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私立恵比寿中学「私立恵比寿中学」

新しいアルバムが出て、いつものように感想を書いていきたいなと思ってずーっと聴いていて、noteもすこしずつ書いていたのですが、なぜか心に引っ掛かることがあって書き終えることができずにいました。

いや、とってもとってもいいアルバムなのです。これは正直、音楽好きは聴いておいて間違いがないアルバムなのではないか、と思っています。

先日、その引っ掛かりの正体がようやくわかったので、そこも書いていこうと思います。

このアルバム以降、あまりにいろいろなことがあって、そういったものを織り込んでいくことも考えたのですが、具体的な事象はぜーんぶ外して、自分が感じた”感触”を頼りに書いていきたいと思います。


通称ホワイトアルバム

初めて見たときにはこんな感想をtwitterに書いていました。

発売後もやっぱりこのジャケットが話題になることがあるように感じるので、一定の成果を上げているのではないか、と思います。

それに、音楽ナタリーの下記の記事でも横断歩道を渡る写真がありました。
臼杵さんの写真(インタビューはもちろんのこと)はいつも素敵ですが、これはさらに素敵だと思いました。

言わずもがなですが、これらですね。

それにしても、The Beatlesといえば東芝EMIだったのに、ユニバーサルのサイトにあるとびっくりしますね。時代は変わるということですね。

エビ中の”サイクル”

何度も何度もアルバムを通じて聴いてみての感覚でいちばんおおきなものは、”サイクル”というか”回っていく”というか、輪廻というには重いのだけれども、いろいろなものが回っていっている、ということでした。ただ、前とおなじものにもどるわけではない、ちょっと違った世界に進んでいくという、”サイクル”です。(意識の高いビジネスパーソンに言わせればスパイラルアップとかいうやつです)

最後に「イヤフォンライオット」があり1曲目に「Anytime, Anywhere」があるという構成しかり、砂時計(さかさまにするとまた始まる)しかり、「ハッピーエンドとそれから」の歌詞の中での時間の流れしかり。

Rebootで”サイクル”というと、こちらを思い出します。

The Doobie Brothersが再結成を果たした時のアルバムのタイトルが「Cycles」でした。このバンドは、長い活動期間で非常に多くのメンバーが入れ替わりそれぞれのタイミングで違うメンバーがバンドを牽引していったというちょっと変わったグループなのですが、エビ中に似た印象を持っています。こういうチームは、サイクルということをとても大事にするのかな、と思いました。

そうそう、久しぶりに「Cycles」を引っ張りだしてきて気づいたのですが、このアルバム10曲40分48秒でした。「私立恵比寿中学」が10曲41分なので近いなと。あんまり関係ないですね。

エビ中の多様性を表現している?

最初にアルバムを通して聴いたときには、非常にまとまりの良いアルバムだなと思ったのでした。ただ、メンバーの皆さんはエビ中の多様性を表したアルバムだと言っていました。

以前のようなコミカルな側面を持った曲がなくバラエティ性という観点ではそこまで「多様」ではないのではないか、と感じ、こんな感想を書きました。

このパッケージに入り切っていない、世界観からは外れた曲にもいいものがあるに違いないという確信があり、そういう曲が入って「多様」なのではないか、と思っていました。

そういった、バラエティ性を見せつけるものではない中で、あえてセルフタイトルを付けたことにどのような意味を持つのか、考え込んでしまったのでした。これがちょっと引っかかっていたことです。

メンバーそれぞれの多様な表現

何度も繰り返し聴いて気づいたことは、メンバーの皆さんが様々な表現方法を試していることでした。

今回、アルバムの持つエモーショナルさの表現は、小林さんと中山さんがずいぶんと担っていると感じています。

小林さんは、これまで培ってきたやさしさの表現をさらに深化させていることに加えて、儚さを感じさせる部分が多いように思いました。

中山さんは、これまでの力強さに加えて柔らかでスムーズなメロディー表現。「ハッピーエンドとそれから」の中山さんのパートは本当に美しいと思います。

「さよなら秘密基地」で一回おわったかと思った後の、柏木さんのミュージカルのような発声。柏木さんの歌声が入ることで、収まるところにビシッと収まる感じ。

「シュガーグレーズ」での安本さんは1曲の中で違う歌い方をされています。いや、このアルバム全体で、本当に幅広い表現をしています。自分がエビ中の進化を引っ張っていくんだ、という矜持を感じました。

