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掌編「梱包されたうんこ」@爪毛の挑戦状

家のいちばん奥の座敷は、墨汁と新聞紙の匂いがした。

丁寧に緩衝材に包まれ段ボールに入ったそれを見る父さんの顔は、じつに感慨深げなものだった。

「よし、行っておいで」

声に出してそう言い、慈しむように抱え玄関へと向かう。
かなり大きいので、少しよろけた。

手伝おうか、と僕は言ったが大丈夫だと言われた。

父さんのこんな様子は見たことがなかった。
僕は目を離すことができずに、黙ってついていった。

「父さんにとって書はね、糞のようなものなんだ。出したいから出すし、たまにはじっくり見たりもするが、他人のものは見たくもないし、どうでもいい」

抱えた段ボールを玄関先にそっと置くと、父さんの顔から表情が消えていた。
しかし目は燃えている。

「次の糞をひり出す」

小さく力強くそう言って、奥の座敷へ戻っていった。

いったい、何を言っているのだろう。
会社を辞めてから暫く見ない間に、彼はどうしてしまったのだろう。


最近父さんは、書道コンクールとやらで度々入選しているらしかったが、まさか本当に「糞」って書いてんじゃないだろうな…


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