坂道グループは手軽に楽しめる課外活動
アイドルグループというのは、昔から男女の疑似恋愛の対象となることが多いですが、それは現在のアイドルにも当然共通しています。
しかし、坂道シリーズと呼ばれる「乃木坂」「櫻坂」「日向坂」の3グループは、そのような疑似恋愛感を意図的に薄めたグループです。
秋元氏の意向かソニーミュージックの意向なのかは分かりませんが、あからさまな恋愛要素は控えられており、さらに性的要素は写真集などでも抑えられているようです。
坂道グループの発祥である乃木坂46の始まりは2011年(平成23)ですが、当初から、制服、舞台公演を行う、礼儀や品格を重視するといった方向付けがなされていました。
AKB48の対抗グループとして始まったコンセプトの骨格部分に、不動の地位を得ている宝塚のイメージに寄せた戦略が垣間見えます。
そして、私立の女子校のような制服やエンブレム、また映像やテレビ番組の舞台もそれらを意識させる場所が多く、芸能界の色を抑えて他との差別化を図ろうとしていたように感じます。
そして日向坂46
最近人気が急上昇している日向坂46は、若い層しかも女性ファンの割合が比較的多いアイドルグループです。
乃木坂46は不動の人気1位ですが比較的高年齢のファンも抱えているのに比べ、日向坂は若い人が多いように感じます。櫻坂も同じ傾向です。
下記の調査結果をご覧ください。
日向坂は3月末に念願の東京ドームでのコンサートを実現し、私も配信で見ましたが、実際そういうファン層に見えました。
ちなみに私はほとんどアイドル系のライブを見ることはないのですが、今回試しに見てみたら、画面越しでも伝わる非常に高い熱量と勢いのあるステージに驚きました。また最年長メンバー佐々木久美のキャプテンシー(と煽り)がすごい。
テレビ等で見るのと同じかわいらしさや面白さもありますが、ライブではより激しさや一体感が上回っていて、見たらイメージが変わります!
ライブの激しさ、勢い、一体感をもっと打ち出して、ライブが完成形という姿を訴求すれば、今までとまったく異なる層も取り込めると思います。
個人的には普通のフェスで「誰よりも高く飛べ」が見たい!
中高生の生活の変化
さて、少し話は変わりますが、坂道のファン層も多く含まれる中高生の生活が、以前とはかなり違ってきているようです。
昭和から平成の前半に中高生だった方なら、かつての学校生活では課外活動の占める割合が非常に大きく、授業以外の多くの時間が部活動や校内イベントに注がれていたことを覚えていると思います。
ただ、現在の中高生は状況がかなり変わってきていて、2010から18年の8年間で中学の運動部の人数が大きく減少したというデータがあります。
団体で行う部活動はある程度の人数が必要で(例えばサッカーは最低22人)、人数が減ると部が存続できなくなってしまいます。
実際、隣の学校との合同チームとなったり、学校に部がないので地域のクラブチームに入ったりという変化が起きているようです。
部活や課外活動の体験が失われたら
学校に部活や課外活動がない、または昔ほど重視されないとなると、授業以外の活動で得られる楽しさ、競い合い、助け合ったことや、逆に失敗、くやしさはなく、物足りない時間となるような気がします。
実際、部活に入らず時間を持て余している子供が増えているという記事を見かけました。
ただ部活は顧問の先生の犠牲によって成り立っている部分もあり、教育現場の労働条件改善を考えると、減らしていくのが自然な方向だと思います。
そしてここからは私の仮説ですが、学校の時間外の体験がさまざまな理由でなくなっていく代わりに、坂道グループのような「疑似課外活動体験」が求められていくのではないかと思います。
学校の課外活動は多くの時間を使い努力が必要ですが、必ずしもうまく行くとは限りません。でも成功すれば貴重な体験価値が得られます。
その体験価値を、疑似ではあるが少しのお金と時間でリスクなしに得ることができれば、ヒマで物足りない学校生活のすき間を埋めるのにふさわしいと感じる人が増えるはず、と私は思います。
そう考えてみると日向坂のキャプテンである佐々木久美は、もちろん偶然ですが運動系部活の部長っぽさがあり、ファンが疑似的に部員となって楽しむのにちょうどよい感じがします。
アイドルがその言葉通り「偶像」であるなら、今のファンが求めている理想像がその人気ランキングの動向にも表れているはずで、その理想をいかに体現できるかが人気獲得の分かれ目になるのではないでしょうか。
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