様々な作家の多様な曲がエビ中として一本筋が通っているのは、真山さんの歌声によるものが大きいと感じています。やっぱり真山さんはエビ中の軸ですね。

より女性性を担っている感じがする星名さんの歌声。そこに姉性というか母性というか、そういったものを感じられました。「ナガレボシ」のなかで、柏木さんとはまた違うミュージカルっぽさがありました。

桜木さんの空気を多く含んだ声質は、グループ全体に新たな表現をもたらしました。張るのではなく優しさを表現する時、何とも言えない甘酸っぱさを感じます。

小久保さんは、いい意味での未成熟さ(immature)、つまり大きな成長の余地を感じさせてくれます。

そして、純真なまっすぐさを感じさせる風見さん。余地というよりは本当に余白といいましょうか、周りの大人の皆さんにじっくりしっかり成長させてもらってほしいと切に願います。

桜木さん、小久保さん、風見さんの現役感バリバリの青春が、「エビ中は終わらない青春である」ことの説得力を増しているように思います。

メンバーが自身の個性を深め磨いていく場所

先日、明け方の夢とうつつの間で何かにハッと気づいて、飛び起きてメモをした言葉がこの「メンバーが自身の個性を深め磨いていく場所」でした。

エビ中は、メンバーのひとりひとりが自分の個性を深め磨いていくチャレンジをしていく場所なんだ、という意味なのですが、学校なので、チャレンジというよりは「成長」のほうがしっくりきます。(意識の高いビジネスパーソンに言わせればストレッチとかいうやつです)

エビ中のメンバーは、転校したメンバーも含めてみんな自分の足で立って自分の人生を生きようとしているように感じます。それは、エビ中にかかわる大人の皆さんの愛情と努力によるものだと思っています。

今回のアルバムでは、メンバーひとりひとりが自分の個性を深め、そのテクニックを磨き、個人の中でも多様な表現を獲得するようになっています。
また、その結果、メンバーの個性が際立ち、9人のバラエティに富んだ表現に出会うことができるアルバムだと思っています。そうなのです。パッと見のバラエティ性よりも圧倒的に深い意味で多様性を獲得しているアルバムなのです。

エビ中がメンバーの成長の場であるとすれば、やっぱりこの瞬間は今しかないのだと思います。
たとえば、メンバーそれぞれが戦闘力的なポイントを持っていたとして、グループ総合でのポイントは足し算というよりは9人の掛け算だと思うのですが、1人がちょっとでも成長するとほか8人分の戦闘力ポイントが掛け算でかかってくるため、グループの総力はかなり大きく変動するのだと思いました。

そして、まだ若く可能性は無限大のメンバーの個性は、どちらに向かって成長していくかなんて本人にもわからないことだと思います。

だから。

グループが今後どこへ行くのかなんて誰にもわからないんだと思うのです。目標はあるようなないような。変わって当然なのではないでしょうか。

ファンは只々、常に個性を磨き成長をし続けるメンバー同士の化学反応を楽しみ、今のエビ中は今しかないので、その瞬間瞬間を見逃さないようにする。そういうことなんだと思いました。

実に儚いです。その儚さがたまらないのだと思います。

セルフタイトルというのは、得てしてこれまでの総決算的な、過去を固定するようなものになりがちだと思うのですが、このアルバムは全く違います。

当たり前のことではあるのですが、ファンは(そのグループにとっては過去のものとなる)作品を見てファンでいるわけで、ファンは過去を見ているのに対して、グループは将来を見ているという違いがあります。

もちろん、大御所ともなれば、過去の資産を活用するだけでずっと生きていけるわけで、そういう場合は、本人もファンも同じ志向であるともいえます。

エビ中は歴史が長くなったからこそ、過去の資産が大好きなファンも多いのだと思います。それは、それとして、さらなる変化・進化を選んでいく、というそういったメッセージがこのアルバムに込められているのではないか、と思いました。

