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78rpmはともだち #2 ~レコードの価格と物価の変遷~

前回はLPレコード誕生前の音楽鑑賞メディアである音盤、78rpmの簡単な歴史、特徴などをお話した。
YouTubeまでご覧いただいた方で、初めて78rpmの音を身近に体験した、という方がいらっしゃったら、そのノイズの多さに当惑されただろう。
1982年にCDが製品化されて以来、それまで音楽鑑賞には付き物だった「ノイズ」からリスナーは解放された。
それと較べて何たるノイズの量、大きさか・・・と。

音盤と月収の関係

そもそも音盤の値段は どんな時代変遷を辿ってきたのか?
価値はどれほどのものだったのか?
いくつかのデータを紐解いて検証してみた。

1930年・1950年・2015年の比較

音盤価格と月収(給与所得者平均年収の1/12)の比較。
まず、既にお伝えしたように78rpmは片面5分が収録可能時間だから、現在のCD(ポップスやロック)が10曲入りだとしたら、それと同量の音楽を聴くためには78rpmは5枚必要になる。
その上で比較。

1930年
月収平均:61円50銭/78rpm:1円30銭×5枚=6円50銭
月収に占める78rpmの割合:10.5%

1950年
月収平均:10,000円/78rpm:170円×5枚=850円/LP:2,300円
月収に占める78rpmの割合:8.5%
月収に占めるLPの割合:23%

2015年
月収平均:350,000円/CD:3,000円
月収に占めるCDの割合:0.9%

単純計算で言えば1930年の音盤の価値は、現代の10倍
1948年の発売から2年が経過したLPの価値は、現代の26倍
いずれにしても、家計を左右させるのには十分過ぎる価格だ。

「技術の進歩」と「音盤の需要増」により、音盤の価格は低値安定した、と言っていいだろう。

だから「真剣勝負」、そして「尊い」

そんなわけで78rpm1枚を録音、制作するのは、現代と比較したら「一大事」だったはず。
「貴重品」を制作するのだから、売れる見込みと、録音する曲や演奏者の選定、そしてコストについては慎重に検討されたはずだ。
現代のように宅録で簡単にレコーディングして、誰でもが簡単に流通できるものではなかった。
「昔と較べたら、現代は『1曲1枚に賭ける思い』が熱くない」と断言するわけではない。
しかし78rpmやLP初期の時代、作る方、演奏する方も、買って聴く方も「真剣勝負」になって当然だろう。
だから、その演奏、音盤は「尊い」と思うのは、可笑しいだろうか?

本当は「78rpmを聴くお作法」まで記していこうと思ったが、長くなりそうなので今日はここまで。
「78rpmの価値」のお話でした。

今日の【ターンテーブル動画】

では今回も78rpmの【ターンテーブル動画】をひとつ。
今回もバッハ。
バッハの最高傑作、いや「人類が作り上げた至高の音楽」である『マタイ受難曲』から、有名なアリア『憐れみたまえ わが神よ』。
歌うのは不世出、20世紀最高のソプラノ歌手、キルステン・フラグスタート。
まさに1950年に録音された78rpm末期の音盤。


では、次回こそ「78rpmを聴くお作法」を。

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