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日本はこれからも気候後進国であり続けるのか?


衆議院選に見る「気候危機意識」の欠如

 予想通りと言うべきか、今回の衆議院選でも、メインの自民、公明、そして立憲にしても、気候変動対策については主要な政策目標に掲げなかった。気候変動というリスクが、どれほど社会や経済、そして私たちの暮らしや健康を脅かすことになるのか、どの政治家もまったく盲目であり、想像力を欠いているとしか思えない。
 先進諸国の中で、気候問題を争点や政策目標として掲げていないのは日本ぐらいのものだ。1980年代に世界のトップに君臨した日本はその後、どんどん世界経済の地位を下げていったが、その原因は、過去の成功体験にしがみついて、この40年間に生じた世界の大規模な構造変化(中国の工業化やアメリカのIT革命など)に、戦略的に適応してこなかったからである。
 この"不適応"は、すでに気候変動対策でも起きている。国が監督責任を持たず、民間業者任せで環境破壊を引き起こしているソーラー開発事業、石炭火力発電所の温存、カーボンプライシング制度の遅れ等、数えあげれば枚挙にいとまがない。

神宮外苑地区の再開発の着手

 この種の不適応事例の中で最も身近なものは、以前から問題となっていた神宮外苑地区の再開発ではないだろうか。つい最近、事業者の三井不動産は、イコモスから「環境への影響について虚偽申請があった」と指摘されたにも関わらず、これを無視して伐採に着手した。国が気候対策を根幹に据えていれば、すぐに待ったがかかり、一事業者や一自治体の一存でこのような開発を強引に推し進めることはないはずである。
 ちなみに開発事業者の三井不動産は、同社のホームページで、「& Earth 商業施設の取り組み」「終わらない森創り」などといった「エコ」をアピールしているが、こうなると単なる"グリーンウォッシュ企業"以外の何モノでもない。
 似たようなことは横浜(瀬谷区と旭区)でも進められている。旧米軍跡地の再開発に三菱地所などが参入し、2030年代に大型テーマパークとしてオープンさせる予定だという。緑をつぶし、コンクリートで塗り固めた土地は熱を貯めこむ。2030年代と言えば、もはや一年の半分近くが夏となり、6~9月には40℃を超える猛烈な暑さが常態化しているだろう。そんな時期にオープンさせるというから驚きだ。

 近未来を見据えて、これから本腰を入れて取り組むべきは、少しでも人口密集地の熱の蓄積や集中を抑える一方、スポンジシティに見られるような、大規模洪水を緩和する新たな都市づくりなのである。そのために、緑を戦略的に増やしていかなくてはならないのだ。そうした発想が、国や自治体(東京都や横浜市)には完全に欠落している。

世界の流れと逆行する日本は、これからも気候後進国であり続けたいのだろうか?

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