格差社会(前編)
昭和後期、1980年代から社会の格差は拡大し始め、平成の30年でその差は決定的となったと言われます。
特に2000年ごろから非正規労働者が急増し、収入が不安定で将来の見込みが見えにくい人々が大幅に増えています。
今回は、格差社会についての著書が多く、私も実際に読んで非常に興味深いと感じた橋本健二氏の考察を軸にお伝えします。
資本家階級 254万人
世帯年収1060万円 5名以上の企業経営者、役員
新中間階級 1285万人
世帯年収798万円 企業の管理職、専門職、総合職
旧中間階級 806万人
世帯年収587万円 自営業者やその家族
正規労働者階級 2192万人
世帯年収630万円 単純事務職や販売、サービス、マニュアル的な労働者
アンダークラス 929万人
世帯年収343万円 非正規労働者、アルバイト、派遣労働者、年金生活者
(パート主婦約800万人は上記に含まない)
現代の日本はこのような5階級に分断されていて、いわゆる「アンダークラス」と呼ばれる人々が増加し続けているということです。
また各階級ごとの状況を調査した結果もあり、アンダークラスの人々の厳しい現状が見えてきます。
今回は「仕事と生活に関する満足度」に注目してみます。
[分析]
・資本家・新中間は総じて満足度が高い。仕事と生活ともに、他の階級よりバランスよく満足している。
・旧中間は仕事に十分満足しているが、それに比べて生活の満足度が低い。仕事のために生活が犠牲になっているのだろうか。
・正規労働者は唯一、仕事の満足が生活の満足を下回っている。比較的満足感を得られない仕事に従事している可能性がある。
・アンダークラスは危機的状況。仕事は全体の4分の3、生活は全体の5分の4の人が不満を抱えている。別の調査でも、心の病気が他の階級に比べ2倍以上多く、明らかに他とは異なる。
※この調査では、アンダークラスから年金生活者を除外しています。
アンダークラスの人々は他の層より明らかに悪い状況であり、すでに大きな格差が生まれています。その他、貧困や未婚率など多くの指標がそれを証明しています。
社会の分断による弊害
自分の所属する階級と異なる階級との間で、生活状況や満足度、将来への危機感が大きく異なると、価値観が合わなくなり分断が始まります。
2021年、テレビやネット、SNSなどで、「コロナ禍での飲食業への支援金」「子育て世帯への支援金」についてさまざまな意見が出ていたことはご存じだと思います。
コロナで打撃を受けた中小の飲食関係業種(=旧中間階級)を助けることに対して大きな批判がありました。「支援金で不当に儲けているのでは」といった意見を目にした人は多いと思います。
また子育て世帯の支援金に関しても、「800万もの年収がある恵まれた家庭(=新中間階級)を助ける必要はあるのか」という意見がありました。
これらの批判は政治家に向けられただけでなく、ある階級から別の階級への非難とも読み取れ、それがSNSなどで顕在化しているのではないか?と感じます。
例え話をします。
同じような家庭で育ち、状況や能力も似た男性が2人いたとします。
Aさん
運よく大企業に入れたAさんは、仕事は難しくて大変だがやりがいを感じられ、結婚して家庭を持ち、念願のマイホームをローンで購入し、共働きで子供を私立に行かせている。
老後の年金も普通に支給される予定だが、それだけでは不安なので節約して積立を行っている。
またコロナの影響でテレワークが多くなり、少し郊外の家だが通勤の大変さが減り、子供との時間も増えてとてもありがたい。
Bさん
就職難で新卒採用がかなわず非正規からマニュアル的な業務の中小企業に転職し、結婚はしたが子供はおらず、共働きで暮らしている。
Bさんは中小企業で休みの少ない忙しい毎日。
大きなローンが組めず賃貸暮らしだが、コロナの影響で一時的に収入が下がり妻のパートを増やしてもらい対応している。
目先の生活に不満はないが、自分の将来に期待が持てない中、精神的に滅入ってしまっている。
これはあくまで例えですが、新中間階級と正規労働者階級の違いをストーリーで表してみました。
新卒採用や転職を経てこのような浮き沈みの光景を目の当たりにしてきた方にとっては、とてもリアリティのある話ではないかと思います。
※後編はこちらから↓
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