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えっ!?冒険者でも入れる保険があるんですか!?

 保険はクソだ。
 もう一度言う、保険はクソだ。
 具体的には、俺が入っていたオーンソンマテリアルズ産業振興保険(冒険者向け)は真のクソだ。

「要救助者二名確認。遺体です」
「わかりました。資産を回収してください」
 地上と通信する魔道具で報告を済ませると俺たちは死体を身ぐるみ剥ぎ始めた。これが保険の末路、「救助を行った際、パーティメンバーの遺品および身柄はオーンソンマテリアルズに帰属する」という契約条項の結果だ。「身柄」ってのは要するに死体も回収しますって意味だ。
 保険加入者のパーティは全部で4名、他は別の所で死んだか死体を運ばれたか。死体が残らない死に方だとしても、面倒なことにその痕跡くらいは確認する必要がある。どのみち俺たち回収班――もとい救助隊の仕事だ。

 残りを探し始めて小一時間後、死体は見つかった。それも三体。いずれも損壊は少なく――いやそれはどうでもいい。少なくともこのうち一体は保険対象外、勝手に持ち帰れば問題になる。
「報告を――」
「馬鹿、まだやめろ。“余分”をどうするか決めてからだ」
 俺は顔を顰めた。隊長の腹はわかる。回収すると問題になるというのは、逆に言えば俺たちが私物化してしまえば問題にはならないということだ。報告すれば藪蛇だってありうる。
「どれが保険対象者なのか先に確認しましょう」とりあえずごまかした。
 死体はパッと見で年嵩の男、若い女、もっと若い男というラインナップだが、リストと突き合わせないことには判断がつかない。くそ、さっきの時点でちゃんと確認しておけばよかった。
「……こいつが“余分”だ」
 隊長が指差した死体は若い男。意図はすぐにわかった。首に金鎖が絡んでいる。俺たちでそれを持ち帰ろう、嵩張らないから。そういうことだ。
「せめて埋葬しませんか」
 できるだけ嫌味に聞こえないようにしたつもりだが、どうだったかはわからない。
 次の瞬間、その死体が飛び跳ねて隊長の首を切り落としたからだ。

【続く】

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