見損ねてしまった一枚
もう何年も前の話になるが、いつだったか。
見ておくべきだった、と未だに後悔してやまない一枚の作品がある。
ゴッホの<夜のカフェテラス>だ。
日本に来日したゴッホの代表作、ということで、展覧会のポスターにも使われていた。
それを私は電車の駅で散々見ていたはずだった。
が、「誰が行くか」と妙な意地を張って、結局そのまま何もしなかった。
私にとって、好きな画家、といえばモネやルノワールだった。
あとは、ルネサンスの画家たち―――ボッティチェリやフィリッポ・リッピなど。
ゴッホは、色のどぎつさや歪んで見えるフォルムが苦手だった。
今現在、それらこそが私が彼に惹かれている要素の一つだというのは、皮肉と言おうか何と言おうか。
この<夜のカフェテラス>での、黄色と青の組み合わせはゴッホの定番だが、この黄色は何と煌々と輝いているのだろう。
画面の中心から少し左にずれたところには、光源であるランプの存在が認められる。黄色に支配された区域内で、分厚く絵の具が塗られているのが、この画像でもわかる。
本物を前にしたら、また別のものが見えるのではないだろうか。
私は、何を感じ取るのだろう。
今年の秋には、クレラー=ミュラー美術館からゴッホの作品が来る。
<夜のカフェテラス>はさすがに来ないらしいが、今からでも楽しみになってきた。
どうか無事に開催されることを祈りたい。