掌編「庭を食べる」@爪毛の挑戦状
ここにも、ここにも。ほれ、ほれほれ。
ヒトサマの、お家のお庭に一粒のこいつをポイと投げ入れる。
翌週ようすを見に来てみれば、端っこ隅っこちらりと芽がでた。よぉし、イイゾ。その調子ダゾ!
また翌週に来てみれば、茂り広がりまるで孤島のような一群こんもりと。イイゾ、イイゾ。そのまま往クゾ。
そのまた翌週来てみれば、隣の可憐なお花を覆い、後ろの古柵這わんと正にぐおんぐおんと伸びてヰる。イイゾ、確かに、順調順調。
翌週ようすを覗いてみれば、ここは現か彼の庭か?一面みどりの絨毯に最早蟻にも動ける隙なし。
さっきから、頻りによだれを呑み込むがまだまだ出てきて追いつかない。よだれに溺れて死ぬのは御免。
イタダキマス。
ウマイ、ウマイ。
「ねえ見て!お庭がキレイだよ」
「ほんとだね。今年もまた来てくれたんだ」
「虫も居なくなるから助かるわね、ほんと」
ワタシはそう、庭をまるごと食べるイキモノ。
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まだまだこちらに、お世話になります!