創業から3年。自由診療クリニック特化型のSaaS「B4A」をつくってます
株式会社B4A CTOの前原です。自由診療クリニック特化型のSaaS「B4A(ビーフォーエー)」を開発しています。
B4Aは2021年1月14日に創業し、もうすぐ3年になります(記事執筆1/9時点)。0からのスタートでしたが今では約300院のクリニックに導入いただいており、2023年の9月にはシリーズAの資金調達(約3億円。累計約5億円)を行いました。
これまであまり対外的な発信をしてこなかったのですが、我々について知っていただく機会を増やしたいと思い、noteをはじめることにしました。まずは一本目ということで、創業から今までの経緯を紹介したいと思います。
はじまりは「自由診療へのアクセスをよくしたい」という代表の想い
私と代表の植松は新卒入社した職場(ネット金融系)の同期であり、以前の職場(医療IT系)の同僚でもあるのですが、植松は自分自身が自由診療(特に美容医療)をよく利用するユーザーであり、創業前から自由診療クリニックの予約の取りづらさや通院時の非効率さなどを目にして「自由診療へのアクセスをよくしたい」と考えてました。(約20年前、まだ脱毛が今ほど一般的でない時代から脱毛をしていたらしい)
口コミアプリの失敗で気づいた、強烈なニーズ
そのような植松の思いから、実は今の会社(B4A)を創業する前に、植松と共に美容医療クリニックの口コミアプリを作っていた時期がありました。ただ、残念ながらこのアプリは全く上手くいかず、閉鎖することになってしまいました。(この時期は何をやっても上手くいかず、メンバー間も険悪になったり、当時間借りしていた格安オフィスにはネズミが出たり、バルサン焚く羽目になったりと、しんどかったです。。)
しかし、様々な自由診療クリニックと話す中で、以下のような課題に気がつきました。
膨大な紙の管理(カルテ、問診票、同意書等)
煩雑な予約業務
情報がデジタル化されてないことによる非効率な業務やマーケティング機会損失
そして、さらに詳細をヒアリングしてみると、
自由診療では、保険診療とは異なる業務特性がある(予約の特殊性、コース等の役務管理、マーケティング業務の存在等)
上記業務特性に対して、保険診療の電子カルテはフィットしない事が多い
自由診療に特化した有名な電子カルテは存在しているが、クラウド型ではなくオンプレ型である
といった業界の現状もわかってきました。これらのことから、「自由診療に特化したバーティカルSaaS」のようなものに強烈なニーズがあるのではないかと考えるようになりました。そして、
口コミアプリは失敗に終わったものの、その中で自由診療クリニックの方々とつながりが出来たこと
私も植松も前職で医療IT業界に身を置いていたこと
からも、我々こそがこの領域に挑戦するべきなのではないかと考えました。
顧客の声を聞き、プロダクトの骨子を固める
私も植松も前職で医療IT業界に身を置いていたとはいえ、医療従事者ではないため、自由診療クリニックの現場業務についての解像度は決して高くありませんでした。妄想でプロダクトを作っても失敗することは目に見えています。そこで、植松の知人であるクリニックの方々からコンセプトやワイヤーフレームに何度もフィードバックをいただく事にしました。
2020年の夏頃からコンセプトやワイヤーフレームを作り始め、クリニックの方からフィードバックをもらいました。そして、そのフィードバックを通じて、以下のようなプロダクトの骨子を固めていきました。なお、これらは今でも大きく変わっていないプロダクトの基本となっています。
(1)オールインワンのSaaSにする
一つ目はオールインワンのSaaSにすること。すなわち、「これ1つ入れれば良い」というプロダクトにする事です。自由診療クリニックの業務は、カルテだけでなく、予約、シフト管理、見積書や請求書の作成、役務の管理、会計、在庫の管理、経営数値管理、マーケティングなど多岐にわたります。クリニックがこれら一つ一つの業務に対してホライゾンタルなSaaSを契約しシステム連携で繋げる…そういったことも可能かもしれませんが、そもそも各SaaSが必要なAPIを公開しているとは限らないですし、それらを連携を開発・運用する人材(エンジニア等)がクリニックに在籍していることは極めて稀です。よって、クリニックにとってはオールインワンであることが大きなメリットになるだろうと考えました。
(2)クリニックのオペレーションを徹底的に効率化する
