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日本とアジアで独自進化したラップ・ヒップホップサウンド

日本やアジアのラップやヒップホップは、アメリカの正統派とは異なり他のジャンルとミックスされた新しいサウンドとなっていて、それが独自のオリジナリティを醸し出しています。

アメリカが本物でアジアは偽物なんて話が昔はありましたが、そういった定説を超えた独自の進化をしていると感じる曲を選んでみました。


Number_i|BON

ラップと和を融合するというのはよくある仕掛けですが、この曲はそれを面白く演出しつつ、アイドルの枠を完全に超えるサウンドを作っています。
K-POPに触発された(?)日本のアイドルもここまで来たかと感激しました。

オリジナリティを作るというのはとても難しいことですが、MVのユニークさは相当なものがありビジュアルはマイルドな狂気を醸し出していて、彼らの今後に対する不退転の覚悟が伺える非常にいい出来だと思いました。


LISA|ROCKSTAR

以前BLACKPINKで活躍していたLISAですが、ソロとしてアメリカでこんな曲を出していました。

これはハードなヒップホップとも言われるトラップ的なサウンドですが、タイ人である彼女がパフォーマンスするとアメリカ人とは明らかに違う女性的な雰囲気が醸し出され、私にはその感じが新鮮に見えました。

彼女は韓国の少し狭い音楽シーンやファンから飛び出すことで、今やタイだけでなく東南アジアのスーパースターという存在感を打ち出すことに成功しているようです。


LE SSERAFIM|CRAZY

この曲は基本ラップで進行しあとはほぼ同じフレーズとコーラスが繰り返すだけのシンプルな構成となっていて、メロディアスな曲が多いK-POPよりかなり「洋楽っぽい」ダンス系サウンドです。

彼女らにありそうでなかった(?)EDMを持ってくるあたり、良ければ何でも取り込むK-POPの貪欲さが感じられて私は好きです。

ANTIFRAGILEのような以前のヒット曲は、女性の強さを出す主張の強いヒップホップが目立ちましたが、もっと聴かせるサウンドに変わってきているのはとても良いですね。


後半は角度を変えて、もっと大人のヒップホップやラップをご紹介します。


STUTS & 松たか子 with 3exes|Presence Remix feat. T-Pablow, Daichi Yamamoto, NENE, BIM, KID FRESINO

この曲は人気ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌で、劇伴を大胆に使っていたり放送回ごとにアレンジを変えたりといったユニークな演出で話題となりましたが、今回はそういった工夫以外のサウンドについて取り上げます。

まず何と言ってもSTUTSでしょう。
カッコよすぎます、天才ですね。

彼が常にシンプルかつ大胆な構成で素晴らしい曲を作れるのは、長年サンプラーひとつでリアルタイムに音楽を作り続けた職人芸の賜物でしょうか。
この曲にもそんな彼のオリジナリティが凝縮されています。

ラッパー達も普通では集まれないメンツらしいですし、松たか子をこう使うセンスも凄いし、MVの渋谷原宿外苑前といったあの辺の空気感もいいし、もうこれ以上の組み合わせあるのかな?という感じです。


KREVA|One feat.JQ from Nulbarich

KREVAはKick the Can Crew休止後も精力的に活動し、他にない上品さと激しさを併せ持った日本人ラッパーですが、この曲はマイナーなもののとても大好きな良い曲です。

ジャンルを超えた独自の美しいサウンドに定評のあるNulbarichのJQと共演し、KREVAのラップの大人感とJQの美学が融合してひとつの完成形を作り出しています。
ロック系の音もこのシリアスな雰囲気によく合っています。

MVの画面は最初2分割され東京の東の方のけだるい重い空を映し出していますが、「One」という歌詞とともに二人が合流し、陽が差し始める中ひとつの曲を奏でるストーリーと音楽がシンクロしていて感動的です。


m-flo|come again

最後はもう23年も前の作品とは絶対に思えない、昨日発売と言われてもおかしくないこの曲を、ラップやヒップホップをベースに多様なサウンドを取り入れオリジナルに仕上げた象徴的な作品としてご紹介します。

Taku Takahashiが当時の2STEPの流行を自己流で表現したためオリジナルなサウンドに仕上がったとか、Verbalのラップが当時としては斬新すぎてネットユーザーがざわついたとか、そんな逸話もある曲です。

彼らの曲の多くはラップ+DJ+女性ボーカルの組み合わせで、そこにヒップホップ・ソウル・ジャズ・ポップを混ぜ込んだような独自の音楽性を持ち、日本の売れ線音楽が好きな保守層に一切おもねることなくそれを今でも貫いているのは素晴らしいと思います。


というわけで、これらはいわゆる典型的なラップやヒップホップではない独自性が存在する曲であり、複数の意外な要素がかけ合わさって新しい何かが生まれていると私は感じました。

もちろん音楽に対する感じ方は千差万別なので、全然違う感想を持たれた方もいると思いますが、それでまったく構いません。
みなさんの感性で楽しんでいただければと思います。




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