小説「むき出し」考察6 むき出しの哲学1(実存主義)
※※※この記事は、2021年10月31日に作成し、
小説「むき出し」考察【第一章】目次で
下書きの状態でリンク共有していた記事です※※※
まず初めにお伝えしておきます。私は哲学者でも心理学者でもありません。道徳の授業では毎回「この考え方はやめようね」の方に1人だけ手を挙げる子でしたし、大学や勉強会のディスカッションでも私の意見だけ「それの考え方はないわ」と鮮やかに瞬殺されてきました。
そんな斬られ役なエマが、哲学サーカスの素人なのに空中ブランコからナイフをぶん投げています。取りに行くも逃げるも刺さるもあなた次第。嘘を書いている可能性もあります。あたたかい目でどうぞ。
※以下ネタバレ注意!!!
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もう何周目か数えていないくらい読みまくった
兼近大樹先生の小説「むき出し」。
一番最初に一気読みした時の感想は、「これ哲学書やん!」でした。
「これ、主人公を使って人を育てる哲学書やん!こんな分かりやすく書けるなんて天才だぞ!世界のあらゆる偉人がやりたがってきた事だぞ!神だ!すげー!てかなんで兼近先生ここまで知ってるんだ!哲学を教えたことあるんですか?」と思いました。笑
◆「生きるための理由づくり、死ぬまでの暇つぶし」これはニーチェっぽい。人生に意味なんてない(ニヒリズム=虚無主義)、この世に絶対的な価値などない。
◆「教育って洗脳」これはロックの経験論っぽい。生まれたときは白紙で、すべては経験から生まれる。だからこそ、石山くんはおじいさんから学んだ「言うことを聞かない奴は暴力でねじ伏せる」が正義になった。
◆「無は無から生まれたとしか表せねぇ」これは般若心経の「物質は空(クウ)」っぽい。(現在調査中)
◆「個人と宇宙(そら)はつながっている」これは朱子学の理気二元論っぽい。(現在調査中)
☀️1/14追記 ◆「知らないということがどれだけの恐怖に繋がるのか、わかった気がする」これはソクラテスの無知の知っぽい。知らないと自覚し、謙虚に生きる方が良いという哲学。
なに言っちゃってんのこの人?と思ったそこのアナタ。ごめんなさい私もだいぶ早口でしゃべっています(笑) さて、ここからが本題です!!
私個人が初見から強く感じている「むき出しの哲学ランキングBest3」第一位の発表です!!!
一位から発表しちゃって大丈夫?w
(第二位と第三位はプロローグ編で)
✨第一位 もう自分の人生に言い訳しない✨
わたしもうまく説明できないけど、哲学の実存主義だったかな?「自分という実体は自分に与えられた運命の先にある」。つまり、自分の運命は自分で決める、的な。「周りの言動も今いる環境もすべて自分の匙加減でそうなっているから、周りのせいにせずにちゃんと責任持てよ。そしたら自分の人生を自由に生きれるよ」っていう、たぶん大人な皆さんなら、この思想に自然と気づいて「エイッ!」って大人になった瞬間、何度かあったんじゃないでしょうか?
なんでおればっかり※小1
この家に生まれた俺はかわいそう※小3
俺を閉じ込めたやつが悪い ※中1
これはまだ相手のせいにしています。
相手のせいにしてしまうのは求めているから。もちろん「愛」を。
相手に求める限りそこに自由はありません。
もっと細かくいいますと、小1で寂しさゆえにイライラし、でも寂しさが原因とはわからず「ママのバカ」と書く→小3で絶対的愛をくれていた母は絶対的に存在する実体ではないと分かり、愛を失う恐怖から大事にしようと思う→ゆえに寂しいと思うことは悪いことだから、注目を集めてすごいと喜ばれることで寂しさを解消する→注目を集める手段が尊敬を集めることにシフトする→尊敬されるに値する理想の自分と現実の自分のギャップゆえに俺を尊敬しない奴が憎く見える(特に学校の先生、俺をなめている)
そして中2の湿布事件。彼はちゃんと「授業を受けようと」教室に来ます。(ここがもう愛おしい💛←感性独特ですいませんw)そしてチャイムではなくて、途中で入るんですよ。なぜって?「寂しさを誰かに埋めてほしくて」。しかも彼は小6で一度成功体験してるんです。欲求が満たされた結果「遅刻は大正解」だと。でも今回はあっさり無視される。おや?成功法則が崩れます。
そこで第二の手段です。先生に気づいてほしくて湿布攻撃します。なぜって?思い出してください。彼の欲しいもののすべては小1の「ママのバカ」から始まっています。だから多部先生が怒りMAXでも本人はケロッとしてるんです。「寂しさを誰かに埋めてほしくて」ただふざけただけだから。出て行ってと言われてもそりゃあ出ていきませんよ。だって彼の寂しさはこんなもんじゃ解消されませんから。
そして先生が出て行って自分が求めた結果ではないと気づきます。独り言を放ってみたけど、誰も話さないし、動かない。これは石山くん相当きつかったと思いますよ。
そこへきて、押さえつけられ謝るシーン。悔しかったと思います。まだ中2の14歳の少年ですから。現に石山くんも「永遠に忘れない」と。あぁ、、、よくがんばったね、、、(;_;)
(※このシーンに関しては「考察 先生の優しさ」により詳しく書いてます)
そして、ここで成長したのは寂しいのを誰かのせいにしているそんな自分がダサいと薄々気づき始めたこと!(※中3)でもそしたら余計むなしい。うんうんわかるよー!!寂しさごと自分の責任にするってすっごく怖いんだよね。でも、そこを乗り越えたら一皮むける!圧倒的に自由で楽しい人生になる!だから一緒に耐えよう!頑張れ!!
