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秋立つ日

昨日は立秋でした。
秋立つ日。
立ったら早くこっちこ====い!!
と願う、夏がダメダメな私です。


  *


  カチリ
  石英の音
  秋



高校生の頃に、書店でこの短い詩に出会いました。
井上靖の文庫本を手にしたら、帯に掲載されていたのです。
読みながら、青い青い秋の空が頭上に広がって、
しばし、そこから動けなくなりました。

想像の視線を降ろしてくると、実家町から遠く見える越後三山。
その麓はうっすらと青く煙り、さらに下にたどると
空の青を映して豊かに流れる川。
河原では、ススキの穂が、ふわふわと風に揺れている。
揺れるたびに、川の水がきらきらと光る。


なぜ河原なのか。
それは、「カチリ」という音からでした。
小学生の頃、理科の校外学習で河原へ出かけ、色々な石を割っては
その中に様々な鉱石が包まれているのを見つけよう、みたいな授業がありました。
雲母や長石、石英。水色やうすいピンク、緑色、紫色、琥珀色。
丸い石ころの中に眠る、きらきらとした世界に引き込まれました。
私は、外の学習は嫌いでしたが、その授業のときははりきって
河原の丸い石を必死こいて割っていたのでした。


たったの3行で、たったの8文字で、これだけのイメージを呼び起こしてくれる詩というもの。
3行で、秋が来ようとしている空気を誰にでも伝わるように表現する
その、つかむ感覚の鋭さ、敏感さに、感動しました。
言葉って、詩って、すごい!と、目が覚める思いでした。


そしてなんとこのnoteでも、2019年に、この詩を記事にした方がいらしたのです。

拝読して、ああ~~、その通りなんです!と、握手したくなるくらいに、
とても感動しました。
この3行から受けるイメージが、あのときの自己満足な印象ではなく、
同じように、心震えるひとがもっとたくさんいるということが
嬉しかったです。


秋の気配の一番は、私はまず風に感じます(和歌にもあるように)。
立秋も過ぎ、処暑と言われる時期がきて、私はその次、
二十四節気の「白露」が1年中で一番好きです。
白露の声を聞けば、もう秋はしっかり腰を落ち着けたと、安心します。

その少し前に、残暑のまだ暑い空気の中に、ある日すっと青い空気が
混じって通り過ぎます。これを、私のピコピコアンテナは逃しません(笑)
薄荷みたいないい匂いを感じます。

ああ、とうとう今年も来てくれた。
夏よ、もうすぐバイバイだね、お疲れ様(冷淡)
秋、ようこそ、心待ちにしていたよ!
私にはわりと若い頃から、夏が終わることへの寂しさが
まったくありません。



秋の気配との感動のご対面までは、まだもう少しありますが
秋のイメージの大好きな曲を貼り付けておこうと思います。
NNさんの記事で「ポプコン」というワードに出会って
ラジオを盛んに聞いていた高校の頃を思い出しました。


ポプコンといえば、NNさんが挙げていた、円広志「夢想花」。
あと、長渕剛。それと私は、柴田まゆみ「白いページの中に」

この曲は昔から、ふとした時に脳裏によみがえります。
秋を感じたくなったら、涼しい部屋で、ぼんやりと遠景を眺めて目を休めながら、聞いてみるのもお勧めです。





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