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好きな音楽〜「エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して「ちゅうおん」2020」〜
エビ中のことを書くのはもう少しインターバルをあけて、と思っていましたが、新しいアルバムが届いたら書きたくなってしまいました。
今回は「ちゅうおん」について、です。
それにしても、アイドルというのは日々何かしらの発信をしていかないといけないので、大変ですね。私が好きだった洋楽のアーティストたちは、アルバムは数年に一度、ライブだっていつ日本に来るかわからない感じだったし、なんなら、ビートルズなんかは解散してたので新たな情報はほとんどありませんでした。なので、こんなにも情報があるのはありがたいなと思います。でも、もう少しひとつひとつのことについて余韻を大切にしたい気もします。
さて、「ちゅうおん」です。
このライブの動画を見て思ったのは、”unplugged”に似ているということ。
"unplugged"は、90年代からMTVで放映されたライブ番組で、ロックスターがエレキの「プラグを抜いて」、アコースティックで演奏をするものです。ロッド・スチュワートのときのタイトルが”unplugged...and seated”というように、普段は動き回るスターがずっと椅子に座って歌い演奏することがとても新鮮でした。今やライブの中にアコースティックコーナーがあることは当たり前になりましたが、当時はびっくりしたものです。
動きたくて動ききれないロッド・スチュワートがいいですね。ギターはローリングストーンズのロン・ウッド。
さて”unplugged”になることによって、大きくアレンジをされる曲もありました。激しいロックがどのようにアレンジされるのか、ということが”unplugged”を見る楽しみでした。原曲通りが好きな方も多く、ライブでもそうやってみたいというのもわかるのですが、せっかくならその時だけのアレンジも聴きたいと思うタチなので、バリエーションをじっくりと聴き比べてみるのも楽しいものです。
おそらく最も有名であろうアレンジはエリック・クラプトンの”Layla”。サビに入る爆発ポイント”Layla!”というところのメロディーの音程を低くするという、全体の出来への自信がなければ出来ないアレンジであると思いますし、その時の演奏もまた緊張感があって素晴らしい。
オリジナルからするとだいぶアレンジが入ってますが、まだロック。バックにエルトン・ジョンとか、マーク・ノップラーとか。フィル・コリンズがいるスーパーバンドでの演奏!
こっちが”unplugged”のもの。ジャジーと言うべきか。最初、観客がなんの曲か気づかず、歌が始まってから盛り上がる感じが、醍醐味かもしれません。
さてようやく本題です。「ちゅうおん」です。
普段のエビ中のライブとは趣を変え、生バンドをバックにしっとりと「歌」を楽しむ
ことがコンセプトで、普段のように踊ることはかなり少なく、Seatedであることも多いものです。バンドはアコースティックではないので、”unplugged”とは言えませんが、音源ではなく人の手による(manualである)という意味では”un-digital”あるいは”un-automatic”といったところでしょうか。
昨日届いたのは、今年の9月に行われた「ちゅうおん2020」のライブアルバムで、「ちゅうおん」自体は、2017年、2018年に続き3回目となるものです。それぞれライブCDがファンクラブの限定盤として出ていますが、私が見たことがあるのはアルバム「MUSiC」初回限定についている2018年のベストチョイス映像。これもとても良いのですが、今回の「ちゅうおん2020」もライブアルバムとしてめちゃくちゃ素晴らしいので、思ったことを一つ一つ書いていきたいと思います。ここまでだって十分に長いですが、ここからも長くなります!
