
「チ〇ポと鶏のももは比べられない」—100年以上、台湾人にとって尊い雞腿(ジートゥイ)

台湾人の愛する食べ物の中で、雞腿(ジートゥイ)は最上位に位置すると言っても過言ではありません。雞腿は骨付き鶏もも肉で、庶民的な屋台から五つ星ホテルまで、どこでも目にします。その人気ぶりは、ことわざにまで表れています。1914年に出版された『臺湾俚諺集覽』*には、「𡳞鳥比雞腿」という諺が収録されています。𡳞鳥は台湾語で男性器を指し、この諺は全く異なるものを比較できないことを意味します。入力やすいため、現代では「懶覺比雞腿」(ランジアウ ビ ジートゥイ)という書き方で使われ、二つのものが天地ほどの差があることを指しています。


また、運転が下手な人を揶揄するときには「あなたの免許は雞腿で交換したの?」という表現が使われます。専門資格を持っているが能力が低い人に対しても「その資格は雞腿で交換したのかも」という悪口が使われます。これは雞腿を使って試験官に賄賂を渡し、免許を取得したのではないか、という意味です。一方で、誰かが仕事をうまくやり遂げたときには「その人のお昼ご飯に雞腿をつけてあげて!」という褒め言葉が使われます。
雞腿が特別視される理由は、かつて農業社会で肉が高価だったこと、特に雞腿は美味しく、1羽の鶏から2本しか取れない貴重な部位だったからです。男性優位の時代、雞腿は男性だけが食べられるものでした。母の幼いころの思い出では、雞腿を食べる機会はほとんどなかったそうです。いつも彼女の父や兄、弟たちが食べていました。
また、うちの父も雞腿が大好きで、結婚式の際、参加者一人ひとりに持ち帰り用として雞腿を一本ずつ配りました。当時としてはとても贅沢なことで、参加者全員が喜んだそうです。そのため、家族の食事会では親戚たちが両親の結婚式の雞腿のことをよく思い出として語ります。

現在では誰もが雞腿を食べられるようになりましたが、弁当屋では雞腿弁当がメニューの中で一番高価な商品(約600~750日本円)であることが多く、自分へのご褒美として注文する人が多いです。雞腿は今でも台湾人の胃と心を満たし続けています。
*臺湾俚諺集覽,臺灣總督府編。 1914(大正3年)
https://taiwanebook.ncl.edu.tw/zh-tw/book/NCL-002388135/reader