中国マーケティング必須 ライブコマース徹底解説!
中国で15兆円規模と言われているライブコマース市場。中国ECでは多くのブランドがライブコマースを導入しており、その重要性は年々高まっています。今回の記事では、ライブコマースの基本から成功するために必要な要素、注意点などをまとめて紹介します。
ライブコマースの基本
ライブコマースとはライバーがライブ配信を通して商品を紹介し、質疑応答を行うことで販売していくマーケティング手法です。主に、「ブランドによるライブ」と「ライバーや芸能人によるライブ」という二つの形態があります。
●ブランドによるライブ(自社ライブ)
ブランド自身がプラットフォームを介して自社のアカウントでライブ配信をすることを指します。
●ライバーや芸能人によるライブ
ブランドがライバーや芸能人所属のMCN会社に連絡を取り、各対応プラットフォームでライブを実施します。
ライバーとは?
ライバーとは自分の影響力を使って、自分のフォロワーに対して、ライブ配信という形で物を売る人たちです。ライバーとして成功する要素には、ロイヤリティの高いフォロワー、適切な商品説明力、魅力的なライブ構成力が含まれています。
●No.1ライバー 薇婭(viya)
引用: https://www.sohu.com/
元々はアパレル個人店舗を運営しており、アパレルカテゴリで強みを持っています。彼女がTOP1のGMVを達成できる理由は主に以下の三つになります。
まず、彼女のメインフォロワー層である30ー35歳の女性の可処分所得は相対的に多く、GMVに大きく貢献しています。そして、所属しているMCNの創設者でもあるため、ビジネス上の自由度がかなりあります。最後に単なる販売だけではなく、商品デザインまでアドバイスをしており、Viyaだからという付加価値もあります。
ただし、Viyaには一つの懸念点があります。Viyaがライバーとしてデビューしてから、商品の品質問題、偽物問題などのニュースもよく報道されますので、この点については注意すべきです。
●No.2ライバー 李佳琦(Austin) リージャーチー
引用: https://www.sohu.com/
一般人にも認知されたライバーの第一人者です。ロレアルのスタッフとして働いたこともありますので、スキンケア/メイクカテゴリー(特に口紅)に強みを持っています。ちなみに、「30秒でもっとも多くの口紅を塗る」というギネス世界記録の所持者でもあります。
彼はストレートな言い方、「OMG」など共感されやすい言葉遣いなどの理由から非常に高い人気があります。また、2,930万のWeiboフォロワーと4,476万のDouyinフォロワーを持っており、ライブ以外の領域でも活躍しています。
ライブコマースのお金の仕組み
●決算方式
ライバーは主に「頭金(アサインフィー)+コミッション」で利益が得られる形になっています。
頭金(アサインフィー):ライバーに紹介してもらうために発生する初期費用のことです。ライバーの影響力、得意なカテゴリー、実施タイミングによって決まります。基本的にブランドよりもトップライバーな方が優位なため、ブランドに対する交渉力が強いです。また、W11や618などのセール期間でのライブはセール販売額に直接つながりますので、頭金も平常時より高いです。一部のライバーの頭金はROI保証型になっており、契約時に指定されたROIを達成できなければ頭金を支払わなくても良い形もあります。
コミッション:CPS(cost per sales)形式がメインで、販売額によってコミッションが決められます。20%〜30%のコミッションが一般的で、販売額の一部がライバーに入ります。ライバーにとっては売れれば売れるほど、利益がもらえますので、ライバーのモチベーションアップに繋がる重要な仕組みです。
ライブコマースの問題点
●ライブコマースの成長率
2017〜19年、ライブコマースの市場増加率は毎年200%以上のペースで進んでいました。ただ急激な増加によってすでにライブコマース自体は中国で一般的なマーケティング手法として浸透しています。
物流やモバイル決済の普及によって、一級、二級都市から離れた地域の消費者もライブコマースでアプローチできるようになりましたが、やはり中国国内での経済格差は大きく、GMVの増加率はそれほど大きくないと予測されます。
そのため、これからは新規のトラフィック獲得ではなく、既存のトラフィックからいかに効率よくGMVを獲得していくことが重要です。
●返品率が高い
ライブコマースのもう一つの問題点は返品率が通常より高いことです。ライブコマースの平均返品率は30%〜50%であり、通常ECの10%〜15%より3倍も高いです。そのため、ライブコマースを展開するブランドにとって、GMVの高成長を狙うだけではなく、商品の品質管理にも注意を払うべきです。ライブコマースで一回購入した消費者をいかにキープし、どうやってリピーターになってもらかをしっかりと考えなければなりません。