1曲目の「風になりたい」。
映像がない中ではイントロがとても長く感じられます。コーラスが入りじっくりと雰囲気を醸成していく感じがします。歌が入ると視界がひらけるような広がりがあるんだろうなという期待を持って待っていると、小林さんの歌い出しで、予想よりも遥かに明るい世界が広がるところが心地よいです。ライブ全体への期待がさらに高まります。
それを受けての2曲目の「君のままで」。ものすごく好きな曲なので嬉しいですね。安本さんフィーチャー曲ですが、他のメンバーも競うように声を出してそれぞれのカッコ良さを表現していて、全体としての勢いに繋がっていると思います。ライブ映えする曲だと思います。
「君のままで」の疾走感をそのまま引き継いでの3曲目「自由へ道連れ」。スタジオ録音盤より多少リズムが早いかなと思いますが、ライブはこれがいいんですよね。「ちゅうおん」というよりは普段のライブのノリに近い気もしますが、コロナ禍の中での対面ライブということで、ライブの楽しさを冒頭で爆発させることを優先したのだと思います。もうですね、ここまでで十分に買ってよかったなーと思えます。
4曲目「SHAKE! SHAKE!」は、最初のヴァースからのカウント、そして小林さんの「わーたしこのままー」のスコーンと突き抜けた感じが最高に気持ちいいですね。昨年のローリングストーン誌のインタビューでもスコーンと言っているので、ここはスコーンであっているのだと思います。次のラップパート、バックのドラム、ベース、パーカッション、カッティングギターのタイトな演奏がライブを盛り上げていると思います。柏木さんのラップパートですが、アットジャムの時は勢いが出過ぎてオーバードライブがかかった感じになっていてそれはそれでよかったのですが、今回はバチッとハマっています。
5曲目「誘惑したいや」。今年の夏の「FAMIEN'20 e.p.」にも録音し直したバージョンが入っていたので、アルバム「中人」のオリジナル、中辛ver.、FAMIEN '18のライブバージョン、そして今回のものをGaragebandに突っ込んで、全部重ねて聴いてみたのです。右耳は20年再録音、左耳はオリジナル、といった感じで。色々な違いがあるのですが、いちばんの違いは、最初の歌詞では「ゆわくわくわくわくわくわくわー」のところ。オリジナルはリズムが平板で、いうなれば「ゆぅわぁくぅわぁくぅわぁくぅわぁくぅわぁくぅわあ」という感じですが、20年には「ゆわっくーわっくーわっくーわっくーわっくーわっくわー」と「わ」がスタッガード気味で「く」が裏拍な上にギリギリまで引っ張っている感じがする、ハネるリズムになっているのが面白いなと。すごい細かいリズムまでユニゾンできているところが素敵です。ちなみに、13年のファミえん版はオリジナルよりです。年頃感、っていうのが出てる感じですね。かわいらしいと思います。
6曲目「感情電車」は、どんどん前にいく勢いのある電車感が出てました。最初のうちは、水平方向への世界の広がりを感じさせた後、その世界のど真ん中をまっすぐに進んでいくような印象です。スネアが前進の原動力ですね。ゆったりと聴かせる、というよりはライブであることの楽しみが感じられるように思います。
7曲目「23回目のサマーナイト (ちゅうおん ver.)」
まさかのスローバージョン。通常のリズムだった他のライブだと歌詞が若干入りきらない印象なのですが、このリズムだと安心して歌詞を聴くことができます。特に、二人でユニゾンをする部分がバチっとハマっていて、何回か繰り返される、ひとり→ふたり→ひとり、となる歌割りにどんな意味が込められているのか、考えてしまいます。。。答えはありません。
8曲目「ノーダウト」。真山さんは、こういうマイナーのちょっとダークなテイストのロック/ポップスがよくあいますよね。山口百恵とか中森明菜とか、歌ってほしいなと思います。「プレイバック part 2」とか「飾りじゃないのよ涙は」とか。
これはバックがすごいやつです。
9曲目「タマシイレボリューション」。星名さんはこういうロックが似合いますね。2017年のちゅうおんで「歌舞伎町の女王」をカバーして巻き舌だったらしいとのことですが、そういった「ワル」な感じもいいですね。なのに最後の最後で全部アイドル化する、というか、星名美怜化するというか。
10曲目「Wonderland」。ライブアルバム収録版は、テレビ放映版とは違うのかな?ちょっと歌い方が違う気がします。いろいろな解釈でチャレンジをしているのかなと思います。テレビ放映版よりもグルーブ感が出ているような気がします。歌の中にリズムの要素を感じられるということで、音として聞こえているわけではないけど音楽として聴こえているものと思います。聴いている方はそのグルーブに身を任せたくなり体が動いていくのですよね。
11曲目「金木犀の夜」。オリジナルにかなり近い歌い方になっているように思います。この曲が持つエモーショナルな部分と安本さんのエモーションとがシンクロしたような、そんな気がします。
