#1 柳ヶ瀬商店街エッセイ「サンビル」
そこは、それぞれのクリエイターさんたちの「きらきら」を詰め込んだ、街を超えたひとつの王国みたいだった。ハンドメイドアクセサリーに、ドライフラワー、絵画がずらっと並ぶ。暑さに負けないくらいに、輝いて見えた。
7月21日。
柳ヶ瀬商店街のサンデービルヂングマーケットに行ってきた。とても暑い日で、アーケード街でも汗が止まらないほどだった。
サンビルに来るのは2回目で、前回は名古屋に住んでいた頃だった。いろんなことが順風満帆に進んでいて、気分も晴れやかだった気がする。
今回は全然違う。人生の分岐路に立たされていて、精神的にも経済的にも不安定で、だから何かを購入する、という目的は捨てた。
ただ歩いて、写真を撮って、五感で柳ヶ瀬の空気を感じるのに集中することにした。
なぜか前みたいに、ひとつのものに惹かれる、という感情に出会わなかった。素敵な作品がなかったわけでは決してないのに、ときめきが湧かないことに気づいて、すこし悲しかった。
でもわたしの興味は、建物やお店の外観に向いていた。居酒屋に並ぶ提灯、ダークな雰囲気のPUB、おばさまが集まる喫茶。入ってみたい気持ちがちゃんと生まれた。それが嬉しくて、シャッターを切る。
わたしはステッカーやポストカードなどの文房具が大好き。たまたま入ったお店で、今日1番のときめきをもらったステッカーと出会うことができた。
ああ、可愛い。こちらのステッカーは無事スマホケースに挟まれましたとさ。
ハンドメイドアクセサリーが立ち並ぶ通りで、思ったことがある。
「人に自分の作品を魅力的だと感じてもらって、物を買ってもらうってこんなにも難しくて、当たり前じゃないんだ」
わたし自身が買うことができなかったからこそ。ほんの数秒で通り過ぎてしまったからこそ。そんなことに思いを馳せた。
こうしてほとんどの人が、自分が命を削って作った作品の前を通り過ぎていく。まずは一目見て気になってもらえるか、言葉で説明して魅力を感じてもらえるか、そうして買ってもらえるかって、作家さんとお客さんの「意思疎通」があってこそだ。
わたしは、自分の言葉を買ってくれる人と「意思疎通」ができる人間になりたい。次回このサンビルに来たときは、心を通わせることができた作家さんの作品を買いたい。
わたしは柳ヶ瀬商店街を初めてしっかり歩いた。心惹かれるお店が、たくさんあることに驚いた。今度は心惹かれるままに、そのお店に入ってみよう。
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