墾田永年私財法vsフロンティアスピリッツ
「ここはわしの田だ…わしの…!」
泥まみれの鋤を握りしめ、血走った目で翁は唸り声をあげた。外からは遠い炸裂音が聞こえる。鬼どもの使う「がん」だ。俺も鉞を手に取った。これまでにこいつで仕留めた鬼は五体。
朝廷が開墾地を私有と定めて十五年。その間に異世界へ通じる「穴」が発見され、大量の農民が土地を求めて流入した。だが開墾を進めるうちに赤い肌と毛を持つ鬼どもと遭遇し、土地を巡って争いが始まった。彼らは火を吹く鉄の筒「がん」を持ち、そこから飛ばす玉で俺たちを殺した。言葉は通じず、「まにへすとですてにい」だのなんだのと言って開拓を押し進めてくる。
「いいかげんこいつにも鬼じゃなくて木を切り倒させてえよ」思わずそんなぼやきが漏れた。
「そのためにも殺せ!殺すんじゃ!」狂ったように叫ぶ翁は先年に孫を殺されている。
ひときわ大きな炸裂音が響き、俺も意識を切り替える。また今回も殺してやる。奴らが退くまで、何度でも。
【続く】
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