シャンディ・ガフとレッド・アイ

ライネル・ジンジャーは目の前に転がるサイモニオンの死体を眺めながらさて困ったぞと独りごちた。
話は三日前に遡る。ライネルはサイモニオンの不在の隙に彼の経営する酒屋に押し入り、現金と大量のビールをごっそり奪った。それを知ったサイモニオンはもちろん激怒したが、ライネルの仕業とは知る由もなく、誰かを疑おうにもその判断材料が足りなかった。
サイモニオンを殺したのはライネルではない。だが、殺人事件の被害者の店に三日前に入った強盗を関連付けない馬鹿はいない。関連が無いと見抜く賢者はもっといない。
パッと見てわかる外傷は死体には無い。流血も無い。隠せそうもないほど露骨な殺人の痕跡は、辺りには無い。
殺人よりは失踪のほうがまだ時間が稼げるだろう。ライネルはそう考えた。死因や誰が殺したかなどは考えもしなかった。
そして幼いピーター・クレセントが物陰からそれを見ていることにも、まだ気づいてはいなかった。
【続く】

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