嗚呼イタリア映画祭~映画『素晴らしきボッカッチョ』

 休みをはさんで、異動2日目。
 環境が変わったことに加え、定期券の払い戻しやら、書類の準備やら、とやることが出てきて、頭がくらくらした。
 やっと用事を済ませ、一息入れている現在。
 この分だと、帰った後も、「インプット」はできないのではないか。
 特に映画を見るには集中力と気力がいる。
 代わりに過去に見た映画について少しだけ。

 数年前に、イタリア映画祭で見た『素晴らしきボッカッチョ』。
 ルネサンス期の三大詩人の一人、ボッカッチョの作品『デカメロン』が原作。
 舞台は14世紀フィレンツェ。
 ペストが猛威を奮う中、十人の男女が田舎の別荘に避難し、一人一話ずつ物語を語っていく、というのが大枠の、入れ子式構造になっている。
 原作は100話あるが、映画では恋愛に関わるものを中心に、5話をセレクトしている。
 話もそれぞれ面白く、私が一番笑ったのは、逢い引きをしていたシスターの話。逢い引き現場を目撃していた仲間が院長にご注進に走るも、実は院長も恋人と密会している最中だった。
 峻厳な顔を取り繕って、事態の収拾に向かうも、ベールと間違えて、恋人の股引きを頭に乗せていってしまい・・・

 この映画のことを思い起こした理由は2つある。
 1つは、深く考えずとも笑えるコンテンツが欲しいから。
 そして、もう1つは、冒頭のフィレンツェの街の様子が、今の状況に重なるから。
 次々と出る死者ーーー老若男女問わない。
 死が自らに降りかからぬよう、薬草の束を鼻と口に押しあて、足早に街を行く人々。どれほどの効果があるかはわからないが、やらないよりはまし。必死で不安と戦いながら、1日を生きている。
 今の世界と、なんとよく似ていることか。

 コロナのおかげで、イタリア映画祭も今年は中止だ。
 他にもそのように中止になるイベントや、公開が延期になる映画も出るだろう。
 いつになったらおさまるやら。
 そして、こういう時こそ、くすり、とでも笑える、軽めのコンテンツが、小話が欲しいと思う。

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