二つ目は、業界特化型であることを活かし、クリニックのオペレーションを徹底的に効率化することです。「決してホライゾンタルSaaSの劣化版の組み合わせにはしない」「一つ一つの機能を自由診療クリニックの課題解決に特化して作り込む」ということを強く意識しました。例えば「予約機能」ひとつとっても、自由診療クリニックの予約業務は「一つの予約が複数のステップ(カウンセリング、診察、施術等)から構成され、各ステップごとに必要なリソース(スタッフ、ルーム、機材)が異なる」「予約時間から数分でも待たされるとクレームにつながる」といった特性があります。また、そのような中で「回転率を最大化したい」「複数のステップ間で出来るだけ同じリソースをアサインしたい」といったニーズもあります。これらの特徴とニーズを一般的な予約システムで解決するのは困難です。そこで、我々はこのような特性を考慮した独自の予約機能(リアルタイムの自動連鎖予約機能)を作り込むことにしました。
(3)クリニックだけでなく、クリニックの顧客の体験も改善する
三つ目は、クリニックに勤務されているスタッフの方々(医師・看護師・カウンセラー・受付・マーケティング担当の方々等)だけでなく、クリニックに通う顧客の体験も改善することです。例えば予約機能であれば第一希望から第三希望まで入力してクリニックからのコールバックを待つような機能ではなく、リアルタイムに予約が確定する機能を提供したり、クリニックで記入した同意書が自身のマイページで見れるような機能を提供することにしました。
導入による成果が出る
プロダクトの骨子が固まった後は一気に開発に入り、約3ヶ月で実装。2021年の1月には会社登記し、1月末にはβ版をリリースしました。幸いなことに創業前からフィードバックをいただいていたクリニックにもβ版を導入いただくことができ、導入後も毎週スタッフの方からフィードバックをもらいました。
β版リリース後は顧客の声を聞きながらひたすらブラッシュアップを続け、2021年5月には本格的に外販を開始しました。そして、外販後の2021年11月にご導入いただいた全国に複数店舗展開してるクリニック様においては、導入による効果を目にみえる形で上げることができました。
プロダクトの骨子として挙げていた「クリニックのオペレーションを徹底的に効率化する」という点については、残業時間削減という目にみえる形で成果が出て、業務が楽になったという旨の嬉しいお声も多数いただきました。
「クリニックだけでなく、クリニックの顧客の体験も改善する」という骨子についても、B4A導入後に当日予約件数の割合が約2倍になるなど、こちらも一定の成果を上げることができました。
また、個人的には、友人が通ってるクリニックが偶然B4Aを導入してくれて、友人が「予約めっちゃ取りやすかった」と褒めてくれた事も大変励みになりました。
特許取得、アワード受賞、初の自社イベントの開催
創業から約2年間はSaaSとして土台となる基本機能を作りこみ、3年目にはCRM機能の強化や、SBペイメントサービスさんと連携して事前決済機能をリリースするなど、クリニックとクリニックの顧客の体験をさらに改善していきました。
このような自由診療に特化したユニークなサービスを作り込むことによって、2023年5月には予約システムとCRM機能に関しての特許を取得することができました。
また、クリニック業務改善の成果等が評価され、2023年11月にはASPICクラウドアワード2023にて社会業界特化系ASP・SaaS部門にて経営改革貢献賞を受賞する事ができました。
導入クリニックも増えていき、2023年11月にはクライアントであるクリックの皆様やパートナーの皆様をお呼びして、初めての自社開催イベント(自由診療DXアワード2023)を開催しました。
これから
紆余曲折ありつつも、様々な方々のご支援をいただきながら、事業を成長させることができ、今では約300院のクリニック様に導入いただいております。創業時には4人だったフルタイムメンバーも、今では18人となり、2023年9月にはシリーズAの資金調達も行いました。
しかし、自由診療クリニックのDXはまだまだこれからです。以下は美容クリニック勤務者104名を対象に2023年に弊社が独自でとったアンケートですが、カルテでもデジタル化に対応しているのは約50%であり、それ以外では20-40%程度にとどまっている状況です。
B4AはまだSaaSの土台ができたばかりです。既存の機能に対する改善や、新たな要望も含めて、毎月100近い要望がクリニックから寄せられます。また、B4Aは毎日使われる基幹システムです。システムの安定、セキュリティ、UI/UXのさらなる改善が非常に重要です。クリニックとクリニックの顧客双方の体験を改善し、より自由診療にアクセスしやすい世界を築いていきたいと思っています。
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