そして、そういう変化を起こしていく場が「私立恵比寿中学」である、というセルフタイトル。

漸く腹落ちしました。


ここまでだって長いのに、ここから1曲ずつ書いていきますよ。どうかと思います。


Anytime, Anywhere

この曲は、ビートというか裏拍を感じられるイントロが本当に好きで、何度も何度も聴いてしまう上に、年末の大学芸会で目の前で聴けた多幸感が毎回蘇ってきます。


イエローライト

これまでのライブ版ではあまり気づいていませんでしたが、録音盤ではスネアの音が印象的です。同じたむらぱんさんの「ポップコーントーン」のスネアに似てる気がします。「ポップコーントーン」のほうがちょっとだけ明るい音色かなと思いますが、遠くから録音している感じと曲に勢いを与えるリズムを奏でるところが似ているかなと思いました。また、たくさんの仕掛けがあり、ライブ版のロッカバラード?な印象よりもかなり勢いを感じます。中間の「イエローライト」という歌詞の後ろで、ライブ版は若干ブレークしますが、そこでであまり止まらないこともその印象を強めているように思います。

「夜にも」の安本さんの歌い方が、たむらぱんさんにすごく似ていると感じました。

なお歌詞だけでこんなnoteも書いてました。


きゅるん

このアルバムはずいぶん高いほうに音域が広いなと思いますが、この曲もすごい高いですね。そのうえ張って発声しているわけではないので、とっても難しいですよね。

小林さんの「ころっとめぐるトキメキ」の一番高い音は、地声?ミックス?


ハッピーエンドとそれから

この曲は、実は最初あまりピンと来ていませんでした。ただ、いつの間にかずーっと頭の中を流れていて、実に中毒性があるなあと思っています。

桜木さんの空気成分の多い声が実にいいアクセントになっているなと感じます。それから、中山さんの歌い方にいろいろな表情が出てきていて、とっても素敵です。

このMV、画角がずっと4:3で、色味がTeal & Orangeっぽいのですが、ダンスのシーンで画角が16:9になり色味も変わるところがとても印象的です。
映画館で予告編は狭い幅で流していて本編が始まるときにカーテンがさらに開く、そんな感覚を受けました。

トキメキ的週末論

ポップで一番勢いがある曲が真ん中に。アニメの主題歌っぽさも感じます。

聴きどころはやっぱりメンバーのちょっとずつ違う巻き舌でしょうか。それぞれがどんなつもりなのかを想像すると、ちょっとおもしろいです。

間奏のチョッパーベース、絶対バンドでやってくれますよね?

シュガーグレーズ

この曲は、再生環境でずいぶん印象が違います。ハイレゾ音源を自分の持っている一番いいヘッドホンで聴いて様々な仕掛けに気づきました。これは大音量で聴きたいですね。

前半は無機質な感じで歌っているようでいて、メンバーそれぞれの無機質の解釈が出ていてとっても面白いなと思いました。

そして後半に入って少し感情が入ってくる感じの、その違いも面白いです。

さよなら秘密基地

ディズニーのミュージカル映画をみているような、とても不思議な感覚になります。

一回おわったかと思った後の、柏木さん。ミュージカル的な発声ですよね。本当に幅が広い。

このnoteを書いてから、たかだか1年半。底なしの進化、という感じがします。

そして、リズムが複雑!特に間奏の後の裏打ちのところで何度聴いても置いて行かれます。


ナガレボシ

1サビの安本さん、小林さんの伸びやかな歌声がとても気持ちよく、星名さんが優しく受け止める流れがとても良いです。

・・・この曲はですねえ。歌詞を真剣に聴いてしまうと泣けてくるので、真剣に聴けていないのですよ。いつ聴けるかな。

宇宙は砂時計

冒頭のエレピの音が好きです。冒頭の小林さんの歌い方は儚さの新境地を感じました。

「さよなら秘密基地」からの3曲は、ワンセットで聴きたいパッケージですね。それこそThe BeatlesのAbbey RoadのB面の流れに近い感覚を受けています。それぞれ独立した曲なのに共通する世界観がしっかりあって、ものすごく没入できる気がします。

イヤフォン・ライオット

前にこんなnoteを書いてました。

この曲を最後に置いたことで、もう一回まわり始めることを表現しているように思いました。つまり、次へつながる、次を開けていくことを宣言しているのだと感じたのでした。。

このDance Ver.を見ても、9人のフォーメーションの複雑さに関心します。それとともに、5人(6人)→9人で表現の幅がこんなに違うんだということに驚きました。


いろいろ書いてきましたが、基本は私自身の妄想ですから、ご容赦ください(圧)

そして。

なかなか多くの回に行くことはできませんが、春ツアーのチケットを1枚でも持っているとこんなにも心が強くなるんだ、ということを実感して毎日を過ごしています。


なお、ボーナストラックの2曲については、こちら。


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