雨降
悪魔をテーマにした短編集。怖いのからしょうもないのまで
神様のお墓を巡る物語
あらすじ 教師猫村は生徒の一人、魔白から好意を持たれ、過剰なアピールを受ける。 だが実は彼女は悪魔の末裔で校内で秘密裏に開催される七天使、七悪魔、七人の超人類による三種七体戦争の参加者の一人だった。 巻き込まれる内に協力する事になる猫村だが天使との戦いの最中、猫村は命を落とす。 猫村が残した手がかりを元に魔白の魔法で天使を撃退したものの魔法が暴走し周囲の人間を巻き込んで自爆しそうになる。 それを止めたのは前回戦争を制覇した人物だった。 彼は猫村の命を助ける代わりにと
この首を切り落として目線が合わない高い神棚にそなえて、それっきり俺のことなど忘れてくれ
無くしたものの数を数えて貴方のいない朝へ向かう その地獄に名前はなくとも同じ花がいつか咲く 昨日食べたものも思い出せないのに宙に浮かぶは貴方の声で 雨が止むまでここで待とうか 震えて、歪んだ。波間に、咲いた。 飛べるまで飛んで月に落ちてけ 赤信号の道路、一台もない消防車 通勤電車と百鬼夜行の違いを知らぬまま歩く僕に 何て呼び名が許されるだろうか 化け物が俺なら間抜けはお前だ 泡沫の結末、夜の終わり 太陽風のパルス、へこんだままのドア 月の砂の一掴みが貴方だったとして
「よく来たな勇者よ。世界の半分をお前にやろう」 魔物の侵略によって恐慌した世界、勇者は苦難の果てついに魔王の玉座に辿り着く。 「ふざけるな!お前を倒して世界を解き放つ!」 「まあ待て、半分と言っても地下だぞ。俺は陽の光が溢れる地上が欲しいだけだ」 「論ずるまでもない!というか地上なかったら住めないじゃん」 「でも地下全部だよ?石油もレアメタルもダイヤモンド鉱山も全部お前のだよ。あっ海は共有資源ね。大金持ちになれるぞう」 「………ちょっとありだな」 「結構アリよりのアリでしょ!
「世の中なんてお好み焼きと一緒やで」 悪魔は俺にそう言った。 「なんやねんお好み焼きって思うやろ?そやけどな、お好み焼きにはいろんな具が入ってんねん。人間も一緒や。イカみたいなやつ、豚みたいな奴、いろんな奴がおる」 俺は黙って聞いていた、というより聞き流して目の前の熱せられた鉄板とその上でじゅうじゅう音を立てるお好み焼きに集中した。 「おい、聞いてる?」「ああ」 「中でもキャベツがな、キャベツがいっちゃんえらいねん。豚とかイカが目立つやろ?でも小麦粉とキャベツがおらんと土台に
夢みたいだ嘘みたいだ 固形化されたフィクション ソリッドな虚構 頬を抓れ目を覚ませ 夢がなんかか手続きの不具合だ まったく最近の役所と来たらお役所仕事も大概ね、大体ね気に入らないたらありゃしない 君が隣にいる 温もりを感じる 夢が現実になる 頬の熱、距離は僅か 息の震えを知る 僕は息も絶え絶え 宝クジでもないが 実感わかないが ところで今日は何日だ エイプリルフールエイプリルフール ほらカメラ嘲笑聴衆出てこいよ 嘘じゃない 嘘じゃない 嘘じゃない?嘘じゃない? 嘘
クリスマスについて、蝉の亡骸、望まれぬ子供、志村正彦という単語を用いて四百文字くらいで述べよ。 僕はよく星を見たり見なかったりする時にぼけっと空を見上げ、ともすればそのまま歩いたりするのだけれど、人生同様危なっかしいのだけれど、 その時は駅、五年前の駅、改札で天井があって当然星が見えないのにぼけっと上を天井を見上げたのだけれど、そこに蝉。天井に逆さに捕まった蝉。季節は冬。彼と来たら弁慶の立ち往生宜しく逆さ捕まったまま往生したようで、改装した久宝寺駅の天井は清く高く美しく意
解けてはつないで 歌えばきっとそれは愛で 涙が溢れて地に着くまでのわずかな隙間で 口笛が撫でるに任せて 夜に落ちていけ
愛が足りないのは君がいないからで 君がいないのは愛が足りないから 君がいないから僕も眠ったままで 食卓は片付かなくてサラダだけがくたびれていく 君がいないから夜はあけないままで 僕が起きないのも全部君のせいにした 立ち上がって歩き出して 宛はなくて、でも 歩き出して立ち上がって 夜明けに間に合いますように 砂粒が爪先に触れてそれを白い波が洗い流す ほら、夜が明けたよ 君はどこだい?
