すぎやま

詩を書くんですよ

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【自己紹介】貿易に関して

終わりが見えないので飽きました。 と、去っていく男がいる。こんな男には報復関税で対処するべきだ。 と述べた経済学部の大学生がいた。報復関税ってなんだよって思った。 でも言いたいことはわかる気がする。無論、終わりが見えないので飽きちゃう男の言い分がわかるのである。 この世には待っていることを得意とする連中がいるようだが、そんな奴の気など知れたもんじゃない。生物として生きていくのであれば、常に目の前に終わりを用意しておくべきであり、その覚悟を持っている必要があるのだ。

    • 新卒で入った会社を3ヶ月で辞めてから、1年とすこしが経った。

      新卒当時、退職を考えている、あるいはすでに退職した同期たちを、夜な夜なTwitterやtiktok、noteで見ていた。そこで綴られていた弱音、あるいは怒りにも似た声明は、今にも辞めそうであった私の背中を押した。 しかしあの時あれだけ力強く私の背中を押してくれた仲間たちは、気づけば皆消息を絶った。みんなどこに行ったか。なんだかんだ仕事に耐えているのか。それとも第二新卒として再就職か。世界一周にでも行ってシチリアのあたりを満喫中か。あるいは。 私は新卒で入った会社を3ヶ月で

      • 【詩】風車(詩誌wonder1号掲載作品)

        倦怠の牛の 午後をすごす 柔らかく伸びる秋の陽に 撫でられ赤くも茶けた背を 蝿の一家が最後の夢を 喰むその住処とした ポートサイド・ヒル 朽ちた風車や水辺に揺れた淋しさよ ぶらついていた錆びがおちて 風に腕を振り 自ら描いた景色に沈んだ 君はしこりをカクンとならして 首を傾げていた 秋口は一足先に最奥に向かう 落ち葉のくだける音は 人の通る時の音 獣道を愛したものがあった いまでは壁面に挟まれた一本道 モチーフになってゆく 牛の背を温めた陽の 温度に触れている 絶好の秋

        • 【詩】河川敷

          山間のカーブから 汗ばんだ顔を覗かせた A列車が陸橋にのった 橋桁を伝って水が揺れ 河原に生えた夏草を濡らす様 微熱を抱えた重い頭をやや冷ました 緩んだ頭で訪れた祝日の河原には フルスイングの元サラリーマンが放つ ひかる白球が飛び交い 蜻蛉の中にとけていく 小さな声で叫び続けていた あの春の声も 飛んだ殿様バッタ 横断歩道から落ちないように ジャンプして渡っていく 白線をひとつ超え またひとつ超えて 中央線も超えていく うなじの汗が腰まで滑った 山肌に食い込んだ橋の足が残

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        【自己紹介】貿易に関して

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        • 自己開示、雑文
          2本

        記事

          【詩】渚の渦

          引いていく波の 先の四つの小部屋に 深い日本の淵があり エスカレーターの流れに沿って 手すりを掴んでおりてゆけば 最後の段で濡れていくの わたしの爪先 落としてしまった 神様の 涙でできたその淵の めくるめくその渦潮の 水面に泡沫のわたしがうつる はじける時間のひとつぶひとつぶは 完全な球形で包まれて この地下を脈々と流れていた ながい時間と光を飲み込んだまま まばらに反射して またひとつできた低い波 のその輪郭に沿って 現れる魚影からカラフルなインクが垂れ 陰影を引き延

          【詩】渚の渦

          【詩】失踪

          最後の花火は帽子の束に被って あまりよく見えなかった はずれびが 大輪の外れ火だけが 目深に被った帽子の 鍔の上から降りてきて 私のりんご飴をその熱い手で掴み 沖にある堤防に跳ねて跳ねて 向かう側の海に消えた (まだまだ昇っていくよ) 煙る数秒前のなかを通って 五尺玉は静かに昇り 静かに弾けた 音を奪っていった父の いる方角からもよく見えるはず そんなに急がなくていいのだ 転々と車窓を流れる街灯のように 私たち流されて眺めていた (まだまだ昇っていく) 言葉に許されぬ私のつぶ

          【詩】失踪

          【詩】少年たち

          ススキの茂み 枯れ草のなか 細く多い葉をかき分けて 少年たちは歩いている 小さな背中に紺色の半天 乾いた畳の匂いを辿って 刈りそろえられた短い髪 風を細かく割きながら 見失わないように歩いていく 夜になるまでにここを抜けなければ。 垂れた長い葉が額を優しくなでた もう月が地平に 杉のならぶ遥か彼方に落ちてしまう けぶる朧の黄昏時 奥の枯れ木並木の 秋空をおおう蜘蛛の巣からにげるよう 踏みしめた足元で鳴いていたこの雀は 私と同じ目をしているからと言って 少年の頬は北風にあた

          【詩】少年たち

          【詩】春、線路

          花を散らした春の日に 冷えた堀にたつように 黒っぽくなった足指は 苔むした墓碑になりたいと言った 駒込を前にして車両の空気は循環して 春の雑草が線路沿い 停止した私を見ている ふと見下ろした手には涙 眉に花びらがのり 確かめてしまった横顔 いま溢れていく茶髪で 瞬きは始まり 糸糸の裏側に潜められた物語が 風にたなびいて 豊かな表情にほどけていく その木こりのように揺れる背も 霞空に溶けあって 発車のサイレンが鳴った まだ私は生きています 青のベールをまとった人へ 鯉のぼり

