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なぜ人はドンキの曲を聴くとワクワクするのか?

深夜急に買い物に行きたいとなった時、たいていのものはコンビニにありますが、もう少しちゃんとしたお店に行くとなるとやはりドンキでしょう。

そして店に入るといつものあの曲が流れてきます。

私はこの曲は隠れた名曲だと思っていますが、ドンキの店先で流れるこの曲は上手なボーカルと楽しいせりふパートとともにちょうどいい感じに重低音が効いていて、深夜のショッピングの期待感を大いに高めてくれます。

でも私は、あのわくわく感は深夜という特別な時間の高揚感だけでなく、そう感じさせるちゃんとした仕掛けがあることに気づきました。


MIRACLE SHOPPING〜ドン・キホーテのテーマ〜


という曲名のこの曲は、ちょっと聴いただけで「この人上手いな」とわかる素晴らしいボーカル(+作曲:田中マイミ氏)と、途中に入る「ジャングルだー」といったコミカルなパートが印象的です。

でも実は、秘密はサウンドの方にあります。

華やかな1930年代のアメリカで流行したスウィングジャズの名曲、「A列車で行こう」をご存じでしょうか。

デューク・エリントン楽団|A列車で行こう (Take the 'A' Train)

吹奏楽用アレンジ版

おそらく誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
映画「スウィングガールズ」でも演奏されていました。

「ニューヨークのハーレムというジャズの街に行くならAという列車にお乗りなさい」という曲で、ジャズを聴きに行く期待とわくわく感を想像させる名曲です。

そしてこの曲のテイストがあのドンキの曲に取り入れられています。
少なくとも私はそう感じました。


ドンキの曲の、高揚感を感じさせる出だしからウォーキングベースと呼ばれる低音が等間隔のリズムで鳴り始めるイントロは、「A列車で行こう」と同じく明るく華やかなトーンで飾られていて、そのまま主旋律へと続きます。

ドンキの曲は普通のポップス的なAメロBメロサビという感じで続きますが、間奏に入る際の高らかなブラス(トランペットやトロンボーンなどの金管楽器)セクションのあと、ジャングルをイメージしたせりふと掛け声で面白さを加え、さすがドンキといえるお店の楽しさやユニークさを演出に取り入れています。

「A列車で行こう」も同様に、トランペットの歌うようなソロパートのあと鮮やかなトランペットやトロンボーンが鳴り響き、最後のパートへと向かいます。

ドンキの曲は最後ジャズ風ピアノで締めていて、そこにも往年のスウィングジャズのような雰囲気作りへのこだわりが感じられます。
終わり方も何となく似てますよね。

これはあくまで私の独断によるもので、専門家の方ならもっと的確な分析ができると思いますが、全体として両曲にとても共通する雰囲気があるのは間違いありません。


アレンジャーの狙い


ドン・キホーテというユニークなお店の導入を期待感で満たすには、ちょうど「A列車で行こう」のような明るくて思わず駆け出してしまうような音楽が似合うとアレンジャー(編曲者:山本光男氏)は思った、と想像します。

実際その効果はちゃんと発揮されていて、静かな深夜の街に急に聴こえてくるあのリズミカルで明るい曲は、普段なら激しすぎて戸惑う店内のデザインとともに、一瞬で非日常を想起させることに成功しています。

だから人はドンキに行くとワクワクしてしまうんです(断言)。

それは1930年代にジャズを聴きにハーレムに足早に向かった人々の期待感ときっと近いんじゃないかと思います。


最後に、最近あのビッグネーム、ブルーノ・マーズがドンキのCMに出演しているのを見ました。

これもドン・キホーテの非日常感をあえてチープに演出していて、でもその出役は意外過ぎるあの世界的スター、というギャップが生きています。
これはインバウンド向けに絶大な訴求力がありそうです。

ただそうなると私が好きなあの「ドンキの曲」はもうお役御免なのかと少しだけ不安になりますが、でもあれほどわくわく感を出せる曲はそうないはずと私は信じています。

「MIRACLE SHOPPING〜ドン・キホーテのテーマ〜」がこれからも現役で店内に流れ続けることを期待したいですね。




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