12曲目「糸」。曲がどうの、歌がどうの、というのを遥かに超越をしていて、小林さんが聴く人の目の前に浮かび上がらせた世界にどのように揺蕩うのかを求められているようです。
13曲目「愛のために」。ロックですね。カタカナじゃないですね。ROCK!ですね。全部大文字です。中山さんの特徴的な息遣いと、実は結構体全体で音を出している感じが一生懸命さに繋がっていると思います。先日のリアル頑張ってる途中neoでも「呼吸の仕方がわからない」といったようなことを言っていたので、なるほどと思いました。
ここまでのソロパート。それぞれの個性にマッチしたいい選曲で、心地よいですね。それに曲へのリスペクトが感じられるとてもよいパフォーマンスだと感じます。
14曲目「紅の詩」。ディスクの2枚目1曲目であり、ソロパート後の、後半を盛り上げる、ある意味仕切り直し。「君のままで」と同じように、しっかり声を出して勢いがあります。アガる曲、とはこういう曲を言うのだと思います。
「紅の詩」の勢いのまま15曲目「バタフライエフェクト」。歌メロと同じメロディを弾くギターがいいですね。途中からベースの存在感が出てきて、「信じてよー」の雰囲気が変わるところがいいですね。
16曲目「スターダストライト (ちゅうおん ver.)」。「ちゅうおん」ならではのとても素敵なアレンジ。18年の「朝顔」を彷彿とさせる全然違う曲感。こういうのが楽しいですよね。曲が元々持っているパワーが素晴らしいので、どんなアレンジもこなせてしまうのではないか、と思います。そして、ここまで削ぎ落とすとメロディの難しさがよくわかります。演者の力量が問われる曲だと思いますが、完全に歌いこなしていると思います。
17曲目「まっすぐ (ちゅうおん ver.)」。18年のちゅうおんでも取り上げられていて、実にちゅうおんっぽい曲なんだと思うのです。今回は1番がさらにバラード調になっていて、そのまま行くかと思ったら、柏木さんのサビでバンドが一回止まり歌だけがフィーチャーされる、そして、オリジナルに近いアレンジにもどっていく、そこが歌の世界観がひらけていく感じでよかったです。着席から立ち上がるシーンだったやに思います。
また、安本さんの落ちサビ「ありったけ愛を捧げよう」、18年のちゅうおんでは裏声でしたが今回は地声で。最後にちょっとがさついたので結構ノドに負担があったのかなと思うのですが、そこに込められた何か決意のようなものが強く感じられたように思います。今年の生誕祭での「ジャンプ」での「愛をこめて」と同じものであるように思いました。
なお、オリジナル録音盤も裏声ですが、16年の秋ツアーでは地声だった時もあるようなので、喉の調子もあるかもですが、どちらかというと込める気持ちの表現のバリエーションとして使い分けているのかなとも思いました。
18曲目「踊るロクデナシ」のイントロのギターは、ドゥービーブラザーズの”Long Train Running"が始まったのかと思ったのでした。
そういえばドゥービーズも毎年のようにメンバーチェンジを繰り返していたので、同じ曲に色々なバリエーションがあって、マニア的には楽しいバンドのひとつです。
19曲目「星の数え方 (ちゅうおん ver.)」。キックがいいですね。オリジナルよりも軽いテイストになってますが、リズムが遅くなっていることと演奏がシンプルになっていることで、歌の輪郭がかなりはっきりしているため、歌の難易度はかなり上がっていると思います。最後、演奏が止まって歌だけになったところで、一生懸命歌ってきたことを感じます。
20曲目「23回目のサマーナイト」。真山さんのタメ!あんなに引っ張るのは普通は不安で出来ないと思うのですが、やり切るところにカッコ良さがありますね。それだけ引っ張っていて、オン・リズムでもないのによく次のユニゾンに入れるなと思います。それに、そこでちょっと笑っちゃっている感じが、楽しそうで聴いているこちらも笑ってしまいます。
21曲目「ちがうの (ちゅうおん ver.) 」。これはまた随分違う曲になりました。今回、いちばん攻めたアレンジだと思いました。1番はピアノバラードかなと思っていると、2番からアコースティックギターでリズムが出てきて、複雑なコーラスが絡み、そこに静かに入ってくるホーンセクション。フリューゲルホルン?ストリングスも入ってきて楽器も増えて盛り上がるか、というところで、小林さんがギターとベースで歌い、弦がリズムを出してきて盛り上がってラップパートにつながる。非常に複雑ですが、難解には聴こえないところがいいですね。
22曲目「頑張ってる途中」。レキシが好きなので、嬉しい選曲。ブラスロックになってますね。とくに「まだまだいろいろ勉強中」のところ。
この曲とは全然違いますが、ブラスロックといえば、シカゴ。シカゴもメンバーチェンジをくりかえしながらずーっと続いているので、いろいろなバリエーションがあって楽しいバンドのひとつです。
書きすぎですね。
というわけで、ファミマ先行にも落選したのでした。わはは。