ライブコマースのプラットフォームとそれぞれの特徴
タオバオライブが代表するEC発プラットフォーム、Douyinが代表するエンターテイメントコンテンツプラットフォーム、そして「蘑菇街」が代表する買い物コミュニティプラットフォームの三つの種類がメインになります。
ここでは、中国で代表的なプラットフォームを紹介します。
●タオバオ
タオバオライブは2016年から始まり、タオバオアプリとタオバオライブアプリ両方から入れる形になっています。中国初めてのライブコマースアプリとして、GMVがNo.1のプラットフォームです。
- 独自のEC背景
EC発プラットフォームとして、タオバオライブはSKU、サプライチェーンなどで、他プラットフォームより優れる競争力を持っています。近年タオバオライブで取り扱っているSKUは190%の伸び率で急成長しており、家電製品、自動車、食品、デジタル製品など多くのカテゴリーが含まれています。
- 消費志向のユーザー
タオバオライブユーザーの大半はECプラットフォームであるタオバオから来ていますので、消費志向が高いです。タオバオ=買い物と多数のユーザーに認知され、これもタオバオライブの高CVRにつながります。
- 高レベルの管理体制
ユーザーの利益を守るために、タオバオライブはプラットフォームが作られた時点からライブコマースに関するルールを明確にしました。さらに最近では社会的監査システムやAIによる監査体制を導入しています。
●Douyin
若者の中で人気であるDouyin(ご存知の通り、TikTokの中国版ですね)はコンテンツ+エンターテイメントプラットフォームとして、莫大なトラフィックを持っています。ライブコマースへの進出は、Douyinにとって非常に重要な試みとなります。
- トラフィック優位性
Douyinでは非常に大きなトラフィックがあり、DAU(Daily Active Users)は5.27億(2020年9月のデータ)にも達しています。これがDouyinの相対的に低い顧客獲得コストにつながり、他のプラットフォームと競争する時の優位となります。
- ライバーに依存する(コンテンツ重視)
タオバオライブと違い、Douyinはエンターテイメント性が強いため、単なる物を売るだけではなく、ライバーが商品をどこでどう使うかというシチュエーションを設定することが重要です。
- 低ユーザー価値
Douyinのアルゴリズムはprivate domainへのトラフィック獲得に向いていなく、ユーザーとライバーの感情的つながりは相対的に弱いです。そのため、DouyinライブのGMVは高いものの、ユーザー一人あたりの消費金額という「ユーザー価値」は低いです。
Weiboがライブコマースに参入した時期はタオバオやなどより遅いですが、非常に早い時期で成功を迎えたSNSプラットフォームとして、ライブコマースにおいての重要性はいうまでもありません。
- 有名人、芸能人リソースが豊富
Weiboでは大量な有名人や芸能人がアカウントを開設しており、作品の宣伝やファンとのコミュニケーションもWeiboを通じて行なっています。
Weiboは他プラットフォームとの差別化として、芸能人の影響力を用いてWeiboだからこそできるライブコマースを作っています。具体的にはライブ中に芸能人が商品を紹介しながら、番組撮影の話などをするように、芸能人が提供するエンターテイメント内容をライブコマースと融合します。
- ブランド宣伝に有効
WeiboライブのGMV、CVRは他プラットフォームと比べならないですけど、ブランドの宣伝効果は期待できます。それはなぜかと言うと、まずWeiboでのライバーが得意なのはコンテンツを作ることです。その能力をライブに運用すると、ブランド側が気づいていない切り口を探して、ユーザーに教えると言うよりも、ユーザーを教育する側面があります。
●RED
シーディングに強いREDですが、ライブコマースにはさほどの成果を出していません。
- より信憑性が高いイメージ
REDはリアルな口コミをシェアするプラットフォームとして、投稿は信頼できる情報を求めています。その影響を受け、REDでのライブコマースも他プラットフォームと違い、より落ち着いた雰囲気で行われています。それによって、ライブコマースでよく見られるユーザーの衝動買いは少なく、すぐ注文したい気持ちは生じにくいです。
- 参入が遅いので、新規獲得が難しい
REDがライブコマースに参入する時期は2019年6月であり、他プラットフォームと比べて非常に遅い時期でした。そのため、ユーザーやライバーは既に他プラットフォームでのライブを利用しており、REDを利用するにはエネルギー上無理になります。
