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複合災害とマルチハザードBCP(#2)

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マルチハザードBCPにおいては、目の前で起こっているインシデントが一つなのか、複数なのかについては、とくに関知しない。単独のインシデントであろうと複合災害であろうと、採るべき手順は同じだからである。

ある時、一つまたは複数のインシデントが起こったと仮定しよう。それが「緊急対応マニュアル」で想定しているものなら、事前対策と緊急対応手順が奏功し、ある程度まで被害を低減できるだろう。

一方、たとえ発生したインシデントが緊急対応マニュアルで想定されていない場合でも、従業員一人ひとりの安全を確保し、社内の連絡体制と協力・連携体制を駆使した危機回避行動を実行することは可能である。

さて、発生したインシデントが災害(Disaster)に発展し、不可抗力のために事業が停止してしまったらどうなるだろう。この場合、すぐさま活動内容は「緊急対応マニュアル」から「BCP本編」の方に活動の軸足を移すことになる。BCP本編には、少なくとも次の3つの要素から成るアクション・プランが規定されていなくてはならない。

BCPの活動を方向づける3つのアクション

1.情報収集・分析・評価
 インシデント発生後の状況(または予想される状況)について、従業員の安否や出社率、業務に不可欠なリソースの被害の程度などを整理し、顧客・取引先への影響や予想復旧時間などをもとにBCP発動の是非を決める。

2.BCPの発動判定
 BCPの発動とは「最短でコア業務を再開するための手順を実行すること」であり、例えば次のような方針を予め決めておいて選択することになる。① 短期間で復旧でき、顧客への影響も少ない場合は完全休業して復旧を急ぐ。② 業務停止が許されない業種(インフラ事業・医療・介護など)では、業務の継続を最優先し、復旧はこれと並行して、または段階的に進める。③ 復旧に長期を要する場合は、代替施設などを確保して業務を続けながら段階的に復旧を進める。

3.事業継続対応・復旧の実施要件
 BCPの発動を通じて事業継続対応及び復旧方針が決まったら、具体的な段取りに沿ってこれを実行する。スタンダードな流れとしては、例えば「最優先事項の確認」→「業務体制の決定」→「重要リソース(必要に応じて代替リソース)の調達と配備」→「重要業務の実行」、そしてこの間、「顧客・取引先との緊密な連絡・状況報告を行う」などが考えられるだろう。

ここで、次のような状況を想定してみよう。

会社が台風で浸水被害を被った。事業が停止して5日目、まだ復旧が始まったばかりなのに太平洋高気圧の勢力が強まり、気温40℃を超える猛烈な熱波が日本を覆い始めた。熱波がいつ終息するかは分からない。

このような状況下での事業継続・復旧対応は、次図のようになる(あくまで一例。実際は企業により様々な対応方法が考えられる)。

複合災害における事業継続・復旧対応

 どのような表記や用語を用いるかはともかく、事業継続対応と復旧活動に明確な方向付けを行うためには、上の3つの要件が不可欠であろう。これを従来のBCPに追加すれば、事業継続・復旧フェーズへの移行プロセスがより明確に、スムースになるに違いない。この3つの要件は、当サイトのマルチハザードBCPテンプレート(有料)にも記載されているので、興味のある方はご参考ください。



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