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HMV101×78rpmの邂逅 #6~サミュエル・ドゥッシュキン アルベニス『タンゴ』(1928年)~しょーたろーの500円SP盤 其の五
ヤフオク!にSPレコードを多く出品している「しょーたろー」と名乗る出品者から私が落札、しかもスタート価格500円、つまり入札1、競合なしで落札したSPレコードをHMV101に載せて演奏して行くシリーズ「しょーたろーの500円SP盤」。
今回もまたヴァイオリン小品もの(しょーたろーの出品には実にヴァイオリンのSPが多い)。
曲はスペインの作曲家、イサーク・アルベニス(Isaac Albéniz, 1860年5月29日 - 1909年5月18日)が作曲した全6曲からなるピアノ独奏のための組曲『エスパーニャ』Op.165のうちの第2曲『タンゴ ニ長調』。この組曲の中でも特に有名な作品で「アルベニスのタンゴ」の名前でも親しまれ、様々な楽器のための編曲も施されている。中でもピアノ伴奏つきでヴァイオリンによって演奏・録音される機会が多い。
一聴すれば「スペインそのもの」という分かり易さ、親しみを感じるメロディのため、スペインを連想させBGMとしてもよく使われる。
SPレコード期にも色々なヴァイオリニストが録音していて、あたらくしあにもパッと思いつくものでエミル・テルマーニ、イェリ・ダラーニの盤があった。
そこに新しく加わったのがサミュエル・ドゥッシュキン(Samuel Dushkin, 1891年12月13日 – 1976年6月24日)の10インチ盤。1928年2月21日、HMVの本拠、ミドルセセックス・ヘイズのBルームで録音。ピアノ伴奏はマックス・ピラニ。
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ドゥッシュキンはポーランド出身のユダヤ系アメリカ人で、カール・フレッシュとフリッツ・クライスラーにも学んでいる。
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音楽史上でドゥッシュキンの名前が最もフォーカスされるのは、ストラヴィンスキーが『ヴァイオリン協奏曲 ニ調』を作曲する際にドゥッシュキンにアドヴァイスを求めた、という事実だろう。
ドゥッシュキンは密接にそれに協力し、この曲のアメリカ初演のソリストともなった。
またストラヴィンスキーはピアニストとしてドゥッシュキンと演奏旅行に出掛けることもあり、そこで演奏できるよう『ヴァイオリンとピアノのための《協奏的二重奏曲》を作曲。また、ヴァイオリン演奏用に『プルチネルラ』をもとに《イタリア組曲》を、『妖精の接吻』をもとに『ディヴェルティメント』を編曲したり、自作をヴァイオリン曲を編曲する際にもドゥシュキンが手を貸したという。
そんなドゥッシュキンの『タンゴ』。朗々と歌いながら情に流され過ぎず、堂々とした正攻法で聴かせる。日差しが眩しいスペインの風の匂いを感じさせる健康的なアルベニスだ。