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東克樹・山本祐大バッテリーの凄さ

2023年11月27日。最優秀バッテリー授賞式。
もはや常連となった山本由伸・若月健矢(オリックス)と並び立ったのは、前年1勝6敗&僅か17試合出場で打率.103のバッテリー。この未来を、誰が想像しただろうか。

16勝3敗 防御率1.98の成績を残したこのバッテリーについては「祐大のおかげ」話や東がゾーン勝負にこだわって成功した話などが記事になっているが二人の何が凄いのかを掘り下げた発信はあまり見当たらず、ストライクをめっちゃ投げたら上手くいって仲も良すぎて授賞式に変なスーツを着てきたコンビ、みたいになっている(いやなってない)。

このバッテリーを誰より注目して見てきた私の完全主観ではあるが、どこが素晴らしい二人なのかを発信したくこんなものを書いている。
話が逸れるが、近年はわざわざ合わないものを読んだり見たりしては文句を言う匿名の当たり屋みたいなのが多すぎる(自分もやりがちなので最近気を付けている)。先に書いた通り完全主観なので、私の考えや見方に共感してくれる方のみ読んでくれれば良いと思う。長いし。

☆"復活"ではない。新たな形を作り上げた東


今までの強気な速球勝負のスタイルを求め、また求められては苦悩した数年間だったが、2023年はついに覚悟を決めてか腕を下げた大胆なモデルチェンジに打って出た。
結果、変化球の質は各段に向上し元々あった制球力には更に磨きがかかった。ストライク率がどうこうみたいな話はデータサイトでも見ればわかるものだと思うので、それ以外の要素を中心に話していきたい。

・変化し手に入れた武器「スイーパー」

元々東のスライダーは、言葉を選ばず言えば"中途半端"だった。真っすぐに偽装できるような軌道でもなければ、変化量もそれほど。真っすぐが良いからこそ通るスライダーといった感じだった。
それが腕を下げたことで、横曲がりの大きないわゆる「スイーパー」になった。恐らく横に40数センチ曲がっていると思う。
左打者の外で空振りや弱い打球を奪い、更に右打者の内角にも投じるようになってCSではデビッドソンが体に当たる球を空振りしていた。今まで決め球はチェンジアップさえ警戒しておけばという投手でもあったが、この「スイーパー」の存在は大きかった。
NPBでは未だに使いこなす投手が少なく、またスイーパーとは名ばかりの緩いだけのスライダーだったりもする中で貴重なスイーパー投手としての成功サンプルでもある。

・ニュー東は「軌道偽装の天才」

スイーパーのみならず各球種の球質も一気に改善。
シーズンを通して、2シーム方向とスライダー方向それぞれで曲がりや強度を細かく調整できる持ち球構成へと変化していった。

2シーム(スプリーム気味。左の内角・右の外にいけるハイブリッド)
スプリットチェンジ(130キロ程度。決めにもいけるが、カウントでゴロも取れる)
遅いチェンジアップ(110キロ。スプリットチェンジと近い軌道でより抜かれる)

カッター(スラット質。スプリーム同様ハイブリッド球種)
スライダー(前述の良質なスイーパー。キレ良く大きく横曲がりする)
カーブ(スイーパーよりも遅く、縦もでる。カウントだけでなく左の外にも)

スプリットチェンジを拾える選手が出てきたら遅チェンジで抜く、など右が来ても左が来てもどの球種・球速に合うタイプかを見極めてそこからズラしていけばよくなる。
元々制球力や変化球のセンスもあったのだろう。スライダーだけでなく2シーム、遅いチェンジアップなどもレパートリーに加わった。投球フォームと意識変化でこれだけのモデルチェンジ・クオリティアップに成功するのだから恐ろしいポテンシャルの投手だと感じさせる。

2シームは6月ごろから変化量を出しにくくなって右からの被弾が増えたり、カッターがややコマンドの面などでブレがあったりは数少ない課題ではあるが、昨年はそのタイミングで2シームを減らし遅チェンジを増やす、右へもスイーパーを増やすといった形で対応できていた。
相手のタイプと自身の球種構成を考えた配球力、対応力、さらに制球力も高く、2024年シーズンも好成績が期待できるだろう。

