夢見る少女の魔法
精神を灼くサイオンの残響が通過してからもオレの頭痛は止まなかった。だがその痛みにオレは感謝すら覚えていた。まだ意識があるというその事実に。
ステッキを握りしめて、若干狭くなった視野の中央を睨みつける。まだ折れるわけにはいかない。
頭痛が引けば吐き気が来る、その経験的事実を学習した肉体は勝手に先読みしてえずこうとし始めていたがそれは無理矢理噛み殺し、限界ギリギリの集中力を引っ張り出して視界を巡らせる。研究所の中央管制室は死屍累々の光景でさらに胸が悪くなるが、立ち上がってきそうな奴はいない。正直助かった。
できるだけ死体を避けて奥のコンソールにたどり着き、死体を蹴飛ばしてメモリーステッキを挿入する。事前に調べたパスコードもクリア。
魔法少女の真実がそこにあった。
思春期前の少女を媒体にして抽出されるサイオン・エネルギー。それによって多くの資源・技術問題が解決され、「魔法」と呼ばれるに至った。当初はそれぞれの少女に影響が出ない程度の処置で済んでいたが、その存在が社会にとって不可欠になり、それに伴う事業拡大に伴い――露見しづらい難民や市民登録のない少女を「魔法少女」として活用し、その生命が尽きるまでサイオンを搾り取る所業に手を出し始めた。
眠り姫と化したオレの妹もその一人、というわけだ。魔法少女と化したあいつのサイオンでオレは戦う。いずれこいつらに報いを受けさせる。そして――
姉ちゃんが、必ず助けてやるからな。
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