いりさん
真夜中だけは普通じゃないお客様がやってくる。
GOOD COMIC CITYお疲れ様でした。 私事ではありますが、実に2年ぶりのイベント参加でした。 2年も空くとなると、色々様変わりします。 スペースの顔ぶれとか、一般参加者の顔ぶれとか、ジャンルの盛況具合などなど。 そういうわけで、若干の浦島太郎気分を味わいながらのサークル参加でした。 結論から言うと本当に楽しかったです。 さて。 私個人の話をしますと、ここ2年ばかし(あるいは3年弱)同人活動がほとんどできておりませんでした。 理由は明白で、仕事が忙しかったからです
ポケモンが好きだ。 ストーリーやポケモンそのものを愛でることはもとより、XYあたりからは対戦にも手を出し、6匹全部ゴーストタイプ(いわゆる霊パ)を組むなどして楽しんでいる。 さてタイトル通り、少しばかり昔話をしようと思う。 今から大雑把に26年くらい前、ポケットモンスター赤緑が発売された。 その後、アニメの放送も始まったりして、世の子供たちはポケモンに沸いた。 私ももちろんその中のひとりだったが我が家にはゲームボーイがなかったので、主にアニメを楽しんだり友人から借りたゲーム
今回は『交流』の話。 前回とか前々回に引き続いて性懲りもなくTRPG関連のお話である。 TRPGを始めて早1年ちょい。 何度か卓を回すうちに、拙PC2号が恐れ多くも某方のPCとよく絡むようになった。いわゆる『うちよそ』の始まりである。 けれども私はなんやかんやで、うちよそには結構慎重派な人間である。 だって人によって許容範囲違うし、いきなり作品書いてぶつけたら熱量で引かれるかもだし、と色々な考えが脳裏をよぎった。 が、困ったことに私は『感極まると何かしらの形でそれを出
前回に引き続きTRPGの話である。 そして今回は拙PC——つまり私が普段使っているキャラクターの話である。 とはいえ、別にキャラクターのパーソナリティを語りたいわけではない。そういうのは卓内とかぷらいべったーとか、あるいはMMD動画でやっている(ありがとうnanoem) 一年ちょっと前、フォロワーさんに誘われてCoCをやることになった。 TRPGを始めるにあたって必要なものは三つ。 ・一緒にやってくれる人 ・ルールブック ・自分がロールプレイするキャラクター 一番上は誘
既にタイトルでオチている。 オチているが一応本文も書く。 TRPGというものがある。『卓』と言ったりもする。 詳しい説明はたぶんここでするよりネットの海に数多ある他の文章なり動画なり解説書を読んだ方が手っ取り早いと思うが、端的に言えば『筋書きはあるが台本がない演劇』みたいなものだ。 人はプレイヤー(PLと書いたりする)とゲームマスター(GMと書いたりする)に分かれる。GMだけが筋書きを持っていて、PLは自分の分身となるキャラクター(PCと書いたりする)が局面ごとにどう行動す
店内の空気がいっそう重くなった気がした。 キツネ先輩はじっと坂井さんを見ているし、坂井さんもまた薄く笑いながらキツネ先輩を見ている。 「青年、これはどういう状況だね」 猫教授が小声で僕に聞いてくる。 僕は身をかがめて教授と目線を合わせながら 「僕が聞きたいです」 と小声で答えた。 キツネ先輩と坂井さんは無言でにらみ合いを続けている。 重い沈黙は時間にして三十秒もなかったと思う。けれども体感的にはとても長い時間だったように思えた。 沈黙を破ろうと坂井さんが口を開
「ただいま戻りました」 僕が言うとコトリ先輩が 「おかえりー」 と朗らかに返してくる。 タイムカードを切ってエプロンを身につけ、なんとなく僕は気合を入れ直してレジへと向かった。 別に何が変わるわけでもない。僕はただ、ここで普段通り本を販売するだけだ。 「交代します」 僕が声をかけるとレジのキツネ先輩は 「お願いします」 と相変わらず淡々とした口調で言う。 僕は頷いてレジに入った。 そこからのレジは少し暇だった。 サービスカウンターでキツネ先輩が注文書を書い
「マヨナカに入ることができる存在って、どうやって選ぶんですか?」 僕が尋ねると坂井さんは 「やり方はいろいろあるよ。ほとんど呪術的なものだけど」 と答えた。 「例えばそうだなあ」 そう言って坂井さんはズボンのポケットから紙切れを取り出した。新聞記事の切り抜きのように見えるそれには『困りごとがある方は神矢堂へ』と、何かの相談所のような場所の住所と電話番号が書かれている。 「これ、なんて書いてある?」 坂井さんの言葉に僕は首を傾げながら 「え、『困りごとがある方は神矢堂へ