☆配球センス・守備スキルに長け、打撃も向上した山本

かつては新人王も獲得した東以上に、この山本のブレイクは予想されていなかったのではないか。
個人的には今後の横浜DeNAのチーム成績にも大きく関わってくる重要なキーマンだと考える。

・光っていた配球センス、磨きがかかった観察力

山本は元々、配球のセンスは良い捕手だった。2021年のフェルナンド・ロメロとのバッテリーが印象的だ。
大島洋平(中日)とピンチで対戦し、山本がロメロにひたすらカッターを要求し三振に抑えたシーンがあった。ロメロは変化量を出し切れないのが弱点で、大島は届くところならほぼシングルヒットにできる強みがある。バットと接点を作らない変化が出せているのはカッターと見抜き、勝負どころで余計な手を挟まない。これが若手時代からでもできていた唯一の捕手だったと思う。

2023年シーズンでも東の操縦は見事なものだった。前述した球種構成も、山本が相手を見て良い選択を続けたからこその成績でもある。
右のインコースへの曲がり球はカッターだけでなく大きいスイーパーやバックフット気味のスライダー、左へのチェンジアップなども必要と思えば積極的に要求できる。
東以外でも9月不調の石田と組んだ際に右打者へも大きいスライダーを増やし無失点に導く、といった試合もあった。発想の良さに柔軟さや観察力が加わり、本当に良い配球脳になってきた。
フレーミング技術は素晴らしく、ブロッキングも良い。今のDeNAでは最も投手が投げやすいキャッチャーではないだろうか。

・控えから8番へ、8番から7番へ。大きく成長した打撃

前年までの山本の打撃は、打力がない自覚から来るのかスイングが消極的でかつ反動も必要以上につけすぎている、典型的なNPBの良くないドツボに嵌った打撃だった。もう少し早く、もう少し前で振れたら普通に打てそうなのに…と正直むず痒い選手だった。
今年は春キャンプからトップに早く入れていて、引き付けすぎずでも右方向に綺麗に打球が出せて追い込まれても粘り強くなった。桑原の打撃を参考にしたらしいが非常に良いものをサンプルにしたと思う。

控え(東の専属捕手)から段々と8番起用が増えてきた頃、早いカウントから強気で押してくる攻めが増えた。2ストライク打率は高いが初球が高くない。8番で球数を稼ぐなどの意図もあったんだろうが、6月7月と段々成績が落ち始めた。
それが8番で中島卓也のような粘りを見せ始めた林琢真が台頭したこともあってか、シーズン終盤では「7番の打撃」に変化してきたと感じる。ボール先行カウントで速球に絞って大きいのを打つとか、狙いの付け方も含めて良くなってきた。
追い込んでからが面倒でも追い込むのが楽ではもったいない。山本はそこの積極性と粘りのバランスも改善し、追い込まれ"ても"強い選手になって最終的に.277 OPS.729と見事な成績を残した。


山本には中村悠平(ヤクルト)のような、打席でも配球でも嫌らしくチームを勝たせる捕手になってほしいと思っているし、その階段を上り始めたシーズンだったと思う。
山本が100試合以上出てこのパフォーマンスレベルでいられるかどうかは、横浜DeNAが優勝を狙う上で大きなカギになってくると個人的には考えている。

☆セ・リーグ最強バッテリーに望む2024年

今永が抜け、真の意味でもエースの役割が求められる。
投手につく勝敗など意味はなく運だという声もあるが、私はそうは思わない。勝負どころでもリスク管理を徹底できる球質にこだわり、また配球にもこだわって勝ち切る。今年のバッテリーはそれができていたからこその16勝、最高勝率だったと思う。三浦監督がCSの初戦でも長年チームを支えた今永より東を先発に選んだのも納得だ。
「勝ち切れるバッテリー」として、2024年シーズンも期待したい。




また、こんな長い駄文を読み切った方がもしいれば、そのことにも感謝したい。
今永や佐野の昨年振り返り、2024年の横浜DeNA展望、ブラッシュアップライフが最高だった話など他にも書きたいテーマはあるが、書く気が起きるかは不明。
それでは。


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