16歳の夏、殴りたい衝動を必死で抑えた。そして、自分が守ろうとするその人の背景を思い、優しい行動に出るんです。おそらく、日常的にイジメられていたからなのかな。
そして、大親友の空くん(※考察「雨が降る」をお読みください) の助言で今までかかわってきた人々の背景を思い「かわいそうな僕を演じてた?」と気づかされます。キターーー!!ないものを恨むな、あるものを数えろ、の誕生です。だからその後、勇気をもって立ち去ります。自分にあるものを数えたからです。そして、正当化しないところも学習済みです。初めて自己の世界を踏みしめた瞬間です。うんうん、死にたくなりますよね!でも生きることから逃げない「選択」をしてくれてありがとう!!あなたはもう立派な男性です!!
いやーながながと語りましたが、これで自己の補助輪が外れ、無事大人になりました。そしてこのタイミングであの「吠えない」犬!なんてよくできた物語なんだ!! (この考察はコチラ「考察 吠えない」)
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物語は飛んで、留置場(ここの描写が急に文豪になっていて、「あぁ開花してるぅ♪」って目を細めて口をとがらして読んでいましたw)
今の自分を作った大事なモノ全部に想いを馳せ、全部受け止めていきます。
寂しさ、暴力、ルール、
過去の出来事と自分のその時の言動を思い出し、冷静に分析し、「俺が」ぶち壊したと受け入れます。
石山青年が自己の外側、自分を取り巻く世界に「責任」を持った瞬間です。
その証拠に、石山氏はこうも言います。「被害者だと思ったとき加害者になる」その通りです!←「むき出し哲学4〜被害者/加害者〜」(サルトルのアンガージュマン)
俺の思い出は真実ではないかもしれない。1秒前の思い出は不確かな記憶←「むき出し哲学2〜プロローグ編」(バークリーの人知原理論)
からの「視点を変えてみる」で実践⇒自己評価は「ムカつかない」。さすがメタ認知エキスパート!! ←「考察 うんこのくだりは超大事」
完成!ハイ覚醒!ロイヤルストレートフラーッシュ!!
ここからは石山氏は、己の世界の手綱を己で持ちます。自分の信念を己の道しるべとし、己の眼鏡に頼りきらず、どんな人にも背景があり、あらゆる物事の理由は自分で作ることができ、故にどんな人生もどんな結果もどんな環境もすべて自分の責任であるとの自覚を持つ。20日でここまでの悟りを開けているのは、よほど誰かと気持ちを通わせたかった、それぐらい寂しかった、自分でも気づかないほど、といったところでしょうか。
「ママのバカ」から始まった旅
許される為じゃなく、自分も楽しむ為の人生へ
よく言った!!!!!!(スタンディングオーベーション)
この本、哲学ぎっしりです。
(こんな簡素な考察のまま世に送り出して申し訳ない!精進します!そしていずれ書き直します!!)
🌞1/15の追記ひとりごと🌞
そして、この小説「むき出し」における石山くんの成長過程が、実存主義の創始者キルケゴールの「実存の三段階」をなぞっているので、それをいつか証明したい!!そして「むき出しは哲学書だ!心を育てる本だ!」とこれからも言い続けたい。そしたらこの本は、上から下までもっともっと幅広い層の架け橋になれる。まぁYouTubeひっくり返したらラジオなんだけどさ。
それに、哲学が普及している欧米にこそこの小説は合うんじゃないかとも思っている。児童書が合いそう。そしてこの哲学書兼小説が国際感覚とともに日本に逆輸入された時、我々の貧困問題は照らし出される。欧米諸国から指摘されたら日本の世論は動くと思う。