決断。
黒田がカープに帰ってくる。そのニュース速報をスマホで知った時、ドラゴンズファンの僕ですらひっくり返った。
まだバリバリのメジャーリーガーやぞと。名門ヤンキースの先発ローテーの一翼を担う、あの黒田博樹やぞと。
それに加えヤンキース単年20億円のオファーを蹴り、カープが提示した精一杯の4億を選んだ。
理由はもう一度カープで野球がやりたい。そして優勝したい。彼を心地良く送り出してくれたファンへの想い。チームへの愛着。
野球のメッカ。アメリカ、日本。デビューして以来その右肩に重積を担ってきた。彼の心象風景が揺れる。蜃気楼のように立ち昇るその男気に誰もが惚れた。
実際彼はカープに戻り地元に錦を飾る。広島は暗黒期を経て、常勝軍団へと変貌を遂げる。
広島では黒田博樹からは飲食代は一切とれないとファンに言わしめるほどの男気エピソード。
自分だったらその選択はできたであろうか。彼は言った
決めて、断つ。
決めて、断つのだ。
決断したのだ。退路を断ったのだ。そうなったら人は前にしか進めない。後退するその全てをかなぐり捨てたのだから。
自分に置き換えてみてはどうだろう。決断と呼べるほどの選択を人生でした事があったのだろうか。
今回入院するにあたって今後3つの選択肢のひとつを選ばなくてはいけなかった。
⚫︎自宅療養
⚫︎療養施設
⚫︎転院
先週家族と共に面談を終えた後、自分は家に帰る以外の選択肢はイヤだとごねた。この期に及んで。この切迫した事態にも関わらず。
バカは死んでも治らない。拗ねていたのだ。家族も彼女も自分への配慮から優しい言葉しかチョイスしなかった。そんなことにすら目が届いていなかった。
隣町にある療養施設に身を投じ、時折自宅に帰りつつというのがちょっと前の望んだイメージであった。
数日療養すると徐々に自分ができること、できないことの境界線が浮き彫りになってくる。
ひとりで自宅療養するのは誰がどう考えても安全とは言えなかった。家族も彼女も転院を薦めて当然だ。逆の立場でもそう進言するだろう。
面会で自分に配慮し、転院がベターなんじゃないのとやさしくアドバイスしてくれる彼女を困らせてはいけないとその時強く思った。己の弱さを強く恥じた。
妹夫妻にも気苦労を掛けている。現状、自由が奪われることに何を躊躇することがあるのか。
拗ねている場合ではない。お前は退路を断つのだ。自分が選択するのは決して栄光のマウンドではない。単なる夜への船出かもしれない。それでいい。
決めて、断つ。
決めて、断つんだ。
あんまり連呼すると段下のおっつぁんで脳内変換されちまう。そうだった。金竜飛戦の矢吹みたいに。あの日の黒田博樹みたいにいかねぇとな。