第13回:SDGsは未来への希望か、一過性のブームか?
SDGsの認知度
今回は、「SDGs」の取り組みの現状を気候変動の観点を踏まえて考えてみたい。SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、貧困や不平等・格差、気候変動の影響など、世界のさまざまな問題を根本的に解決し、すべての人たちにとってより良い世界をつくるために設定された、世界共通の17の目標だ。
このSDGs、電通の「第6回 SDGsに関する生活者調査」によると、日本での認知度は90%を超えており、海外からも注目されているそうだ。内閣府や各省庁がSDGsを推進している他、テレビ番組のSDGsコーナーやSDGsをアピールする企業広報も増えていることが理由なのだろう。また、SDGsが学習指導要領に加えられて小中学校で必須科目となったことも影響は大きいかもしれない。
しかし、手放しで喜ぶわけにはいかない。日本ではSDGsの認知度は高いかもしれないが、実際のアクションにつながっていない点が問題視されているからだ。とくに気候変動問題に対しては危機感が乏しく、どこか他人事のように捉えている点があることは、「第10回:世代間における気候危機意識の違い」でも述べたとおりだ。
SDGsと企業活動
SDGsの目標の中でも、主に組織レベルで取り組まないと達成できないものとしては、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「産業と技術革新の基盤をつくろう」、「住み続けられるまちづくりを」、「つくる責任 つかう責任」、「気候変動に具体的な対策を」、「海の豊かさを守ろう」、「陸の豊かさも守ろう」、「パートナーシップで目標を達成しよう」などがある。
企業がSDGsを経営に生かす目的や動機はさまざまだ。例えばブランドや知名度の向上につながる、ESG投資家などからの資金調達が有利になる、新たなビジネスの機会につながる等など。各社のホームページに掲載されたSDGsの取り組みを見る限り、全体的な印象としては、多くの企業が創意工夫をこらして世の中の役に立つことを実践しているように"見える"。しかし中には、企業としての当然の義務である環境対策や従来の社会貢献活動をSDGsという名前に置き換えたものも見かける(これもグリーンウォッシュの一つと見てよい)。SDGsならではの目に見える成果、社会を変えるだけの有効性が期待できるのかどうか、疑問が残るということでもある。
気候対策としての役割が希薄な日本
海外の取り組みはどの程度なのだろうか。SDGsの折り返し点にあたる2023年7月、国連による『SDGs報告2023特別版』が発表された。この報告書では「SDGsは危機に瀕している」と警鐘を鳴らしている。評価可能なさまざまなターゲットを2015年ベースで比べると37%が「停滞か後退」、48%が「軌道から中程度か著しく外れている」となっており、達成する見込みのあるSDGsのゴールはわずか15%に過ぎない。
そして何よりもわたしが最も気になるのは、「目標13 気候変動に具体的な対策を」だ。報告書は「現在の気候アクションプランの規模とペースでは、効果的に気候変動に取り組むにはまったく不十分」「単なる計画や約束を超えた、緊急かつ変革的な行動が重要だ」と指摘している。因みにSDGsの世界ランキング(166カ国対象)では北欧の国々が上位を占める一方、日本は21位だった。また、アメリカが39位、ロシアが49位、中国が63位、インドが112位など、SDGsの達成度の低い国々は二酸化炭素排出量がずば抜けて多い国々でもあることが分かる。果たして世界はこれから、ほんとうに足並みをそろえて気候危機に立ち向かえるのだろうか。