コンビニ店員、デスネとデスマッチ
<はじめに>
僕の実家のすぐそばに、ローソンがある。
渡米する前はもちろんのこと、渡米後の一時帰国の際も、実家に帰ればほぼ毎日行くといっていいコンビニだ。
今回のお話は、そんなローソンで繰り広げられた、勇敢な戦士2人の激闘をお届けする。
<ローソンの店員、デスネさん>
このローソンには、「デスネ」という名の店員が居る。
これは、のちほど僕が彼につけることとなる、あだ名だ。
前回日本へ一時帰国した3週間の間、よく見かけた店員さんで、おそらく大学生であろう20歳前後の日本人の若者である。
当初はデスネの存在など気にも留めていなかったが、日を追うごとに彼に違和感を覚えていった。
この店員さん、何かがおかしい。
デスネ「ジュースが一点ですね~、アイスが一点ですね~、お弁当が一点、合計三点でお会計764円ですね~」
僕「.........…」
デスネ「こちらのお弁当は、あた...…た...…め...…」
僕「あ、お願いします」
デスネ「ですねっ」
デスネ「それでは1000円のお預かりで236円のお返しですね~」
僕「.........…」
デスネ「ありがとうございました~」
いや、「ですね」多くね!!???
気のせいかな.........…また明日意識して聞いてみよう。
【翌日】
デスネ「おにぎりが一点とアイスが一点で、合計364円ですね~」
僕「.........…」
デスネ「アイスにスプーンは、お....…つ...…け...…」
僕「お願いします」
デスネ「ですねっ」
デスネ「それでは136円のお返しですね~、ありがとうございました~」
いやだから、「ですね」多くね!!!???
僕の違和感は、確信に変わった。
デスネの「ですね」は明らかに度を越えている。
でももちろん、それは注意するほどの事でもなければ、僕が注意する立場にあるわけでもない。
そして考え抜いた結果、僕はある決断をする。
デスネに、闘いを挑む。
<正義の味方>
闘いを挑むといっても、相手はかなりの強敵だ。
というか、それ以前にそもそもそんな事する必要がマジでない。
様々な葛藤と戦った。
それでも僕が下した決断は、やっぱり逃げないという事、闘うという事だった。
では、どのようにして、闘うのか。
僕も、デスネと同等の戦闘力を兼ね備えた、勇敢な戦士でなければいけない。
.........…
.........…
思いついた、これだ!
正義の味方、マスネが誕生した瞬間だった。
<デスネとマスネのデスマッチ>
心地よい緊張感のもと、僕はローソンに立ち寄った。
レジに目を向ける。
デスネが居た。
今日も普段と変わりなく、デスネは「ですね」をまき散らす。
会計を終えたお客という名の被害者が、続々と店をあとにする。
デスネの野郎...…
これ以上、自由にはさせないぞ。
この星は、僕が守る。
僕は、目当ての商品を両手に抱え、レジに並んだ。
ゆっくりと、静かに僕の番が近づいてくる。
もう一度、頭の中でシュミレーションをする。
いける、いけるぞ。
僕は、闘うんだ。
汗ばんだこぶしをギュッと握りしめ.........…
正義の味方、マスネの出陣だ!
<試合開始>
デスネ「いらっしゃいませー、こんばんわー」
マスネ「すいません、ちょっとここに携帯置きますね~」
デスネ「.........…」
(攻撃は、最大の防御。マスネが主導権を握った)
デスネ「ジュースが一点ですね~、おにぎりが一点ですね~、アイスが一点で合計514円ですね~」
マスネ「ちょうど出しますね~ちょっと待っててください」
デスネ「.........…ちょうどのお預かりですね~」
デスネ「アイスにスプーンは、お....…つ...…け...…」
きた。作戦通りだ。
ここでマスネが「お願いしますね」と言ってしまうと、必ずデスネは「ですねっ」と返す。
ここでマスネは、大勝負に出る。
デスネをマスネの世界に、引きずり込む!
デスネ「アイスにスプーンは、お....…つ...…け...…」
マスネ「任せますね」
.........…
(さぁ、こい。勝負だ!)
デスネ「........…それではおつけしときますね~」
デスネ「ありがとうございました~」
........…
........…
マスネとデスネの間に一瞬の沈黙が包む。
マスネはその場を立ち去ろうとする。
周囲の人は、たった今この星の存亡をかけた熾烈な闘いが行われていたことなど、気づいていない。
マスネとデスネだけが知っている、2人だけの闘い。
デスネは最後に、「スプーンをつけますね」と言った。
さぁ、帰ろう。もう、争いは終わった。
最後に、ほんの一瞬デスネと目が合った。
いい勝負だったよ、デスネ。もし生まれ変わることがあるなら、今度は友として会えたらいいな。
あの、約束の、木の下で。
マスネ、完勝!!!!
<闘いを終えて>
デスネの「ですね」を食い止め、最終的に「ますね」の世界に引き込むことに成功した僕は、闘いを終えたボロボロの身体を引きずって、帰路についた。
僕は来年、2、3週間をめどに一時帰国を考えている。
デスネはまだ、ローソンに居るのだろうか........…
もし居るのであれば........…
........…
僕は今から、次なる闘いに備えた方がいいのかもしれない。
この星は、僕が守りますね。
最後までご一読、ありがとうございました。
<まつむら note さんへのお礼>
先日、相互フォローさせていただいている、まつむら note さんが紹介記事を書いてくださいました。
まつむらさんも、アメリカ人の旦那様と国際結婚されたアメリカ在住の noter さん。
何気ない日々の中から、アメリカと日本の違いを面白おかしく発信されています。
アメリカに関して興味をお持ちの方はもちろん、そうでない方も、きっと日米の違いを楽しく知る事ができるので、皆さんも是非のぞいてみてください。
まつむらさん、今後もお互い異文化をエンジョイしていきましょうね(^▽^)
紹介記事、ありがとうございました。
ばちょめん