【書評】最も集中できる環境、方法を設計するー「深い集中」①
この本は、現在Think labを経営している井上一鷹氏が同社により開発された、人の集中度合いを計測するJINS MEMEを活用し、1万人以上を対象に行った研究を通して明らかになった人の集中力に関して説明した本です。著者は何年間も人の集中とパフォーマンスに関しての研究をしており、いわば集中のプロフェッショナルです。定性的な要素として捉えられがちな「集中」という状態を細分化して定量的に解説しているので、非常に読みやすいです。
この本のメインテーマは「テレワーク」。自宅環境を正しく設計し、仕事場よりも高い集中力を得るメソッドや理論に関して述べられています。現在在宅勤務をしている方々には超お勧めしたい本です。
基本理論
まずはいろんなメソッドを学ぶ前に必要な前提知識に関して説明します。
そもそも在宅ワークのほうがポテンシャルが高い
研究結果によると、集中率(作業時間に対して集中できたと感じた時間の割合)がオフィスでは平均50%なのに対し、在宅勤務者で悪い環境で働いている人が45%~55%、良い環境で働いている人は65%~85%に分布していることが明らかになりました。つまり、環境設計次第で在宅はオフィスワークを凌駕し得るということ。この集中率はJINS MEMEという集中力を測定する機械を基に計測されているため、信頼性の高い結果となっています。
集中を3フェーズで分解
まずは一般に言われている「集中」という概念を3つの要素へ細分化して考えてみましょう。集中力は「立ち上げ(集中状態に入るまでのリードタイム)、深さ(集中時の集中力)、持続力(集中が持続する時間)」の3つにわけることができます。それぞれの要素ごとに違ったアプローチが存在し、後ほどそれを詳しく解説していきます。
3つの脳の状態
人は何か作業をするとき、脳は3つの状態を推移していることが最近の研究で明らかになりました。
・デフォルトモード・ネットワーク(直観の脳)
・セントラルエグゼクティブ・ネットワーク(理性の脳)
・サリエンス・ネットワーク(大局観の脳)
の3つです。最後の大局観の脳は、2つの脳の状態を客観視している脳のことで、エンジニアリングで例えると、直観の脳と理性の脳というアプリケーションを大局観の脳というOSで管理・切り替えを行っているといったイメージです。以下紙とペンで図示しました。
仕事時は主に理性の脳が優勢になっておりますが、クリエイティブな思考をする際(アイデア出し等)は直観の脳も動かすことが必要となります。
時間の用途の分割
一般的に、時間の使い方は「ワーク・プライベート」2つに分けて考えられますが、本書ではもう少し詳細に分割して、「ワーク・セルフ・リレーション」の3つに分割して考えています。ワークは仕事、セルフは自分1人の時間、リレーションは家族や友人とすごす時間として考えます。
この3つの時間を意図的に切り分けてスケジューリングすることで、逐一目的意識を強く持って集中することができます。
昨今の在宅勤務の課題は「ワーク」が「セルフ」と「リレーション」に侵食してきてしまっていることで、以降の章で、各用途ごとに時間や空間を適切に設計する方法を解説していきます。また、ワーカホリックの人はセルフがワークと一体化しており、リレーションに職場の人がグイグイ食い込んでいることになります。
※これは1つのことをとことん生活の中心に置けることは素晴らしいことなので、別に悪いことではないと思います。
学びが多すぎて、1つにまとめるととんでもない量になってしまうので、前後編に分けることにしました。
次回のハイライトだけ書いておきます。
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・仕事場では寒色系の照明を使い、リラックスするスペースでは暖色系の照明を使う
・単純作業を処理する時間を設計して、マルチタスクや作業の妨害を防ぐ
・仕事への入り口と出口を定義する(仕事着を決め、時計を右手に着けかえる)
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所感(ここまで)
集中率が高まるのは在宅環境のほうというデータには驚きました。ただこれは単身の環境をしっかりと設計した人に限った話で、現状は大方の人はオフィスでの作業のほうが集中できるのではと思っています。また、このデータ、どのように被験者を抽出したのかがわからないのです。在宅ワークが性に合っていて、友好的に考えている人ほどThink labの研究に興味を持っているために数値が良くなったなんて事象もありえなくはないと思います。
なので完全に鵜呑みにはせず、完全在宅ワーク化を目指すわけではなく、現状の環境で最大限のパフォーマンスを発揮するためのハウツー本という位置付けで読んでいました。具体的なメソッドはしっかりと科学的根拠に基づいているので、かなり参考になります。
後編は来週末くらいには仕上げます👍