面白い!ネタを求めて
手垢の全くついていないネタを探すのは易くはない。
北斎やら、ミケランジェロやら、有名どころは、既に誰かしらが書いている。
彼らについて書こうとすれば、「王道」以外を探すしかない。
ハマスホイ展は、注目度が高い分、あらゆる媒体が取り上げていた。
多くは日本ではこれまで知られて来なかった「北欧のフェルメール」の生涯や、作品世界の紹介がメインだった。
私が編集部から最初に求められたのも、そのタイプの記事だった。
しかし、簡単に情報をまとめてみようか、とメモを作ってみたが、その生涯のあまりの起伏のなさに頭を抱えた。
やりにくいことこの上ない。
順風満帆に、挫折やスランプに陥ることなく、ある程度の成功を収める人は、ドラマの主人公には向かない。感情移入もしにくい。
それを改めて痛感した。
何より、ハマスホイの生涯を作品と絡めながら追う記事を、「面白い」とは思えず、その本音を私は無視できなかった。
展覧会で、ハマスホイ以外、彼よりも前のデンマーク絵画の諸作品や、歴史の流れに興味を引かれたせいもある。
ハマスホイにとって、根とも言うべきそれらについてから、書き起こすことも考えた。
が、読者にとっても私にとっても、初めて知る情報が多すぎ、下手すると詰め込みすぎて、ポイントがぼやける可能性があった。
かりに書いたとしても、「面白い」と思えるものが出来上がる未来が見えなかった。
じゃあ、どうすれば面白くなるか・・・
答えは、一鑑賞者として展覧会を見ているうちに、わき上がった素朴な疑問にあった。
「なぜハマスホイは、室内の絵ばかり描いた?」
デンマーク画壇の中で流行し、重要な一角を占めていたから。
「じゃあ、何で流行ったのか?」
パトロンが、裕福な市民で、彼らが身近な自然や生活を描いた絵を欲しがったから。
「ハマスホイ以外の室内画は?」
・・・・・・
と、このように質問を沢山していく中で、書くものが、一本のストーリーの流れが見えてきた。
そして、資料をひっくり返し、線を引っ張り、探した答えの断片を、並べていった。
その結果が、こちらだ。
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21316
ネタ(素材)は、調理法の工夫によっても可能性が広がる。
その第一歩は、質問を沢山すること。
特に「なぜ?」と。文で答えなければならない質問の方が良い。
質問をひねり出すのも、なかなかエネルギーを使う。が、使いこなせれば、「なぜ?」は、万能ナイフのように役立ってくれよう。