医学編集 原稿はただ書くことだけではない

前の文章の通り、パンフレットや動画やPowerpointやSNS投稿など、業界全ての宣伝物あるいはPR物を「マテリアル (material)」とよんでいます。

読者は、医療関係者(HCP:Health Care Professional)と一般の人(患者、大衆含め)に大きく分けられています。

医療関係者のための内容は、大体研究数字の更新や新しい情報を伝えることで、正確性とバランス(balanced report)に注意したら大丈夫です。ライターと編集者にとっては、より簡明な仕事です。一方、一般の人のための内容は、状況によって、色々気をつけなければならないポイントがあります。

まず、多数の国で医者が処方する薬は、一般社会に広告すること(direct to consumer)ができないのです。台湾も法律的に禁止されています。これは誇大広告で消費者を惑わすことを避けるための方策、あるいは情報格差から生まれた対応です。ですので、一般の人向けのマテリアルでは、治療の部分は削除されていたり、ぼんやりと書かれていたりしてます。しかし、一般の人の中には、治療についてもっと学びたい人もいます。特に治療の部分に関心を持つ患者が多いです。ネット上で正しく整理された情報が不足している中で、みんなが間違った情報を取り入れる可能性も増えます。という訳で、できる範囲でどこまで細かく書けるかが課題です。

また、医学の専門用語がたくさんあって、業界以外の人にとって理解が難しいです。しかし、全て説明することは無理です。ですので、常に何が必要かを考え、内容を選別し、重要性によって順番を配列します。
 
内容は大きく分けて四種類あります:

  • 医療関係者が伝えたいこと

  • 製薬会社が伝えたいこと

  • 患者さんが知りたいこと

  • 編集者の目線で不可欠なこと

しかし正解はないので、マテリアルの担当者や取引先、あるいは主題などによって、マテリアルの編集やデザイン方法は異なります。よって、通常、話し合いや調整等で3ヶ月〜1年程かかります。

ちなみに、既に薬が処方された患者に、その治療についての資料を渡すことは大丈夫ですが、広告の意味合いが多すぎる内容も採用されませんでした。編集者と取引先で異なる意見がある時、製薬会社の法律部門の意見に従いました。


さらに詳しくご覧になりたい方はこちらをご参照ください
 
日本製薬工業協会 医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領
https://www.jpma.or.jp/basis/drug_info/index.html
 
日本製薬工業協会 患者及び一般市民を対象とした治験に係る情報提供の要領
https://www.jpma.or.jp/basis/guide/information_20230601.html
 
The International Federation of Pharmaceutical Manufacturers and Associations (IFPMA)
https://www.ifpma.org/
 
Pharmaceutical Ads: Good or Bad for Consumers?
https://abcnews.go.com/Business/Wellness/pharmaceutical-ads-good-bad-consumers/story?id=9925198

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