目を閉じて掌で塞いだって 脳裏に浮かんでは消えた幻 掴んだ気がして触れては解けた 脳裏に浮かんでは消えた幻 歯車がかけて歯車を継ぎ足して 機械仕掛けのパレードは続く 生まれたから付け足して 死んだから継ぎ足した 機械仕掛けのパレードは続く 笑ったから笑い泣いたから釣られて泣いた 退屈だった?いいえちっとも Sunday driver 僕を乗せて Sunday driver 連れてってくれよ Sunday driver 僕を乗せて 未だ見ぬ場所まで S
日常の羅列 悲劇の整列 葬列を見飽きて空腹を飼い慣らす 夢見ては「本当に飛べた?」 疑うだけの日々 我ただ足るを知る、嘯いて 眩んだ目悔やんだ手でも進む足 どこまでも前のめりでも目の前の壁が壊せない ただ足らないものを知るだけの日々 日常の羅列 喜劇の聖別 疑うは悪か?信じる者に喝采を 全ての泥棒に幸あれ 夢見がちな者に 睡眠薬と寝酒、死と全ての火災を 悲劇を並べ立てる事を才能と誤魔化して 得た金に貴賎はあるかその歌は黄金か 問答の果てに伽藍堂の先に 夢見た果ての空へ
あなたが欲しいもの全部教えて 壊してしまうから あなたの、手に入れたもの全部積み上げて 砕いてしまうから そうではない、そうではない、なら そうではない、そうではない、から 潮が満ちる波に呑まれる 月が昇る波に呑まれろ 何を選んだとて同じ地獄へ行く 叫べこの空洞はよく声が響く 蜘蛛の糸手繰り、聞こえない声で叫べ 誰と歩んだとて同じ地獄へ行く 叫び、この空洞で永遠に響く 掴み損ねた掌で己が喉を絞めろ 嘆きを積み上げて永遠に届く 口伝えに伝えられた過去の形 それは僕の知る
何でも良かった。 「カレーをお鍋にとたたたたた」 「バナナバナナバナナバナナ」 「お猿とトイレでウッキッキ」 何でも良かった。リズムがあって意味がなくて 何となく君が喜ぶなら。 どんどん君は大きくなって、歌がなくてもトイレに行けて 保育園に行けて横断歩道で手を上げて 電車で隣のおじさんにこんにちはって言えて 赤信号は止まれだよ、って言えるようになった。 たくさんのたくさんのよくわからない歌の残骸。 赤信号で止まって欲しい時に、鍋をかき混ぜるのだけ手伝って欲しい時に プラスチッ
知らねー!!!!!知らねー!!!!!!!!!!
爪割れる日々 つまらないダンス 森の奥遠く獣の遠吠え 行く足だけが遠ざかっていく 飾り立てた薪、まつろわぬ甘露 樹々を伝う涙、戯けては拭う 舐めてみた、飲んでみた、語り継ぐ歌 箒星はまだか 来たとてどうか夢見がちな水面 写したは歌か波立てた蹴り足 そよぐ風に沿ってつまらないダンス 欲しいものは紺碧、得たものは群青 箒星はまだか 空に祈る日々よ
君が夢を見ながら眠る横顔を見てる。 夜の11時は今日が終わってまだ明日が始まっていない気がする。 体には良くないけどコーヒーと少しのクッキーを齧りながら考えてる。 君にお別れを言う日を。なんだかまだ現実味がないな。なにぶん初めてだから緊張するよ。 そもそもちゃんとこんにちはしただろうか? はじめまして、こんにちは。それじゃまたね。さようなら。 抱きかかえた時の体温と重さだけが本当で、それだけを抱きしめて生きて行く。 そして今日が明日になる。