          【詩】春、線路

          【詩】白布

          まぼろし、ね。 の、ね、の音で君は幻になる 東京は南方の天候を引き延ばし 本日も炎天下 ジリジリと飽和しうなじを火傷させる 朝の日差しでさえ強く逞しく 真っ青になった僕の顔を より蒼白に染め上げ 君と手を繋ぐことを躊躇う朝方だった 地下のコーヒー店へと至れば 私は奥のカウンターへと通され 裏側から厨房を覗いた 生ゴミの溜まった排水溝の香りと 人々の蒸すタバコの香ばしさが混じりあい ムンと立ち込める地下は まだ若い二人の目玉を泳がせる 裏の席からメニューをもらい ブレンドコー

          【詩】白布

          【詩】多重露光

          台所から運ばれてくるマフィン 廃線になった鉄道であそぶ 団地のさつき姉ちゃんと泥の庭 さよならしてからだいぶ経って あんな団地はしばらく見てない 氷に冷えたうどんを日曜には食べる 線路の上を走っていた少年は 少女の手のひらからマフィンを受け取り その表情なんて見れないまま 焦げついたそれを抱えて そそくさと家に帰り 押入れの床に カチカチとした紙を敷いて 忘れるまで保存した 少年が帰宅する つづらに降りるこの丘を 紫色の芝桜 ちょうせつして 一帯キリに包まれて 少年が帰宅

          【詩】多重露光

          【詩】ふるさと(前庭まで)

          わたしが生まれた年に裏庭の 廃工場はレンズの生産を始めた それが星  4等星まで光ってみえる 芝桜は蕾をひそめ セイヨウスイセンはどこまで 畑の小道をこえ とたん小屋をこえ えんどうの実るアーチの隣 街頭に砕け庭先で光るまで 溢れんばかりの桃は二色で 破片に傷のついた空をみあげては  うっすら白とピンクを朝靄に溶かす 中空に咲く山桜 低く燕と高く鳶 姿を見せない雉の鳴き声 山間にある道の駅まで届くだろう 風上へ昇り 風下へすべっていく 夜には軋むだけ太陽光パネル 渋柿のな

          【詩】ふるさと(前庭まで)

          【詩】ピコたん

          オーク色に輝く爪は今日も練っている しわだらけの生地を練っている 骨ばった手指をこもれ日の下へ出し 少女らを手招きするように 昆虫のようにひかる妖艶な爪 この家がピコたんになってしまう前に 詰められた彫りの豊かなカラトリーと共に カラトリーと共に出ていこう 寄木の机と軒先の庭を 照らす木漏れ日が地中に沈むまで  俺の前の椅子には  誰も座っていなかった  今日も  向かいのアパートの  錆びた階段を  音を立てて上がってゆく  女の部屋には靴下が  いくつも いくつも  

          【詩】ピコたん

          その2日後、詩を書く理由。

          どうしようもなくなってしまった夜の翌日、香川へ旅行に来た。比較的、軽率に唐突に行った。どうしようもなくなってしまうことについて、考えていたのだけど、いつのまにか詩を書く理由について考えていた。以下の脳内だだもれ文を要約すると、どうしようもないから詩を書いているのかもしれないと思ったってことだ。 現代的にも見えるし 古風でもある鳩 足のない個体もおおい 精神発の憂鬱は皆もつだろう 影響はあれど喪失はない精神 届かない詩も届く詩も 街の遺伝子 動物の遺伝子 精神にだけ残されたポ

          その2日後、詩を書く理由。

          【詩】断崖のペンギンたち

          月光が音をたてて くずれていくの昨日も 精巧なドミノ倒しのように 全部嘘だったんだぜって 言ってくれてるみたい 聞こえてくるのは 総体としての音の抑揚と そのベースライン 幾多の影と八百万の神が 背中を見せる 不二の鳥居のような入り口 白雪混じるその毛先の 揺れに合わせて 明日のあなたの エフェクターが踏まれる 小さすぎる重力から 吸い込むにかぎられた 貴女という湿った遺灰より その名が先に逝かないことを 星雲の震えに祈りながら 断崖に立つペンギン 自作の聖歌を口ずさみ

          【詩】断崖のペンギンたち

          【詩】海岸の牛、漂流の子ら

          母の大きな脚が子の背中を打ちつけた夜、 子等は子等の確固たる輪郭を手に入れました。 それは波打つ海岸に現れます。 海は確固たる輪郭を与え、 高熱に微睡む私のような火山島を、 時に削り取り島とするのです。 そこで生まれし私の子らが、 母よりミルクを摂るように、 脈々と続くこの無為の流れの、 果てであり目前で 茫漠とした朝の男たちは、 ワトリドリのゆく夜を探していたのです。 その海は果てであり、 男たちは戸惑いの中生きてきました。 いつからかのっていた流れに、 気づいたら取り残

          【詩】海岸の牛、漂流の子ら

          【詩】俵町サロンにて

          谷底に向かい伸びた手の流線形が 紅葉の血色を浮かべている 気づいた?新しくしたの、かわい? Inverness Keith St.Andrews 岩肌かかる落葉の落とし髪 落葉樹の稲妻 海外に秋はあるのだろうか Edinburgh Glasgow  岩谷の奥で眠る小狐 紅葉の扇にあおがれて 頬毛が目に入ったら、いたい ちょうちん ランプ 赤煉瓦 シダ 新しいネイル かわいい秋

          【詩】俵町サロンにて