- ユーザーロイヤリティが高い
REDはシーディング領域において強みを持っていて、ユーザーがKOLとの繋がりは相対的に深いです。そのため、各KOLには忠誠心が高いフォロワーが付いて、private domainからのトラフィックがある程度確保できています。それらのKOLがライブをやる場合、商品がユーザーより簡単に受けられ、CVRが他プラットフォームより高くなる傾向があります。
ライブコマースの注意点
- アサイン金額が高い
前述した通り、ライバーのアサイン金額は「頭金+コミッション」という形になっています。その中、頭金はおおよそ1万元(約17万円)から5万元(約85万円)であり、さらに20%のコミッションは一般的です。特に頭金の制度のため、ライブ中に損益分岐点に達する数の商品が売れないなら、投資金額すら戻ってこない場合もあります。(もちろん、ブランド宣伝など金額で計らない効果もあるため、ROIだけでライブを評価するのは難しくです。)
- ライバーが優位
ライバーとの交渉の中で、特に注意すべきなのはライバー側がパワーを握っていることです。今のライブコマース市場はまだライバーの売り手市場であり、ライバーの都合に合わせなければならないことが時々発生します。例えば、ライバーの都合でライブが延期になったり、最悪の場合ライブ自体が取り消しされたりする可能性もありますので、その際は心の準備をして別の代替案を用意した方が良いかもしれません。
- 商品力・知名度がないと売れない(銀の弾丸ではない)
ライブコマースは商品販売においては非常に有力な手段ではありますが、万全策ではありません。1時間で何千万売れたなど伝説みたいな話はよく耳にしますが、これは決して誰でもできる話ではありません。成功したブランドの裏に必ず何らかの理由は存在しているからです。
スターバックス、「完美日记(perfect dairy)」など過去ライブコマースで成功したブランドを見てみると、元々知名度が高いブランドと、商品力が優れているブランドが大半を占めています。そこから、ライブコマースで一気に売上を伸ばすためには商品力と知名度がかなり重要であることがわかりました。
もちろん、商品力と知名度がなければライブコマースで絶対成功しないわけではないです。商品力と知名度がそれほどではないブランドはどうすれば良いでしょうか。
ライブコマースを成功させるには?
ライブコマースを成功させるためにはいくつかの注意点があります。商品力と知名度がさほどないブランドでも、こちらの対策にちゃんと取れたら、売上の向上には繋がるでしょう。
- ライバーへの共有
ライブコマースではブランド側が直接参加するわけではなく、ブランドとしてアピールしたいことをライバーを通じて間接的にユーザーに伝うことになります。そのため、商品のセールスポイントとか、ブランドのこだわりやブランド歴史などアピールしたいことをライバーに共有しておくことは極めて重要となります。
その目標を実現するために、ライバーに十分理解してもらえる共有資料を作ることが大事です。ただし、ライバーに何十ページの資料を渡しても全部を読む時間はないので、相手の気持ちを配慮しながら、アピールしたいポイント簡潔に伝える資料を用意した方が良いでしょう。
- 事前の仕込み(ライブの告知)
イベントを成功させるには、集客とユーザーに具体的なベネフィットを告知することが大切です。ライブの大きなベネフィットは、お得な価格とライバーの商品に関する感想が聞こえることです。そのため、商品の愛用者にお得情報、ライバーのフォロワーにライバーからの推薦メッセージを事前に告知することは、ライブ中の売上最大化を狙うための打ち手になります。
- ライバー選びの工夫
ライバーを選ぶ際の基準として重要なのは、フォロワーの属性と過去の実績で売れていた商品のカテゴリが自分たちのブランドとマッチしているかどうかです。ライバーの価値 = フォロワー数の多さで見がちですが、実はフォロワー数よりもブランドや販売実績の方が重要です。実際に、フォロワーが多くても商品の販売力が低いライバーも存在しています。
過去のライブの実績については、胖球(パンキュウ)というツールでフォロワーの属性と過去の実績が簡単に確認できます。
まとめ
ライブコマースは中国ECにおいて重要な施策ではありますが、事前のリサーチや経験がない中では思ったような成果を得られないケースも多いです。どういったライバー、プラットフォームであれば自分たちのブランドにマッチするのか、自分たちの商品を売ることができるのかといったことを細かく決めた上で実行することが重要です。
ライブコマースについてのお問い合わせは下記アドレスからご連絡ください
babel.biz_cn@babel.jp
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