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恋と退屈、愛と憂鬱

今日は 


なんでもない一日が終わった。
局所麻酔の手術、3年目としてのぎこちない手際で懸命に、上司の2倍の時間をかけながら完遂した。なんてちっぽけなんだろうと思った。
終わってからは仕事をこなして時間が空いて、気づけば1時間くらい机に突っ伏して寝ていた。週末のスライド何も確認してないや。

世界はきっと狂っている

この年齢になるまで、僕が思う理想の人生を歩んできた。小中高と体育会系の部活に打ち込んだ、高校生は学年一位で勉学・部活・彼女もちゃんといて、僕は完璧だと思った。ストレートで医学部に入ることができた、塾にも通わなかった。そのまま研修医も休むことなく修了した、そのタイミングで結婚した。
なんて順風満帆な人生なんだろう、表面ではそんなふうに思いながら、心の奥底で「これは誰の人生だ?」と自問自答している。
峯田和伸の「恋と退屈」を読んでいた。元GOING STEADY, 元銀杏BOYZの僕が高校生の時から憧れる人物の一人だ。
僕は人間味の溢れるどうしようもない行動やそれを体現した生き方をする人が好きだ。この本ではただでさえ、ステージ上であるがままをさらしている彼の、より素の一面が描かれていた。
禁欲ができなかったり、レストランのメニューをかっぱらったり、「普通」でありながら、「普通」じゃない生き方。
この人も同じ人間なんだなと思った。
順風満帆な人生を歩みながら、夜の帰り道で「ちくしょー!」と叫びながら石ころを蹴る、小さな頃は自分という存在が嫌いすぎて写真をずたずたに引き裂いていた。自分自身を殴ってたんこぶができたこともあった。小学校の友達に「悲壮感が漂っている」といって、不登校にさせたこともあった。
狂っているのは自分だけじゃないんだ、きっと。

同じように感じている人はどれだけいるんだろう。
銀杏BOYZの音楽を聴いて、「どうして僕いつもひとりなんだろう」という言葉に救われている人はどれだけいるんだろう。
この曲のMVで、意味なく通行人をぶん殴る宇野祥平さんを見て、僕の今にもはみ出しそうな狂気性を代弁してくれている、ありがとう、と思った人はどれほどいるだろう。
「佳代」を聴きながら、昔の恋人がみせる何気ない日常に感じた幸せに対する笑顔を、この世で最も美しいものだと感じた人はどれだけいるのだろう。

きっと僕はひとりじゃない。

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