは全く違う特別なものに感じられた。目が釘付けになった。

何千年も前に、自分が今いる場所と同じ所に人がいて、これを描いたのか。歴史が過去から現在まで、繋がっている。

なぜか大粒の涙が目から溢れ出してきて、頬を伝った。それと同時に、日焼け止めと汗が混ざった液体が目に入って、その涙に痛みを添えた。それがこの時間を忘れられないものにした。ここまでたどり着いた達成感と、安心感と、感動と何もかもが混ざり合った感情で、その場から動けなくなった。

これがエジプトか。

帰り道、ドライバーは俺を近くの土産物屋に連れていった。建物の陰から数人のエジプト人の男たちが出てきて車を取り囲まれた時は、かなり命の危険を感じた。土産物屋に軟禁され、俺はぼったくりの壁画を買わされた。

そして、ホテルに到着する直前、ドライバーから入ってもいない高額なツアーの代金の支払いを要求された。さすがにこっちを舐めるなよ、とすごい剣幕で怒ったが、そこに彼の仲間の身長2mくらいある巨漢のエジプト人が登場。逃げ込んだケンタッキーの入り口を塞がれ、逃げ場がなくなる。

「おい兄ちゃん、金持ってないん?」
「いやー、あの、持ってないんですよ…。あはは…。日本円しかないんですよ…。(あ、やべ。日本円持ってるって言っちゃった。)」
「じゃ、カードでも良いから。俺らの事務所まで来たらカード読み込む機械あるから。早く車乗れや。」

やばい、ボコられる。

なんで多めに両替しとかなかったんだよ自分!!!!!なんて思いながら、30分以上二人と口論を続けた。

ただ、ここで疲労が限界に達した。もういいや。エジプトに疲れた。もう終わってるよこいつら。最低限の手切れ金を渡し、ホテルまで全速力で走った。

振り返りとこれから

ホテルに到着して、今日一日の出来事を振り返った。

もしかしたら、人生で一番中身の詰まった一日だったかもしれない。感動することもあったし、腹が立つこともあった。うん、怒りの感情の方が上回ってるな。でも、様々な経験や、それによって起こる感情の揺れ動き。これこそが俺が旅、そして人生に求めることだと自分に言い聞かせた。

総じて見てみれば、広い視野で見てみれば、経験することそれ自体が俺は好きなんだと思う。

今回のエジプト旅行では、自分の価値観がまたアップデートされた。ルクソールにいた馬車の客引きの子供。断られても断られても、とにかくしつこく次の客、次の客へと声をかけていく。無視されてもへこたれる様子は一切ない。まぁ、観光客目線で言うと迷惑極まりないと言えばそうなってしまうんだけど、その姿勢になぜか感動している自分がいたね。

世界は広いなぁ!!いつも自分を悩ませるこの世界には、巨大なピラミッドも、新王国時代の王の墓もあるんだな。

また何かに迷ったら、その時は俺はまた旅に出るよ。

皆さんも、一緒に壁を壊して楽しい人生にしていきましょう!こんなに長い文章をここまで読んでくれたあなた、読んでいただきありがとうございました!

人で行き交うギザ駅


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