浮世絵展の切り口

北斎、広重、歌麿、写楽、国芳、春信… … 
浮世絵師のビッグネームといえば、こんなところだろうか。
浮世絵についての展覧会といえば、だいたい彼らの作品が集まる。
北斎の〈神奈川沖浪裏〉を、私はこれまで
いくつの展覧会で見てきただろう。

たが、絵師一~二人に焦点を当てたものにせよ、有名どころを集めた大規模なものにせよ、展覧会の主役となるのは、絵師であり、商品として完成され、江戸に流通していた彼らの作品だ。
浮世絵の場合、一枚の作品が生まれるまでに、絵師以外にも版元や彫り師など多くの人間が関わっている。
が、表舞台に名前が大きく載るのは、絵師だけだ。
もちろん絵師たちの下絵がなければ、作品が生まれないのは確かだが、彼らは自由に描きたいものを自分の好きなやり方で描けたわけではない。
主題選択や画面サイズなどには、統括役である「版元」の意向が大きく働いていた。
例えば、美人画をやりたい、大成したい、と本人が思っても、キャリアが足りないなどの理由で希望が叶えられず、小さなサイズの役者絵しか描かせてもらえない、というケースもありうる。
浮世絵の世界も、シビアなビジネスなのだ。
このような「ビジネスとしての浮世絵」をテーマにした展覧会があったら面白くはないだろうか。
気の早い話だが、ちょうど来年の大河は蔦屋重兵衛だ。
関連書籍は既刊新刊共に書店では大きく取り上げられよう。
「蔦屋」をテーマにするなら、「版元」について、浮世絵の分業体制についてなど、色々と説明する必要がある。新人を発掘する話もワクワクするだろう。
構成や、展示の工夫次第では面白いものができるのではないか?
会場は… … 森美術館か、あるいは大きくやるなら、江戸東京博物館も良さそうだ。
江戸東京博物館は改修工事中(2025年内に修了予定)だから、間に合えば、の話になるだろうが。
せっかくだし、新鮮な見方を提供してくれるような浮世絵の展覧会を期待したい。


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