マヨナカで働くにはマヨナカに対して柔軟に対応できる人間であると陰陽庁に認めてもらう必要があるらしい。 「それって誰がどうやって認めるんです?」 私が聞くと店長は 「なんか知らん間に陰陽庁の連中が調べているんだと」 とぶっきらぼうに答える。どんな技術だ。 「じゃあ、私もいつの間にか認められてたってことですか」 「そうらしいな」 「……店長もですか?」 「そうらしいんだよ」 そう言って店長は事務所に置いてあるクッキー(後輩ちゃんのお土産だ)をつまんで口に放り込む。店長の覆
先日、ふと思い立って中高時代に所属していた部活の名前で検索をかけたら当部活を『TOKIO部』と呼んでいる方がいた。言い得て妙だなと思う。 いいじゃないか、TOKIO部。なんだかとってもキャッチーだし、これなら万年の問題である部員不足も解消できるのではと思う。 我が青春の全てを捧げた部活の正式名称は環境問題研究部という。 なんかお固い組織のようであるがその実、母校で最もクレイジーな集団であったと自負している(「イカれているんじゃないイカしているんだ」というのは大好きな漫画のセ
「人の名を名乗ると言うことは、あなたは妖なのだろうか」 猫教授の言葉に坂井さんは頷く。 「ちゃんと人間に見える?」 坂井さんはこんなことを言うけれど、どこからどう見ても人間にしか見えない。 僕と猫教授がそういうことを告げると坂井さんは嬉しそうに笑った。 「本当? よかったぁ。俺さ、化けるの下手だってよく言われるんだよね。妖気っていうか、今様の言い方をすると”オーラ”っていうの? なんかそういうのがダダ漏れだってさ」 坂井さんはそう言うけれど、残念ながら僕はオーラなんて
「この建物全体が今はこの世とあの世の間にあると先輩に教わったのですが、お客様はどうやって来店するんですか?」 僕が尋ねると猫教授は「吾輩は仕組みの全てを知っているわけではないのだがね」と前置きをして 「神隠し、という現象を知っているかね?」 と逆に聞いてくる。僕は頷いた。 「今現在、この場所は意図的に神隠しされている状態なのだそうだ。そして、客である我々も意図的に神隠しされることでこの場所に赴いている。——たとえば円形に並んだ小石の中。昼も夜も暗がりの路地の向こう。そうい
「お待たせしましたー。鯖味噌煮定食でございます」 店員さんが猫教授のところに膳を持ってくる。 「ありがとう」 猫教授は目を細めて笑った。 「あ、注文いいですか? 日替わり定食お願いします」 ついでに僕は店員さんに注文を言って、改めて猫教授に目をやる。 「猫には味が濃いんじゃないんですか?」 僕の言葉に猫教授は器用に箸を持ちながら 「詳しいのだな、名も知らぬ書店員よ」 と言う。 「僕のことはオオメダマとでも呼んでください。この場所ではそれが僕の名前なので」 僕が言う
「ただ混み合っております。相席でしたらすぐにご案内できますが——」 店員さんの言葉に僕は 「相席で大丈夫です」 と答える。店員さんは頷いて 「ではお席にご案内いたします」 と僕を店内へ案内する。確かに店内はかなり混んでいた。 「お客様、マヨナカは初めてでいらっしゃいますか?」 店員さんが唐突に言う。僕は驚きながらも頷いた。 「お食事の際は顔を晒しても問題ありませんので」 そうなのかと驚きつつ、僕は同時に納得もした。僕の顔を覆い隠している布は額で固定しているだけなので
「じゃあ、オオメダマくんは今から休憩ね」 レジカウンターを出ようとする僕にコトリ先輩がそう言った。 「バックヤードで弁当食べるもよし、他の店に食べにいくもよし。……あ、従業員割はいつも通り使えるから安心してね」 「従業員証の顔と名前は隠さなくていいんですか?」 「うん、それはいいみたい。店員同士での確認だからかな」 まあ、そこを制限してしまうとややこしいだろうなとも思う。 「あと、建物のそこかしこにも砂時計的なものが設置されているから、それを基準に帰ってきてね」 「わかり
大きなカラスだった。 そろそろレジも交代の時間かというときに来店したのは、それはそれは大きなカラスだった。 より正確に言うと人に近い胴体にカラスの頭がくっついていた姿をしている。 「本を取りに伺いました。カラスマです」 よく通る男性の声でカラスは流暢に名乗りながら予約票をレジカウンターに置いた。その手は人と似た形をしているけれど真っ黒な羽毛に包まれている。 「あ、はい。少々お待ちくださいませ!」 僕は予約票を受け取って、レジ後方の棚に駆け寄る。 予約票に書かれてい