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子育てはけっこう一瞬
ある日、私はたまたまうどん屋さんに行きたいと思い、ショッピングセンターの中にあるチェーン店に行きました。
そこは小さい子供を連れた若い家族が本当に多く、ほとんどの四人席は埋まっていて、少しだけある二人席を見つけて座りました。
食べ始めると目に入るのは、子どもの歓声や泣く姿、それに対応しているお父さんお母さん達です。
うちも少し前までは同じように子供が騒いで泣いて大変だったな、と考えていましたが、目の前の親御さんの必死さに同情して、あえて手元の料理にずっと視線を落とし何も気にならないふりをしていました。
考えてみれば、あのような騒ぐ子供達もたった6〜7年で手が掛からなくなるようになり、もちろん別の部分で手がかかる場合はありますが、物理的にはもう大変なことはありません。
しかし目の前の親御さんはそんなすぐ先の未来がまだ見えず、毎日汗をかいて格闘しています。
それは自分もそうだったのでよくわかりますし、そんな話の前にまず騒ぐ子供をどうにかしなければなりません。
でもそんな時こそ、その戦いはそんなに長くは続かないし、むしろ短い時間じゃないかと思えるような一つの考え方をご紹介したいと思います。
それは、「子育ての年数を平均寿命の80年で割ってみたら分かることがある」ということです。
あなたが80歳まで生きるとして
個人差がありますが、今の若い人は多くが80歳ごろまで生きるはずです。
先は長いですね。
私もまだその年齢になるまで相当な時間がかかるので、具体的にイメージは出来ていませんが、理解するために計算することは出来ます。
人間の子供は生まれてすぐに独り立ちできないので数年間のつきっきりの育児が必要ですが、妊娠出産を含めても人生80年のうち6年、7.5%くらいでしょうか。
同じように、人生の大きな出来事の割合を計算してみましょう。
義務教育9年で11%
高校大学7年で9%
社会に出てから結婚するまでの年数は約10年で12.5%
住宅ローンの返済までの年数は約16年で20%です。
上記は平均なので人により異なりますが、人生の経験における子育て期間の相対的な短さが分かると思います。
無限に感じられた学生時代も俯瞰してみれば人生の2割に過ぎません。
さらに子供は加速度的に成長するので、妊娠出産から乳児の3年間はひたすら手がかかる状態だったのが、4~6歳になると急にいろんな話をして、友達と遊んで、よく食べて寝ることができるようになります。
もちろんまだまだ目は離せないし、相変わらず出来ないこともあり、しつけや勉強もこれからですが、そうこう言っているうちに次の3年で多くのことが解決に向かい、付きっきりで何かをすることは非常に減っていきます。
終わってみれば本当にあっという間です。
子育てを必要以上に大きくとらえない
昔は子供が三人以上いるのは普通だったので子育ての大変な期間が10年以上続く人もいたと思いますが、一人っ子なら本当にあっという間で、二人だとしても両方とも同じように手がかかることは少ないです。
また昔は父親の育児分担がゼロもしくは遊びの時間のみという家庭は珍しくなかったので、今でも十分ではないと思いますが、以前に比べたら女性の育児への負担は減っています。
子育てによって若い頃の貴重な時間が家庭に縛られ消費されてしまうという印象は、かつての子だくさん家庭の主婦が長い間子育てに奔走し身も心も捧げていたという歴史が強く影響していると思います。
これからは、妊娠、出産、乳幼児期の6年ほどを手厚く保障する政策や世間の温かい目があれば、そのような昭和の価値観はそのうち払拭され、一人の子育てとは主に人生の7.5%の時間を使う出来事に過ぎない、という冷静な目で見られるようになるかも知れません。
現実には、昔と違い専業主婦が減り共働きの家庭が増え、仕事のストレスが育児負担に対するマイナスイメージを悪化させていて、そんな簡単にはいかないのはご承知の通りです。
ただ、年数でとらえるという考え方によって、子育てを人生に起こるいくつかの経験のひとつとして相対化し客観視できれば、自分もやれるかも、やってみよう、と考える人が少しは増えるかもしれません。